研究課題/領域番号 |
22K06088
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
前川 裕美 九州大学, 農学研究院, 准教授 (80399683)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 接合型遺伝子 / RPD3L複合体 / 一次ホモタリズム / Flip-flop型接合型変換 / メタノール資化酵母 / 接合型変換 / Flip-flop / 染色体逆位 / 相同組換え / 接合 / 酵母 |
研究開始時の研究の概要 |
一部の子嚢菌酵母種は接合相手を自ら生み出せる接合型変換(Mating Type Switching, MTS)によるホモタリズム(self-fertile)を獲得し、同一株内で胞子形成が可能である。MTSの分子メカニズムとしてSaccharomyces cerevisiaeのカセット型機構が知られているが、最近Flip-flop型と呼ばれる新規の接合型変換メカニズムが明らかになった。本研究では最近見出されたFlip-flop型接合型変換メカニズムに注目し、分子機構とMTSのON/OFF制御機構の解明する。また、栄養飢餓条件下で接合型変換と接合が並行して誘導されるための制御機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
Ogataea naganihiiはO. polymorphaと近縁のホモタリック種であるが、ドラフトゲノム解析からFlip-flop型とは異なる一次ホモタリズム機構をもつと考えられている。まず、ゲノム配列解析により完全長のゲノム配列を取得したところ、予想通りMATaとMATalpha遺伝子は同一染色体上にあり、セントロメア領域内または隣接していることが予想された。まず、両MAT遺伝子が接合に必要であること、MATaとMATalpha遺伝子は栄養飢餓により転写誘導されることを明らかにした。次に、MAT遺伝子発現制御機構を明らかにするために、セントロメアとの関係に注目し、染色体上のセントロメアヒストンCENP-A領域を解析したところ、栄養条件に関わらず両MAT遺伝子はCENP-Aクロマチン領域内に位置することが分かった。MATa 遺伝子に隣接するSLA2遺伝子領域ではCENP-A量は低く、栄養条件でも高い転写発現がみられることから、MATa -SLA2の間付近がCENP-A領域の境界になっていると考えられた。続いて、RNA-seq解析により、飢餓条件で発現誘導される転写や染色体制御に関連する遺伝子群を同定し、これらの遺伝子欠失変異株の表現型解析を進めた。この解析から、MAT遺伝子の転写誘導に重要な因子として、ヒストン脱アセチル化酵素複合体Rpd3Lの構成因子をコードするDep1を見出した。これらの結果から、O. naganihiiはセントロメア領域内にあるMAT遺伝子の発現制御機構をもっており、 Rpd3L複合体が重要な役割を果たすことが示唆された。今後は、O. polymorphaのFlip-flop型接合型変換においてもクロマチン制御が関与するかどうかも検討する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究から、O. polymorphaの近縁種O. naganihiiの一次ホモタリズムにおける接合型遺伝子の発現制御機構を解明する足掛かりとなる結果を得ることができた。当初予定していたFlip-flop型機構の解析ではないが、領域セントロメアをもつ出芽酵母であるO. naganihiiのMAT発現制御機構の解析を進めることにより、セントロメア領域での転写がどのように制御されているかを明らかにすることができ、学術的意義が高い。また、O. polymorphaのFlip-flop型ホモタリズムとO. naganihiiの一次ホモタリズムの共通性を見出すことができれば、ヘテロタリズムからホモタリズムへの進化過程を理解するための重要な知見となる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2024年度は、Ogataeaの接合型変換へのセントロメアクロマチン制御の関与を明らかにすることを最大の課題とし、以下の研究を実施する。 (1)O. naganihiiクロマチン領域において、栄養条件により変化するヒストン修飾の有無を検討し、特異的な修飾を同定する。 (2)O. naganihiiのRpd3Lアセチル化酵素複合体がMAT上流域に直接結合し転写活性化に働くか、ヒストンアセチル化状態を変化させるかどうかを検討する。 (3)O. polymorphaのFlip-flop型接合型変換にセントロメアクロマチン制御が関与を明らかにするために、栄養条件を変化させた時のセントロメア領域でのRNA 発現、CENP-Aヒストン結合、ヒストン修飾の変化を調べる。
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