研究課題/領域番号 |
22K06127
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中嶋 昭雄 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 准教授 (70397818)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 減数分裂 / TORC1 / オートファジー / 選択的オートファジー / 分裂酵母 |
研究開始時の研究の概要 |
分裂酵母を用いて以下の4点について微視的および分子レベルでの解析を行い,減数分裂でのTORC1およびオートファジーの調節機構と生理機能について新たな分子モデルを構築することを目的とする。1)減数分裂における栄養ーTORC1シグナリングの動態解析と新たな特異的制御分子の探索,2)TORC1シグナル変異体を用いた減数分裂プロセスの微視的解析,3)TORC1とオートファジーの制御分子の減数分裂における動態解析,4)オートファジー関連分子変異体を用いた減数分裂プロセスの微視的解析。
|
研究実績の概要 |
進化的に保存されたSer/ThrプロテインキナーゼTORC1は,栄養シグナルなどからの入力をうけてタンパク合成など主要な細胞機能を制御する。オートファジーは主にTORC1により抑制的に調節され,飢餓やストレス環境での生体高分子やオルガネラの分解,リモデリングに関わる。本研究では,モデル生物である分裂酵母を用いて減数分裂におけるTORC1の調節機構およびオートファジーの制御と生理機能について,微視的および分子レベルで解明することを目指す。 今回,触媒サブユニットであるTor2とコア因子との結合が減数分裂期においても変わらず継続されていることを明らかにした。減数第一分裂前期および減数第二分裂前期特有のTORC1の細胞内局在について, TORC1構成因子の一つを欠失させると変化するが別の構成因子を欠損させると変化せず,構成因子ごとにTORC1局在への関与が異なることを見出した。RNAseq法の解析により,減数分裂期にTORC1活性を阻害して影響をうけた遺伝子発現は,延べ約800遺伝子で減少傾向,1000遺伝子で増加傾向が認められた。減少傾向の多くが減数分裂に関わる遺伝子であり,増加傾向の遺伝子の一部は,興味深いことに減数分裂時の染色体動態制御に関わる因子をコードするものであった。 これまでオートファジーが減数分裂期に増加することを示してきたが,減数分裂特異的オートファジーは環境中の栄養条件に依存せず増強されることを新たに見出した。オルガネラ選択的オートファジーについて解析し,複数のオルガネラで減数分裂特有に分解活性が増加することを見出し,それら選択的オートファジーに関与する分子も明らかにした。また,それぞれのオルガネラ選択的オートファジーに関わる分子の欠損株を用いて,減数分裂におけるオルガネラの動的解析を進め,オルガネラオートファジーの役割について検討を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNAseq解析により,減数分裂期にTORC1によってRNAの転写調節を受ける1000を超える遺伝子を見出した。それらには,複数の転写因子やプロテインキナーゼ,クロマチン制御因子などが含まれており,それらについてリアルタイム定量性PCR法で,RNAseq解析と同様の発現変動を再確認した。定量性PCR法で確認できた因子については,細胞内局在の変動やタンパク質の量的変動やリン酸化変動を追うために蛍光タンパクやエピトープタグを付加した分裂酵母株の作製し,TORC1との関係性について解析を進めている。 プロテオーム解析によるTORC1およびTORC1シグナリング関連分子と減数分裂期特異的に相互作用するタンパク分子の探索については,TORC1構成因子の変わらない結合は明らかにできたが,減数分裂誘導のための長期栄養飢餓件下でタンパク分解活性が強く,大量の阻害剤を用いたが,関連タンパク分子の精製が難しい結果となり,処理条件の検討を進めるとともに,タンパク質の精製を必要としない近位依存性ビオチン標識による相互タンパクの探索に方法を切り替えて進めていく予定である。 減数分裂期のオートファジーの制御および生理機能について,非選択的オートファジーと同様に,複数のオルガネラを標的とした選択的オートファジーも減数分裂特異的に増加することを見出した。また,それぞれオルガネラ選択的オートファジーに関与する分子が,減数分裂期での分解にも関わることが明らかとなった。今後は,それら関連分子の遺伝子欠損細胞を用いて,減数分裂におけるオルガネラの動態解析や選択的オートファジーの生理機能解明を進めていく。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を受け,次年度は以下の課題を中心に取り組む。 減数分裂期のTORC1機能制御に関わる相互作用分子について,近位依存性ビオチン標識法を利用したプロテオーム解析による探索を行い,得られた候補分子の減数分裂における機能やTORC1との相互作用について,遺伝子欠損株などを作製して詳細に解析を行う。 減数分裂期のTORC1は特異的な細胞内局在を示すことを見出したが,その生理的意義の解析のため,TORC1を液胞膜,ゴルジ膜,細胞膜など,他の領域に異所的に局在化させて解析を行う。RNAseq解析から減数分裂期にTORC1阻害により転写レベルに影響のあった候補遺伝子について,対象を広げ定量PCRによる再確認,遺伝子欠損株を作製しての機能解析,TORC1シグナルによるそれら分子の機能制御について詳細な解析を進める。 減数分裂期のオルガネラ選択的なオートファジーについて,まだ検討していないオルガネラのオートファジー分解の解析,さらに関係する分子のプロテオーム解析や遺伝子欠損株を用いることで,分子機構と生理的な役割について検討し,同時に減数分裂過程でのオルガネラの動態について解析する。また,減数分裂特異的なオートファジー活性化メカニズムについて,関わる分子の探索を行う。
|