研究課題/領域番号 |
22K06121
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
二井 勇人 東北大学, 農学研究科, 准教授 (90447459)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 膜内切断プロテアーゼ / 認知症 / 酵母 / 酵素 / 脳神経疾患 / アルツハイマー病 / 神経科学 / バイオテクノロジー / 応用微生物 |
研究開始時の研究の概要 |
膜内切断プロテアーゼは、水が存在しない膜内で加水分解を行う特殊なタンパク分解酵素で、どのようにして反応を遂行するのかについて、よく分かっていない。代表的な膜内切断プロテアーゼであるγセクレターゼ複合体は、アルツハイマー病の原因となる脳内アミロイドを作り出す、認知症治療において重要なターゲット分子である。本研究では、モデル生物である出芽酵母を使った独創的な解析手法と、クライオ電子顕微鏡を用いたタンパク質立体構造解析手法を統合的に用いることで、γセクレターゼ複合体による分解のメカニズムを明らかにする。認知症治療薬の開発への戦略を提案する成果が期待される。
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研究実績の概要 |
膜内切断プロテアーゼは疎水的な膜環境で特殊な加水分解を行うため、酵素学的には未知の点が多い。本研究では、認知症の原因となるアミロイドβペプチドを生成するγセクレターゼの活性化の分子機構を解明するために、Ⅰ. 酵母モデル系を活用したγセクレターゼ活性調節・基質認識機構の解明と、Ⅱ. γセクレターゼ活性化変異体のコンホメーション変化の解明を目的とした。 令和4年度においては、Ⅰ.酵母モデル系を活用した研究では、1)アミロイド前駆体(APP)切断部位の近傍に、γセクレターゼによる切断効率を上昇させる切断感受性変異を同定した。同定した変異はアスパラギン酸もしくはプロリンへの置換変異であった。変異体を哺乳類細胞に導入して解析したところ、切断感受性変異は家族性アルツハイマー病(FAD)のAPP変異での切断異常を回復させ、特にプロリン変異はAβのトリミングを促進することで長鎖・高毒性Aβの割合を大幅に低下させた。2)γセクレターゼの触媒サブユニットであるプレセニリン(PS1)の活性化変異体とAPPの切断感受性変異との間の相互作用を解析し、基質結合ポケットにおけるイオン相互作用が重要であることを明らかにした。 Ⅱ. γセクレターゼ活性化変異体の構造解析では、1)酵母モデル系で用いていた構成発現プロモーターをガラクトース誘導性プロモーターに変更して発現量を増加させ、γセクレターゼ大量発現系を構築した。2)Flagタグ(Pen2-Flag)抗体によるアフィニティ精製とゲルろ過クロマトグラフィーにより均一な複合体に精製した後、負染色による透過型電子顕微鏡解析を行って粒子状態を確認した。γセクレターゼは、プレセニリン、ニカストリン、Aph1、Pen2の4つのサブユニットからなる。酵母大量発現系から精製したγセクレターゼはニカストリンの含量が低く、精製の過程でサブユニット構成が保てない可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施を予定していた(I)酵母モデル系を活用したγセクレターゼ活性調節・基質認識機構の解明と、(II)γセクレターゼ活性化変異体のコンホメーション変化の解明について、達成度を自己評価する。 (I)酵母モデル系を用いたスクリーニングで同定した、アミロイド前駆体の切断感受性を上げる変異について、切断感受性を低下させるFAD変異と逆の作用を持つことを明らかにしたことは意義深い。特にプロリン変異によりAβのトリミングが促進する機構を明らかにすることは、アルツハイマー病の治療薬の開発にもつながる。プロリン変異による二次構造の不安定化が基質-酵素(ES)複合体形成に及ぼすと考えられる。一方、アスパラギン酸変異については、基質結合ポケットにおけるイオン相互作用が切断感受性上昇につながることが明らかとなった。 (II)従来の酵母モデル系を改良することで、γセクレターゼ大量発現系を構築した。発現系と精製系の構築、さらに負染色によってγセクレターゼの粒子を確認する目標は達成したが、ニカストリンの含量が少ないという課題が明らかになった。今後は、酵母でニカストリンに精製用のタグを付加することや、ヒト胎児腎(HEK293F)細胞を用いた大量発現系を用いるなど、発現・精製条件を最適化する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、γセクレターゼの機能と構造を解析する研究を進める。1年目にAPPの切断部位における切断感受性変異体の解析に成功して、APP変異体を解析する展望が開けた。すでにAPPの細胞外領域における変異についてもスクリーニングして同定しており、2年目以降はγセクレターゼとAPPの相互作用による基質認識機構を詳細に解析する。γセクレターゼの構造解析においては、酵母の系でのγセクレターゼ大量発現には成功したが、精製過程でニカストリンが外れる問題点が見つかった。ヒト細胞を用いた発現も含め、条件を検討して、2年目のクライオ電子顕微鏡での解析へと進む。
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