研究課題/領域番号 |
22K06057
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
|
研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
沖野 哲也 川崎医科大学, 医学部, 講師 (10177149)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | バイオリソース / マンソン裂頭条虫 / クローン株 / 扁形動物 / 蠕虫 / 非モデル生物 / 全ゲノム |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに我々のグループは、イヌ・ネコを終宿主とするマンソン裂頭条虫(サナダムシ)の単一クローン化技術を世界で初めて確立した。本寄生虫のクローン化の成功により、マンソン裂頭条虫症に関わる生体現象のメカニズム解析において「統計学的」に有意義なデータが蓄積でき、加えて多細胞のモデル扁形動物としての新規バイオリソース化が可能となった。そこで本研究では、既存のモデル生物が備える研究基盤情報との比較により、本寄生虫のバイオリソース応用の優位性と有用性を検討する。
|
研究実績の概要 |
バイオリソース(生物遺伝資源)は、研究に使われる実験動物・植物・細胞・微生物・遺伝子などを指し、ライフサイエンス分野の発展のために必須の研究基盤である。我々は、イヌ・ネコを終宿主とするマンソン裂頭条虫(サナダムシ)のライフサイクルを実験室内で完成させ、世界で初めて単一クローン条虫株の増幅・維持システムを確立した(Okino et al. 2017)。本寄生虫のクローン化の成功により、本条虫症に関わる生体現象のメカニズム解析において「統計学的」に有意義なデータが蓄積でき、加えて本虫のバイオリソース化が可能となった。本虫のバイオリソース活用は、ヒトの代謝・免疫・再生・分化・加齢・老化などの研究領域において、パラダイムシフトを起こす新規メカニズムの発見に繋がる可能性を秘めている。 本研究では、マンソン裂頭条虫クローン株の全ゲノム情報および染色体レベルのゲノムアセンブリを取得後、遺伝子発現パターンを網羅し、既存のモデル生物が備える研究基盤情報との比較により、本寄生虫のバイオリソースの有用性を検証する。さらに、本虫クローン株を大量に増やすプロトコル改良により、バイオリソース活用のための安定供給システムを構築する。 2023年度は、マウス体内で維持していたクローン株の幼虫からDNAを抽出し、近接ライゲーションライブラリー作成とHiRise解析を行った。その結果、ゲノムアセンブルで90810KbのN50を含む563の配列から構成される998.04Mbのゲノム配列を得た。 また、4℃でストックした虫卵が4年11ヶ月後も孵化可能で感染能力をもつことを確認でき、新たに50個体のクローン株を確保することができた。これはバイオリソース化に必要な条件である「保存する」「集める」に貢献したことを意味する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クローン条虫株のリファレンスゲノム配列(約1.0Gb)および染色体レベルのゲノムアセンブリを取得できた。このことは、バイオリソース化のための最も重要な第1歩である。染色体(n=9)がまだ563本に断片化されているが、Kikuchi et al (2021)が公開している山口県産の野生のシマヘビ由来の幼虫の全ゲノム(PRJEB35375)と比較すると、L50において271に対し5と劇的に向上しており、完全長まであと1歩まできている非常に有用なデータである。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、クローン条虫株のバイオリソース化のためには、高精度の遺伝子のアノテーションが必要である。その第1歩として、配列情報マルチ解析ソフトウェアGeneious Primeを用いて、Liu et al (2022)によりマンソン裂頭条虫の幼虫と成虫のステージのトランスクリプトーム解析で登録されている80960リード(PRJNA761840)に得られた配列をマッピングする。 また、現時点までのデータをBioProjectとして、DRAへ登録し、それらを纏めた論文を仕上げる。2024年度「先進ゲノム支援・情報解析支援」への応募および、「先進ゲノム支援」技術コンサルティングへの依頼を通じて、全遺伝子配置マップの完成をめざす。 また、バイオリソースとしてマンソン裂頭条虫クローン株を安定供給するシステム改良のため、マウスなどの実験的第2中間宿主を用いない、in vitroでの長期保存法の開発を試みる。
|