研究課題/領域番号 |
22K06038
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42030:動物生命科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 公一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (50330874)
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研究分担者 |
山中 大介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (10553266)
木村 良一 山陽小野田市立山口東京理科大学, 共通教育センター, 准教授 (20343022)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 老化 / シナプス可塑性 / 海馬 / Caホメオスタシス / イメージング / 加齢 / 記憶・学習 / 画像解析 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢社会において認知機能障害は大きな社会問題となっている。認知機能の基本単位とされる海馬神経シナプスの可塑的変化は細胞内Caシグナリングが引き金となっており、その機能発現には細胞内Ca濃度制御(細胞内Caホメオスタシス)が重要である。しかしCaホメオスタシスを担う分子のよるシナプス機能への影響についての詳細は依然として不明である。本研究は、高速Caイメージングや電気生理学的手法を用いて、細胞内Caホメオスタシスの加齢性変化によって引き起こされるCaシグナリングの変化を可視化することを目的としている。これにより加齢性脳疾患の創薬のターゲットや神経疾患の早期診断への寄与といった応用が期待される。
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研究実績の概要 |
我が国における高齢社会の到来は深刻なものとなっており、加齢に伴う認知機能障害は大きな社会問題となっている。認知機能の基本的要素とされる海馬神経シナプスの可塑的変化は細胞内Ca2+シグナリングが引き金となっており、その円滑な機能発現には細胞内Ca2+濃度制御(細胞内Ca2+ホメオスタシス)が重要である。本研究は加齢性認知機能低下の原因を細胞内Ca2+ホメオスタシスの加齢性変化によって引き起こされるCa2+シグナリングの変化に求め、その機序を解明することを目的としている。 今年度は加齢に伴うCaシグナルの変化に関与するタンパク質群を探索するため、若齢マウスまたは老齢マウスの海馬においてプロテオミクス解析(ラベルフリー定量法によるショットガン解析)を行った。網羅的に解析を行った結果、大きな変化があったものとして、老齢動物では電位依存性Ca2+チャネルであるCana1sが減少し、Ca2+/カルモジュリンシグナル系の一部が増強していた。一方当初想定していたNa+/Ca2+交換系やリアノジン受容体については今回の解析では観察されなかった。さらに量的な変化が見られなかった分子についてリン酸化プロテオミクスを含めた質的変化が加齢性に観察されるかどうか検討している。 Ca2+ホメオスタシスの加齢性変化後のCa2+シグナリングの可視化については、現在若齢個体からの記録を行っており、今後老齢個体からの記録、さらに上記のCa2+ホメオスタシス関連分子の影響をみるために阻害薬などを用いた記録を検討している最中である。また個体レベルにおける影響を検討するためテレメトリーシステムを用いた無麻酔無拘束の脳波測定システムを立ち上げた。今後多角的に研究を進めていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究計画において次の3つの学術的問いを明らかにする予定である。すなわち、「Ca2+ホメオスタシスの加齢性変化後のCa2+シグナリングの可視化」、「Ca2+ホメオスタシス関連分子の同定」、および「多光子励起顕微鏡を用いたin vivoにおける解析」である。今年度はCa2+ホメオスタシス関連分子の同定について、プロテオミクス解析による網羅的な探索を行ったが、当初ターゲットと考えられたNa+/Ca2+交換系やリアノジン受容体において加齢性変化は検出されなかったものの、Ca2+ホメオスタシスに重要と思われる他の分子群(電位依存性Ca2+チャネルであるCana1sやCa2+/カルモジュリンシグナル)について変化が観察され、一定の成果が得られたと考えている。これを手掛かりにし阻害薬や作動薬などの薬理学的方法などを用いてシナプス活動の加齢性変化を電気生理学的および画像解析のシステムにて明らかにしているところであり、トータルとしておおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行ったプロテオミクス解析によるCa2+ホメオスタシス関連分子の同定については、タンパク質分子の量的な変化のみに着目して解析を進めたため、分子修飾などの質的な変化は捉えられていない。今後の解析ではリン酸化プロテオミクスなどの手法により、質的な変化も含めた探索を進め、Caシグナル変化に関与するタンパク質の同定を進めていく。さらに、ウェスタン解析による追試を行うとともに、Caシグナルブロッカーを投与した影響などについても解析を進める予定である。 また、イメージング解析については次年度も継続して例数を確保し、上記の測定によって得られたCa2+ホメオスタシス関連分子の影響を、主に薬理学的手法によって検討する予定である。さらに、神経ネットワークとして細胞内Ca2+ホメオスタシスがどのように関連してくるかを検討するため、多光子励起顕微鏡を用いた解析やネットワークのイメージングを予定している。 また、個体レベルでの解析には脳波測定も有効な手段であり、現在テレメトリーシステムを用いた無麻酔無拘束の脳波測定システムを立ち上げ、海馬からの直接の生体信号を記録することが可能となった。脳波の示す意味など未知の部分も多いが、今後多角的に研究を進めていきたいと考えている。
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