研究課題/領域番号 |
22K06029
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
山田 健太郎 宮崎大学, 農学部, 准教授 (70458280)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 狂犬病 / メタボローム / キヌレニン経路 |
研究開始時の研究の概要 |
狂犬病は狂犬病ウイルスによって引き起こされる致死率ほぼ100%の感染性脳炎で、発症後の有効な治療法は未だ確立されていない。これまでに研究代表者は、狂犬病ウイルス野外株においてG蛋白質L38R変異がマウスにおいて弱毒化していることに加え、感染マウス血清の比較メタボローム解析により、L38R変異株感染では、あるアミノ酸の代謝産物の一つが上昇していることを見出した。この代謝産物には生理活性があり、炎症反応により誘導される経路によって生成される。そこで本研究では、L38R変異株の弱毒化にはその経路の誘導が関与することを証明し、さらに狂犬病治療に有効な代謝産物や責任酵素の同定を試みる。
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研究実績の概要 |
本研究では、未だ治療法のない狂犬病について、狂犬病ウイルスの弱毒化機構を解明することで、その治療法の確立を目指す。すなわち、弱毒株が感染した場合に宿主から排除されるメカニズムを解明し、それを野外株(強毒株)感染において再現させることで、狂犬病の治療が可能か検討を行うものである。以前に、狂犬病ウイルス野外株(1088株)G蛋白質においてL38R変異がマウス末梢感染において弱毒化をもたらし、変異ウイルスは脳に至るも排除されることを見出しており、感染マウス血清の比較メタボローム解析により、変異株感染では野生株感染に比べて、トリプトファンの代謝経路であるキヌレニン経路の代謝産物の一つであるキノリン酸の有意な上昇が確認された。 そこで今年度は、保存されている感染マウス血清(ウイルス接種5-6日後)を用いて、キヌレニン経路においてどの分子がL38R変異株感染で増加しているか、ImmuSmol社のELISAキット(L-トリプトファン、L-キヌレニン、キヌレン酸、及びキノリン酸)により調べた。残余血清に限りがあったため、血清は10倍希釈して各ELISAを実施した。血中トリプトファン(Trp)濃度については野生株(WT)・変異株(L38R)感染で顕著な変動は認められなかった。一方、そのキヌレニン経路の代謝産物であるL-キヌレニン(KYN)、キヌレン酸(KYNA)、及びキノリン酸(QA)の血中濃度については、希釈の影響により検出限界以下を示したサンプルがいくらかあったものの、ウイルス接種6日後(6 dpi)において、変異株感染で上昇する傾向が確認された。以上のことから、メタボローム解析だけでなくELISAによってもL38R変異株感染マウスにおいてキヌレニン経路の代謝産物の血中レベルの上昇が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来は宮崎大学で感染実験を行う予定であったが、ABSL3の稼働が2023年に入ってからであったため、予定より進行が遅れている。このため、以前に在籍していた研究室で実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
組換え狂犬病ウイルス株を宮崎大学に移送して研究継続する。移送にあたり法令を遵守する(感染症法、カルタヘナ法)。R5年度は計画に沿って下記のように進める。 1. 弱毒株感染マウスにおけるキヌレニン経路に関する発現解析: 感染マウスの各組織等におけるキヌレニン経路に関する酵素遺伝子・代謝産物(中間物質も含む)について発現解析をRT-qPCRやELISAにより行い、治療候補となる分子の絞り込みを行う。 2. L38R変異株感染マウスにおける脳内トランスクリプトーム解析: RNA-seq等による網羅的mRNA発現解析を実施し、弱毒株観戦における抗ウイルス状態に関わると想定される脳内発現遺伝子を特定する。 3. IDO1阻害剤投与実験: 1-MT(1-methyltryptophan)はL-トリプトファンをL-キヌレニンに代謝させるIDO1酵素の阻害剤で、in vivoでの有効性も確認されている。そこで、L38R変異株感染マウスに1-MT投与を行い、致死的感染が起こるようになるか検討する。もしそれ が起これば、キヌレニン経路の誘導が弱毒性状に関与すること判明するが、起こらない場合にはIDO1酵素に非依存的なキノリン酸産生経路(トリプトファン酸素添加酵素、TDOなど)が関与することが推測され、この遺伝子の発現解析も進める。 4. 代謝産物投与による再現実験: 上記1で見出された代謝産物についてマウスへの投与実験を行い、弱毒株感染マウスと同様の遺伝子変動が認められるか検証する。
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