研究課題/領域番号 |
22K06139
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
千村 崇彦 東京大学, 医科学研究所, 助教 (90392034)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | シグナル伝達 / 神経可塑性 / カルシウム |
研究開始時の研究の概要 |
「カルシウムイオンがどのように神経可塑性を制御するのか?」 この根源的な問いに答えるため、神経細胞に発現する蛋白質に着目し、その分子的特性を調節するリン酸化状態、特にカルシウム依存的に起こる脱リン酸化反応の制御機構を解明する。新規に発見した脱リン酸化反応とその検出法を用い、(1)この系を制御しうる因子として我々が独自に単離した新規蛋白質が脱リン酸化制御に果たす役割を明らかにすると共に、(2)脱リン酸化反応の標的となる新規な基質蛋白質の探索を進める。
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研究実績の概要 |
「カルシウムイオンがどのように神経可塑性を制御するのか?」 この根源的な問いに答えるため、神経細胞に発現する蛋白質に着目し、その分子的特性を調節するリン酸化状態、特にカルシウム依存的に起こる脱リン酸化反応の制御機構を解明する。新規に発見した神経細胞における脱リン酸化反応と、それをin vitroで再現する独自に構築したin vitro脱リン酸化反応系を用い、以下の2点を主たる研究の柱として解析を進めている。 (1)神経細胞に発現している機能未知分子として我々が独自に単離した新規蛋白質UF1が前述の脱リン酸化制御に果たす役割を明らかにすること、(2)当該脱リン酸化反応の標的となる新規な基質蛋白質を、質量分析などのプロテオミクス解析を用いて網羅的に探索し、脱リン酸化反応の全体像を明らかにすること。 2022年度の進捗状況は以下の通りである。 (1)UF1の生化学的特性の解析を行うため、大腸菌リコンビナント蛋白質精製条件の確立、及び生化学的アッセイ法の確立を重点的に進めた。リコンビナントUF1をGST融合蛋白質として精製条件を確立した。また、溶出に用いた還元型グルタチオン、及びGST蛋白質それ自体は脱リン酸化反応に影響を与えないことを確認し、GST融合蛋白質存在下でのin vitro脱リン酸反応の条件を確立した。当該条件においてGST-UF1の脱リン酸化反応に対する影響を計測したところ、UF1には脱リン酸化抑制活性があることが判明した。この発見は、神経細胞におけるシグナル伝達系の理解において極めて重要な知見である。 (2)脱リン酸化反応の標的となる新規蛋白質の網羅的解析を進めるため、質量分析に供するサンプルの調製方法、蛋白質量の検討を進めた。マウス脳抽出液を用いる方法と、神経細胞の初代培養細胞の抽出液を用いる方法を比較し、前者の方が質的に優れた方法であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属研究室のある研究棟の改修工事により、研究室にある研究設備を全て移設する必要が生じ、移設作業及びそれらの準備作業を含め、一定期間実験作業を中断せざるを得ない状況が生じた。特に神経細胞初代培養系を用いる細胞生物学的な実験は、培養を開始してから解析に用いるまで3週間から1か月程度培養を続ける必要があることから影響が大きく、実質的に2~3か月程度計画の遅れが生じることとなった。対策として生化学的解析を重点的に進めるという次善策を採ったことによりUF1の生化学的特性として脱リン酸化抑制活性の発見に至ったことは、本研究課題を進める上で極めて大きな進捗であり正しい判断であったと考えるが、当初の予定より若干の遅れがあるものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)2022年度の進捗として「UF1がカルシウム依存的な脱リン酸化シグナル反応系を阻害する生化学的活性を有する」という大きな発見があった。この新規な生化学的特性をさらに明らかにすることは、神経機能制御の分子機構の解明に資するものと期待されるため重点的に進める。特にUF1蛋白質のどのような部位が活性発揮に重要な役割を果たすか、どのような蛋白質との相互作用に依存しているか、といった解明が重要となる。細胞内のシグナル伝達を支える蛋白質間ネットワークの理解が進むと共に、そのような特定部位を標的とした低分子の特定による新規治療薬候補分子の特定など医学的応用への道を開くことに繋がる事が期待される。そのため、UF1に関しデリーションシリーズやアミノ酸変異の導入を行い、生化学的活性の有無と対応づけを行う。将来的にNMR,X線結晶構造解析によるUF1の3次構造の解明まで視野に入れておく必要があるものと思われる。 (2)申請者が独自に確立した「神経細胞におけるカルシウム依存的な脱リン酸化反応を検出するin vitro系」を用いて、引き続きカルシウムを介した情報伝達の理解を進める。2022年度における検討の結果採用したマウス脳抽出液を用い質量分析に供するサンプル調製方法の確立を行う。リン酸化ペプチド自体が微量であることが想定されるため、界面活性剤等が検出のバックグラウンドになるような場合はそれらの含有量を下げる等、質量分析への至適化を行う。必要に応じて2次元ゲル電気泳動及び抗リン酸化抗体を用いた解析により微量なリン酸化の変化に関する検討も視野に入れ、解析を進める。
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