研究課題/領域番号 |
22K06133
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
十島 二朗 東京理科大学, 先進工学部生命システム工学科, 教授 (00333831)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | GPCR / エンドサイトーシス / リサイクリング / ゴルジ体 / エンドソーム |
研究開始時の研究の概要 |
Gタンパク質共役受容体(GPCR)はリガンドの結合により活性化されると、エンドサイトーシスにより細胞内へと取り込まれる。その後、取り込まれた受容体は不活性化され、リソソームで分解、もしくはリサイクル経路により細胞膜へ運ばれ再利用されるが、その基本的な分子機構には不明な点が多い。私達は以前の研究において出芽酵母変異体ライブラリーの網羅的スクリーニングを行い、GPCRのエンドサイトーシス機構に異常のある変異体を多数単離した。本研究は、これらの出芽酵母変異体について、責任遺伝子がコードするタンパク質の機能解析により、GPCRのエンドサイトーシスによる分解・再利用の諸過程を制御する分子機構を解明する。
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研究実績の概要 |
細胞膜上の受容体はリガンドの結合により活性化されると、エンドサイトーシスにより細胞内へと取り込まれる。その後、取り込まれた受容体は不活性化され、リソソームで分解、もしくはリサイクル経路により細胞膜へ運ばれ再利用される。Gタンパク質共役受容体(GPCR)も、同様にエンドサイトーシスにより不活性化されるが、その基本的な分子機構には不明な点が多い。本研究は、以前に単離することに成功したGPCRのエンドサイトーシス機構に異常のある出芽酵母変異体について、責任遺伝子がコードするタンパク質の機能解析により、GPCRのエンドサイトーシスの諸過程を制御する分子機構を解明することを目的とする。特に、GPCRの分解・リサイクルの基本的な分子機構を解明し、それを新しいGPCR作用薬開発の基盤とすることを目的とする。これらの目的について、昨年度は、①GPCRのクラスリン小胞への取り込み過程における細胞膜脂質成分の役割、②GPCRがクラスリン小胞から初期エンドソームに輸送される機構、③GPCRが初期エンドソームから分解・再利用経路へ輸送される機構、④初期エンドソームで選別されたGPCRが細胞膜にリサイクルされる機構、の4つの課題について研究を実施した。この中で、①については細胞膜の主要構成成分の一つであるPSがエンドサイトーシスされたGPCRの細胞膜へのリサイクリングに重要な役割を果たしていることを明らかにした。②③については、GPCRが初期エンドソームから分解経路に輸送される過程において、ポストゴルジ体輸送経路を介して低分子量Gタンパク質Rab5を活性化する分子機構を明らかにした。さらに、④についてはGPCRがエンドサイトーシスされた後に、ゴルジ体内の特定領域に輸送され、そこで分解、再利用経路へと輸送されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画にあげた4つの課題について、①GPCRのクラスリン小胞への取り込み過程における細胞膜脂質成分の役割については、ホスファチジルセリン(PS)を産生することができない変異体を作成し、GPCRのエンドサイトーシス、リサイクリングへの影響を調べた。この結果、PS欠損細胞では、GPCRのエンドサイトーシスが著しく損なわれており、その原因としてゴルジ体から細胞膜へのGPCRの輸送に欠陥があることを明らかにした。この研究成果については、昨年欧文雑誌CSF誌に発表している。②については、クラスリン小胞の形成にEp15/Pan1pタンパク質に着目し、通常は細胞膜に局在するEp15/Pan1pをペルオキシソームに強制的に係留することにより、通常は起こりえないペルオキシソームにおいてエンドサイトーシス過程が進行するといった驚くべき結果を得ることができた。この成果については欧文雑誌JCB誌に発表している。③については、GPCRが初期エンドソームから分解経路へと輸送される過程における、Rab5の活性化機構を明らかにした。特に、ゴルジ体からエンドソームへの輸送小胞であるGGA小胞が重要な役割を果たしており、GGA小胞へのRab5の活性化因子(GEF)であるVps9pのリクルートが重要であることを明らかにした。この成果については、現在論文を投稿中である。さらに、④については、GPCRがリサイクリング経路へと選別される領域がゴルジ体内の特定領域であることを見出した。このゴルジ体内くかくにおいては、生合成経路から輸送されてきたV-ATPaseも局在していると考えられ、選別区画の酸性化が生じていると考えられた。この結果についても、現在論文の査読が終わり修正版を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
①GPCRのクラスリン小胞への取り込み過程における細胞膜脂質成分の役割、については昨年度明らかにしたPSの機能をさらに詳しく解析する。具体的には、細胞膜におけるPSとPI4Pの交換輸送や、PI4P自体の役割について明らかにしていく。②GPCRがクラスリン小胞から初期エンドソームに輸送される機構、についてはアクチン骨格の主要な制御因子(RhoファミリーGTPase、Formin、コフィリン脱重合因子等の必須遺伝子)について、温度感受性変異体を作成し、アクチン骨格とエンドソームの結合を仲介するタンパク質、およびクラスリン小胞と初期エンドソームの融合に関わるタンパク質を同定する。③GPCRが初期エンドソームから分解・再利用経路へ輸送される機構については、Rab5との物理的、遺伝学的相互作用について解析し、GPCRが初期エン ドソームから分解・再利用経路へと輸送される機構を明らかにする。④初期エンドソームで選別されたGPCRが細胞膜にリサイクルされる機構については、エンドソームの酸性化がRab6、GARP複合体、レトロマー複合体などの機能にどのような影響を与えるかについて解析する。
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