研究課題/領域番号 |
22K06149
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
斉藤 康二 北里大学, 理学部, 講師 (70556901)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 腎糸球体 / ポドサイト / Rac / FilGAP / 腎糸球体上皮細胞 / アクチン細胞骨格 / Rho small GTPase |
研究開始時の研究の概要 |
腎臓の濾過機能に必須の腎糸球体上皮細胞(ポドサイト)の突起構造の形成には、Rho Small GTPaseの一つであるRacの活性抑制が重要である。ポドサイトでRacの活性抑制に働く分子としてその不活化因子(GAP)であるFilGAPが候補に挙げられている。本研究では、細胞培養系で生体に非常に近い突起構造の形成を誘導できるポドサイトの細胞株および初代培養系を用い、突起形成におけるFilGAPによるRacの活性制御機構を細胞生物学および生化学的手法により詳細に解析する。
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研究実績の概要 |
腎ポドサイトは腎臓の濾過機能に必須の突起構造を持つ。ポドサイトの突起構造の形成には、Rho small GTPaseであるRacの活性抑制が重要である。以前、ポドサイトでRacの活性抑制に働く不活化因子としてFilGAPを同定している。さらに本研究にあたり、ポドサイトの突起形成において、cAMPの標的分子であるEpac1 (Rap1の活性化因子)の下流でFilGAPの機能が制御されていることを示唆する結果を得ていた。このFilGAPの機能制御機構を明らかにするため、in vitroポドサイト培養系を用いて実験を行い、本年度は以下の2つの成果を得た。1) 昨年度、Rap1の活性が高すぎても低すぎてもポドサイトの突起形成が抑制されることを示した。本年度は、Rap1の活性化因子であるEpac1の解析を行った。その結果、Rap1同様、ポドサイト培養細胞におけるEpac1の恒常活性化と不活性化は、いずれにおいても突起形成を抑制した。これらの結果から、Epac1によるRap1の適切な活性制御がポドサイトの突起形成に重要であることが示唆された。2) 以前、FilGAPの機能制御機構の一つとして、そのPHドメインを介した細胞膜PI(3,4,5)P3との結合による局在制御を明らかにしている。PI(3,4,5)P3の産生にはPI3キナーゼが関与しており、さらに、Rap1シグナル下流でPI3キナーゼが活性化されるメカニズムの存在が知られている。以上のことから、Rap1シグナル下流でFilGAPの機能が制御されている可能性が考えられた。そこで本年度はまず、FilGAPと細胞膜PI(3,4,5)P3との結合がポドサイトの突起形成に関与しているか調べた。その結果、PI(3,4,5)P3と結合できないFilGAPを発現したポドサイト培養細胞では突起形成が抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、以下の3つの項目を当初研究計画として挙げていた: ①初代培養ポドサイトの突起形成におけるFilGAPの関与、②突起形成におけるFilGAPの機能制御機構、③ポドサイト障害誘起因子による初代培養ポドサイトの突起形成への影響。計画①は順調に進行し、この成果を含む論文を本年度発表した(FASEB J 38, e23504, 2024)。本年度は、計画②を中心に行った。計画②では、Epac1によるRap1の適切な活性制御がポドサイト培養細胞の突起形成において重要であることが示唆された。さらに、Rap1シグナル下流でFilGAPの機能が制御されている可能性を考え、実験を進めた。その結果、本年度はまず、FilGAPのPHドメインを介した細胞膜PI(3,4,5)P3との結合がポドサイトの突起形成に関与していることを示唆する結果を得た。このように、計画①は終了し、計画②も順調に進んでいることから、本研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として、計画②:突起形成におけるFilGAPの機能制御機構と計画③:ポドサイト障害誘起因子による初代培養ポドサイトの突起形成への影響を進めていく。計画②ではまず、ポドサイトにおけるcAMPシグナルの活性化が細胞内のRap1活性に与える影響を調べる予定である。以前の実験で、ポドサイト培養細胞でcAMPシグナルを活性化して突起形成を誘導したとき、誘導後数時間後では細胞内のRap1活性の低下がみられた。しかしこれまでのEpac1およびRap1の結果から、ポドサイトの突起形成においてRap1の活性は適切に制御される必要があることが示唆された。したがって、Rap1活性の低下は一過性の可能性が考えられる。そこで、突起形成の過程でRap1の活性がいつどのように制御され、変化するのか、生化学および細胞生物学的手法を用い、より詳細な解析を行う予定である。さらに、ポドサイトの突起形成において、Rap1シグナル下流でFilGAPの機能が制御されるメカニズムを明らかにしていく予定である。本年度、FilGAPのPHドメインを介した細胞膜PI(3,4,5)P3との結合がポドサイトの突起形成に関与していることを示唆する結果を得ている。これまでに得られている結果とも考え合わせると、1) Rap1によるPI3キナーゼの活性化、2) PI(3,4,5)P3の産生、3) FilGAPの細胞膜への局在化、4) Rac活性の抑制、というシグナル経路が考えられる。そこでこれら1)から4)の経路の詳細な解析を行う予定である。計画②がこれまで通り順調に進んだ場合、最終的に計画③として、cAMP下流のシグナル経路の活性化が、突起消失を伴うポドサイト障害に対して回復効果があるか、検証していく予定である。
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