研究課題/領域番号 |
22K06099
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43020:構造生物化学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岡田 有意 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (20507181)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 薬剤耐性 / タンパク質 / 構造解析 / マクロライド / 抗生物質 / ABC輸送体 / 構造生物学 / 輸送タンパク質 / X線結晶解析 |
研究開始時の研究の概要 |
マクロライド系抗生物質等を排出するMacB輸送体について、立体構造解析の結果から、これまで知られていた輸送体とは大きく異なる基質輸送機構モデルを提唱した。しかし、現在までにMacBと基質の複合体の構造情報は得られておらず、その輸送機構の詳細は不明である。また先行研究により、MacBのペリプラズムドメインが向きを大きく動かし、ホモ2量体間で非対称に稼働することも明らかにした。 そこで本研究では、MacBの基質結合型の立体構造解析や変異体の活性測定等を組み合わせて、非対称に稼働するMacBによる基質輸送の詳細な分子機構を解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の対象であるマクロライド系抗生物質輸送体MacBは、病原菌等の細胞膜上に存在し、病原菌にとって有害なマクロライド系抗生物質を細胞外へ排出する機能をもっているタンパク質である。このタンパク質の働きによって、病原菌に薬が効かない薬剤耐性化が起こり、大きな社会問題となっている。そのため、このタンパク質がどのようなメカニズムで抗生物質を輸送しているのかを解明することは、排出されない薬剤の設計や阻害剤の開発にとても有用な情報を与える。そこで本研究では、マクロライド系抗生物質輸送体MacBの立体構造解析等の手法を用いて、このタンパク質がどのように薬剤を排出するのかを詳細に解明することを目指した。 現在までにMacB単独や、協働する別のタンパク質との複合体の状態の立体構造は明らかにされているが、マクロライド系抗生物質等の輸送される分子が結合した状態のMacBの構造は明らかにされていない。そこでさまざまな種類の輸送分子と調製したMacBを混合し、構造解析を行った。現在までのところ輸送分子が結合した状態のMacBの構造は得られていないが、新たに得られたMacBの複数の構造情報から、どの部分の構造が大きく変化するのかが明らかとなった。これはMacBの輸送機構の詳細を解明するうえで非常に重要な情報である。今後、さらに実験条件を検討し、輸送分子が結合した状態でのMacBの立体構造解析を目指す。 さらに、ホモログタンパク質について、上記と並行して構造・機能解析を進めた。複数作成した変異体の基質輸送活性測定を行い、基質認識に重要なアミノ酸残基を複数確認することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マクロライド系抗生物質輸送体MacBは、ATPの加水分解エネルギーを利用して基質を輸送するABC輸送体に分類されるが、外膜チャネルタンパク質等と三者複合体を形成する等、他のABC輸送体とは大きく異なった構造的特徴をもっている。またMacBの基質は、マクロライド系抗生物質の他に、ペプチド毒素、リポ多糖等生物学的に重要であり、その輸送機構の解明は重要である。現在までに複数のMacBの立体構造情報が報告されているが、いずれも基質非結合型でありMacBの基質輸送機構の詳細は不明のままである。そこで本研究では、MacBの基質結合型の立体構造を明らかにし、基質輸送の詳細な分子機構を解明することを目的とした。 さまざまな基質と精製したMacBを混合し構造解析のための結晶化条件の探索を行った。複数の条件で結晶が得られ、それらを用いてX線回折実験を行い、それぞれ構造解析を行った。その結果、現在までに基質の結合は確認できなかった。しかし、得られた複数の基質非結合型のMacBの立体構造情報から、膜貫通ドメインとペリプラズムドメインを繋ぐループ部分が大きく構造変化を起こしていることを明らかにした。今後、さらに結晶化条件の検討を行い、基質結合型のMacBの立体構造解析を行い、基質輸送機構の詳細な解明を目指す。 またホモログタンパク質において、同様に構造・機能解析を進めた。基質結合部位に変異を導入し、基質特異性に変化が生じるかを、基質排出活性を測定することによって確かめた。その結果、基質結合部位に存在する複数のアミノ酸が、基質認識に重要であることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
MacB-基質複合体の構造を得るために、結晶化条件の探索を行う。基質の種類やMacB精製条件の検討を行う。また、これまでに得られている構造情報から、基質輸送に重要と考えられる残基に変異を導入する。それらを用いて最小発育阻止濃度を測定することで基質輸送活性の変化を観察し、それらの情報も組み合わせて、基質輸送機構のモデルを構築する。 さらにホモログタンパク質の構造・機能解析も同時に進め、上記と同様に基質結合部位の構造と基質特異性の関係性を明らかにする。
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