研究課題/領域番号 |
22K06162
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木下 実紀 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 特任助教(常勤) (30790985)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 電子顕微鏡 / 細菌 / 蛋白質 / 遺伝学 / 感染症 |
研究開始時の研究の概要 |
べん毛輸送装置はATPと細胞膜を隔てた電位差すなわち膜電位を利用してべん毛構成タンパク質を輸送します。これまでに、ATPase複合体が輸送ゲートタンパク質FlhAやFlhBに結合しATPを加水分解すると、輸送ゲートが開き、輸送基質タンパク質が水素イオン(H+)の内向きの流れに共役して輸送チャネル内を拡散移動すること発見しました。本研究では、クライオ電子顕微鏡による立体構造解析と遺伝学・生化学的解析を上手く組み合わせることで、個々の輸送ゲート構成タンパク質がどのように時間的および空間的に作動してH+の内向きの流れに共役したタンパク質輸送というダイナミックな機能を実現するのかを明らかにします。
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研究実績の概要 |
べん毛輸送ゲート複合体は、プロトンの内向きの流れに共役してべん毛構成タンパク質を細胞外へ送り出す。これまでに、熱揺らぎの影響を強く受けるにもかかわらず、輸送ゲート複合体にはべん毛構成タンパク質が高速かつ高効率に細胞外方向へのみ拡散移動できるしくみが装備されているが、その実体は未だ謎である。本研究では、クライオ電子顕微鏡を用い、輸送ゲート複合体部分を高分解能構造解析することで、熱揺らぎをうまく取り入れながら高速・高効率に輸送基質タンパク質を輸送できる輸送チャネル複合体の構造基盤を解明することを目的とする。本年度の主な成果は以下に示す。 1. 精製したFliPQR-FlhB複合体はFlhBの細胞質ドメインがFliPQR複合体と相互作用することによりダイマーを形成した。クライオ電子顕微鏡によりFliPQR-FlhB複合体の構造解析を行なった結果、FlhBに対応する電子密度が観察された。輸送基質蛋白質が輸送ゲート複合体に結合した輸送中間複合体の精製にも成功した。 2. FliFのペリプラズム領域にはRBM1, RBM2, RBM3と呼ばれるモチーフが存在し、RBM2-RBM2分子間相互作用およびRBM3-RBM3分子間相互作用によりMSリングが形成される。輸送ゲート複合体はRBM2リングの中心孔に組み込まれて機能する。FliFを輸送ゲート構成蛋白質やCリング蛋白質と共発現させ、ショ糖密度勾配遠心法によりMSリング複合体を精製した。精製標品をクライオ電子顕微鏡により構造解析を行なった結果、3.1Å分解能でRBM2リングの原子モデルを構築した。得られた原子モデルに基づいて変異体解析を行なった結果、RBM2のi-loopと名づけたループ領域がFliPおよびFliRと直接相互作用することにより、輸送ゲート複合体がRBM2リングの内部に安定に組み込まれることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クライオ電子顕微鏡により、輸送ゲート複合体が組み込まれる場所として働くFliFのRBM2リングの形成メカニズムを明らかにするとともに、FliPQR-FlhB複合体の原子モデルの構築も可能となった。さらに、輸送中間複合体の精製にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
クライオ電子顕微鏡によりFliPQR-FlhB複合体および輸送中間複合体の構造解析を進める。得られた原子モデルに基づいて変異体解析を行い、輸送ゲート複合体の作動メカニズムを明らかにする。
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