研究課題/領域番号 |
22K06138
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
神村 圭亮 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (30529524)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ヘパラン硫酸 / プロテオグリカン / グリピカン / シナプス / シナプス可塑性 / へパラン硫酸 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで我々は、グリピカンがグルタミン酸受容体の局在を調節することで、飢餓時に誘導されるシナプスの形態変化と探餌行動を調節することを見出した。しかしながら、このような可塑的変化において HS 鎖とその微細構造がどのような役割を果たすのかは全くわかっていない。そこで本研究では、モデル生物であるショウジョウバエを用い、シナプスと行動の可塑的変化におけるグリピカンの HS 鎖とその微細構造の役割を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
ヘパラン硫酸プロテオグリカン (HSPG) はコアタンパク質に糖鎖であるヘパラン硫酸 (HS) が結合した糖タンパク質であり、細胞膜表面及び細胞外マトリックスの主要な構成分子として生体内に広く分布する。HSPG は細胞増殖、器官形成、ウイルスの感染など様々な生理現象を調節するが、シナプス形成においても細胞膜貫通型 HSPG であるニューレキシンや GPI アンカー型 HSPG のグリピカンが深く関与することが知られている。またこれらの HSPG 及び HS 鎖の異常が自閉症や統合失調症などの神経・精神疾患を引き起こすことが報告されている。しかしながら、シナプスにおける HSPG の作用機構については未だ多くのことが分かっていない。これまで我々はショウジョウバエの神経筋シナプスの形成においてグリピカン Dally-like (Dlp) が飢餓時に誘導されるシナプスの可塑的な形態変化と探餌行動を調節することを明らかにしている。また昨年度の CRISPR-Cas9 を用いたゲノム編集により Dlp の全ての HS 付加部位 (セリン残基) をアラニンに置換した dlpΔHS 個体を用いた解析から、この飢餓依存的なシナプスと行動の可塑的変化には Dlp の HS 鎖が必要であることが判明した。そこで次にこのシナプスの可塑的変化においてDlpがグルタミン酸受容体の局在を調節する可能性を調べた。STED顕微鏡を用いて調べた結果、Dlpは HS 鎖を介してシナプス部位へのグルタミン酸受容体の取り込みを調節することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのシナプスにおける HSPG の機能解析はニューレキシン、グリピカン及びアグリンなどのコアタンパク質が中心であり、それぞれの HS 鎖が果たす役割については不明であった。我々は HS 鎖の役割を明らかにするために、 Dlp の HS 鎖だけを欠失した dlpΔHS 個体を作製し解析を行ったところ、dlpΔHS 個体は dlp 欠失個体と同様にシナプスと行動の可塑性に異常をきたすことが判明した。またこの可塑的変化において Dlp は HS 鎖を介してグルタミン酸受容体のシナプス部位への取り込みを調節することが示唆された。この研究成果の一部に関しては2023年に誌上発表を行った。本研究のようなシナプスにおける特定の HSPG の HS 鎖の役割に着目した研究は少なく、今後解析を進めることで HS 鎖の詳細な作用機序が明らかになると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Dlp がどのような作用機構によりグルタミン酸受容体の局在を調節するのかを明らかにする。特に Dlp が HS 鎖を介してグルタミン酸受容体と相互作用する可能性を幼虫神経筋シナプス抽出液を用いた共役免疫沈降法により検討する。また様々な HS 修飾酵素の欠失変異体を用いて、HS 微細構造の異常が飢餓によるシナプス終末の形成、幼虫の行動、及びグルタミン酸受容体の局在にどのような影響を与えるのかを解析する。次に各 HS 修飾酵素の標的が Dlp であるかどうかを調べるために、修飾酵素と Dlp の二重欠失変異体を作製し単独欠失変異の表現型と比較する。修飾酵素が Dlp の HS 鎖を標的とする場合、dlp - HS 修飾酵素二重欠失変異体は dlp 欠失変異体と類似した表現型を示すことが予測される。以上の解析により、シナプス及び行動の可塑的変化における Dlp の HS 微細構造の役割を明らかにする。
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