研究課題/領域番号 |
22K06155
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平山 弘人 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (50525847)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | NGLY1 / PNGase / 細胞内輸送 / 糖鎖修飾 / 糖鎖代謝 / 小胞体 / 細胞質 / glycoprotein / secretory protein / ER stress |
研究開始時の研究の概要 |
細胞質に存在するPNGase/NGLY1は細胞質における糖鎖代謝の第一段階の反応に関わる酵素である。本酵素が欠損することによって生ずる遺伝病,NGLY1欠損症が2012年に報告されたが,本病態の分子メカニズムについては未だ不明な点が多い。本研究では我々が現在までに同定した,野生株に比べてNGLY1欠損細胞で細胞外への分泌量が著しく変化している分泌タンパク質10種類の中で,細胞分化や個体の発生過程において重要な役割を果たす可能性の高い複数のタンパク質の挙動に着目し,分泌異常のメカニズムの解析を行なう。最終的に着目したタンパク質の分泌異常とNGLY1欠損症の分子病態との関連性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
細胞質ペプチド:N-グリカーゼ(PNGase,哺乳動物ではNGLY1)は糖タンパク質からN-結合型糖鎖を脱離する反応を触媒するアミダーゼであり,真核生物に広く保存 されていることが知られている。新生糖タンパク質は小胞体内腔で正しく折り畳まれた後に,そのタンパク質が機能を発揮する場所へと輸送される。一方,新たに合成された糖タンパ ク質のうち,正しい折りたたみ構造をとることが出来なかった異常糖タンパク質は小胞体品質管理機構(ERQC)によって選別され,細胞質へと逆行輸送された後 に,ユビキチンープロテアソームによって分解される。小胞体関連分解(ERAD)と呼ばれるこの経路の中で細胞質PNGaseはかさ高く表面積のの大きいN-結合型糖鎖 をタンパク質から脱離することによって,筒状構造をとっているプロテアソームにおけるタンパク質の分解効率を向上させていると考えられている。我々はNGLY1欠損HeLa細胞(NGLY1-KO細胞)で細胞外への分泌が減少しているタンパク質を複数見出し,その中でwntシグナルの調節に関わるタンパク 質DKK1に着目し,解析を進めている。現在までに,DKK1の発現減少は遺伝子転写レベルではみられないことを確認している。このことから,本タンパク質は翻訳後,なんらかの理由で細胞外への分泌が減少していることが予想された。そこで我々は,FLAGタグを付加したDKK1をHeLa細胞に発現させてその細胞外への分泌異 常のメカニズムを詳細に解析することとした。その結果,分泌異常だけでなく,細胞外へと分泌されたFLAG-DKK1はNGLY1-KO細胞由来の野生株のものと比べる と,若干の分子量増加が見られた。そこで,この分子量変化に着目しそのメカニズムを明らかにするための解析を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GLY1-KO細胞由来のDKK1で分子量の増加が見られたものの,その差がわずかであるために,SDS-PAGEによる分離を行う際のSDS-PAGEの泳動条件の検討,サイズの 大きいゲルを使用することによる分離の向上等を試みたものの,分離の差を明瞭にすることが困難であった。最終的には,ゲルの分離濃度と泳動時間を至適化することによって,明瞭にバンドサイズを区別することに成功した。DKK1はN-およびO-結合型糖鎖の修飾を受けることが知られており,細胞内に存在 するDKK1と細胞外に分泌されたDKK1ではその糖鎖構造の差により分子量に大きな違いが生じることが知られている(細胞内DKK1の分子量:30kDa, 分泌型DKK1の分 子量:40kDa)。この分子量増加の原因がN-結合型糖鎖由来のものであるかを検討するために,DKK1からPNGaseF処理によりN-結合型糖鎖を脱離し分子量を比較し た。しかしながらNGLY1-KO細胞由来のDKK1では未だ分子量の増加が見られた。このことから,DKK1の分子量増加はO-結合型糖鎖修飾の変化または他の翻訳後修飾 による可能性が強く示唆された。また,NGLY1-KO細胞では,DKK1の形成するS-S結合の形成に 異常が生じているのではないかと考えて,フリーのcysteinを修飾するPEG-PCMalによって解析を行った。その結果,WTではフリーのcystein が野生株に比べて多く存在することを示唆するデータを得た。これらの結果から,NGLY1欠損細胞では何らかの要因によってDKK1の折りたたみが正しく行われていない可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
上述の結果から,NGLY1-KO細胞ではDKK1が正しい折りたたみ構造をとれず,その結果, タンパク質の表面に露出した領域に何らかの修飾が生じて分子量が増加している可能性が示唆された。今後はNGLY1-KO細胞に発現するDKK1のフォールディング状態および修飾について解析を進めてく予定である。
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