研究課題/領域番号 |
22K06020
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
青島 圭佑 北海道大学, 獣医学研究院, 講師 (90745069)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 血管肉腫 / エピジェネティクス / PDX / ヒストンメチル化 / がん代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
血管肉腫は血管内皮細胞由来の悪性腫瘍であり,イヌで好発するが,ヒトではまれである.血管肉腫に対する有効な治療法はなく,分子レベルの病態理解は進んでいない.本研究では,血管肉腫のがん代謝を制御するエピジェネティクス機構を明らかにする.そしてこの結果をもとに,血管肉腫の治療標的となり得るエピジェネティック因子およびがん代謝分子を同定する.さらにイヌとヒトの臨床検体を解析し,これらの標的分子が臨床症例でも認められるかどうか,イヌとヒトに共通するかどうかを明らかにする.本研究により,エピジェネティクスとがん代謝を標的にした新たな血管肉腫治療法を提案することができる.
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研究実績の概要 |
本研究は血管肉腫のがん代謝を制御するエピジェネティクス機構を明らかにすることを目的としている。今年度はまず,血管肉腫患者犬から腫瘍組織を無菌的に採材・培養し,血管肉腫初代培養細胞を樹立した。また,腫瘍組織は免疫不全マウスにも移植され,イヌ血管肉腫患者由来組織移植モデル (PDXモデル) の樹立に用いられた。得られた PDX モデルからも細胞株分離を試み,血管肉腫 PDX 由来細胞株の樹立にも成功した。これらの細胞株を用いて代謝動態と関連のあるエピジェネティクス機構の同定を試みた。 またグルタミンまたはグルコース欠乏条件下で血管肉腫細胞を培養し,その状態変化に伴って発現が変動するヒストン修飾酵素を同定した。このヒストン脱メチル化酵素をノックアウトした血管肉腫細胞 (KO細胞) を作製し,免疫不全マウスに移植をしたところ,対照群と比べてKO細胞由来腫瘍では体積の増大速度が有意に減少した。現在,このヒストン脱メチル化酵素の血管肉腫におけるさらなる機能解析を行っている。 メチル化以外にもヒストンラクチル化に注目して,血管肉腫の病態解析を試みている。グルコースあるいはグルタミン条件下において,血管肉腫のヒストンラクチル化レベルが顕著に変化することを明らかにした。また,グルタミン欠乏条件では血管肉腫細胞は死滅したものの,グルコース欠乏条件下では血管肉腫細胞は生存した。ヒストンラクチル化の変化と栄養要求性の関連について,現在研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管肉腫の研究を進める上での基本的な研究ツールが不足していたため,手術サンプルからイヌ血管肉腫の初代培養細胞株,PDXモデル,PDXモデル由来培養細胞株を作製した。これにより,血管肉腫の円滑な基礎研究を行うことができるようになった。これらの研究ツールを用いることで,グルタミンあるいはグルコース欠乏条件下に関与していると疑われるヒストン脱メチル化酵素の同定,そしてヒストンラクチル化の機能解析を行える段階まで来ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は同定したヒストン脱メチル化酵素の機能解析を進める。具体的にはノックアウト細胞を用いた mRNA-seq を実施し,このヒストン脱メチル化酵素により制御されている遺伝子発現系を解析する。さらに,ATAC-seq や CUT&Tag-seq 等を利用し,がん代謝へのメカニズムを明らかにしていく。ヒストンラクチル化に関しては上記ヒストン脱メチル化酵素の関連を調べるとともに,グルコース欠乏条件下において,どの遺伝子領域がヒストンラクチル化により制御されているかを,ATAC-seq および CUT&Tag-seq を実施して解析していく。
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