研究課題/領域番号 |
22K06035
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
三井 一鬼 岡山理科大学, 獣医学部, 助教 (20844773)
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研究分担者 |
藤原 信行 岡山理科大学, 獣医学部, 講師 (30805875)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 特発性肺線維症 / クララ細胞 / 細気管支化生 / CC16 / EGFR / 超微形態 / 遺伝子変異 / 癌化 / 猫 / 化生細胞 / 多段階発癌 / ブロンコレア / 通常型間質性肺炎 / 粘液過剰産生 / 動物モデル |
研究開始時の研究の概要 |
「特発性肺線維症(とくはつせいはいせんいしょう)」という人の肺の難病が、猫でも報告されている。一方、肺の奥から絶えず粘液が湧き出る「ブロンコレア」という病気が人と猫に起こる。我々は、ブロンコレアを患った猫の肺に常に特発性肺線維症の病変があり、一部の症例に肺がんが生じていることを発見した。特発性肺線維症、肺がん、ブロンコレア。一見独立しているように思われるこれらの病気が、実は互いに関連しているというのが我々の仮説である。患者猫の肺に常に出現している「化生(かせい)細胞」に着目し、その形態、機能、遺伝子などを詳細に調べ、人と猫の難病の新しい診断法や治療法を見出すことが我々の目標である。
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研究実績の概要 |
複数の特発性肺線維症(IPF)罹患猫の肺組織の免疫組織化学的ならびに電子顕微鏡的解析を実施し、罹患時に特徴的に増生する「細気管支化生細胞」がどのような特徴を有しているのかを詳細に解析した。 その結果、同細胞は、正常肺の細気管支に主として存在する「クララ細胞(現在、Club細胞という新名が提唱されている)」に形態機能的に類似していることがわかった。その根拠は、クララ細胞に特異的とされているCC16蛋白が化生細胞に発現していたことと、超微形態学的に化生細胞が線毛やサーファクタント様の分泌物を有していない(線毛上皮細胞や肺胞上皮細胞とは異なる)ことが確認できたことである。 肺において分泌を担う細胞(漿液分泌細胞、粘液分泌細胞、そしてクララ細胞)は、いずれかが傷害されると化生を通じて欠損細胞を補充する性質がある。今回、クララ細胞のような細胞が著明に増生したということは、クララ細胞が何らかの原因による傷害の標的となっていたことを間接的に示していると考えられる。 さらに興味深い点は、今回明らかになった猫IPFにおける化生細胞は、必ずしも完全なるクララ細胞のコピーではなく、既存の肺の上皮細胞(線毛上皮細胞、杯細胞=粘液分泌細胞、Ⅰ型およびⅡ型肺胞上皮細胞)のいずれにも合致しない「新しい」あるいは「ハイブリッド的な」蛋白を有していることである。また、猫IPFの化生細胞は、杯細胞でないにも関わらず粘液分泌が非常に活発で、これが特異な臨床所見である粘液過剰産生、すなわちブロンコレアに関連しているようである。さらに、IPF罹患猫で肺がんの罹患率が高いことから、化生と腫瘍化の間に何らかの関係があると推測され、今回明らからになったEGFR蛋白発現がその証拠の一つとなる可能性がある。 まとめると、「猫IPFにおける化生細胞は癌化の初期段階を表しているのか?」という疑問にヒントを与える結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していた「肺細胞の細胞株樹立」に関して、共同で研究を行う予定であった熟練の研究人員が退職し、同実験の遂行が困難になったため、猫IPFの化生細胞の形態・機能の解析と遺伝子解析を主軸とする研究に注力することにした。
形態・機能の解析は順調に遂行している。
遺伝子解析については、本研究において猫のパラフィン包埋肺組織を解析しているため、ホルマリン固定や度重なる加熱等の負の影響により、抽出した核酸の状態が理想的ではなく、シークエンスは不可能な状況にある。このため、抽出したRNAにおいて、癌化に関わる複数の蛋白質をピンポイントで解析し、その増減を考察する方向にシフトして現在鋭意実験を遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子解析を鋭意進め、形態・機能との相関を整理し、最終的な成果としたい。2024年5月より、研究結果を学術誌に投稿する準備を始めているため、これを今秋までに完結したい。
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