研究課題/領域番号 |
22K06164
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
鷹野 優 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (30403017)
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研究分担者 |
近藤 寛子 北見工業大学, 工学部, 助教 (60700028)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 水素結合 / 二次構造 / 分子力場 / 蛋白質 / 分子動力学シミュレーション / 量子化学計算 |
研究開始時の研究の概要 |
蛋白質の機能発現機構の理解には分子動力学(MD)シミュレーションは有効な手段である。しかし、「MDシミュレーションで必須となる力場として高精度のものがない」、という問題点が残っている。 そこで、本申請では、我々が明らかにした「アミノ酸主鎖の水素結合エネルギーには高次構造依存性がある」という現象にもとづき、高精度のQM計算によって蛋白質構造形成相互作用における高次構造依存性を明らかにし、そのような高次構造依存性を取り入れた新規な分子力場を開発する。
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研究実績の概要 |
蛋白質の高次構造に依存する新規な力場関数とそのパラメータを開発するために、代表的な二次構造について水素結合エネルギーを量子化学計算とNegative Fragmentation Approach (NFA)を組み合わせて計算し、古典力場との比較を行った。2023年度は、側鎖の影響を調べるために、Glyをもとにしたモデルを作成し、αヘリックス、3_10ヘリックス、πヘリックス中の水素結合をNFAにより計算し、Alaの結果と比較した。その結果、Glyの場合も、水素結合を形成するペプチド結合のみで構成されるミニマルモデルでは水素結合エネルギーは分子力場のものとほぼ同じになるが、隣接するペプチド結合を含むモデルでは水素結合エネルギーが小さくなることから、隣接するカルボニル基およびアミノ基の影響よりペプチド結合が脱分極し、水素結合が不安定化されることが示唆された。またその脱分極効果の定量性についてはAlaと同程度の影響であることが明らかとなった。Glyの3_10ヘリックスについて、Alaの3_10ヘリックスと同様、末端から2つ目の水素結合ペアで水素結合が大きく不安定化されていた。この傾向に関する違いは、ヘリックス構造の違いにより隣接するカルボニル基およびアミノ基との相対配置が異なること、より遠方のペプチド結合による間接的な効果があることが明らかとなった、一方で、3_10ヘリックスについては上記の通り同様の効果があらわれたものの、その定量性に違いがあった。今後詳細な解析を行いその原因を明らかにする。また、以上の結果を加えて、近距離の相互作用の影響を原子の電荷を反映させることで量子化学計算の結果を再現できることがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二次構造形成において重要である水素結合エネルギーの二次構造依存性に関して、ヘリックス中の水素結合への側鎖の影響についても検討し、Glyに関してはAlaと同様の結果を得られ、側鎖の影響は小さいことが期待されることが明らかとなった。現在提案している分子力場を改良する方法では、近傍のペプチド結合(主鎖)の影響を原子電荷に反映させるが、側鎖の影響が小さいことが期待できることから、現方針で進めることの妥当性が強められたので、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Alaの3_10ヘリックスで見られたより遠方のペプチド結合の効果については、Glyの3_10ヘリックスでも同様の効果があらわれたものの、その定量性に違いがあった。定量性の違いを明らかにするためより詳細な解析を進める。また、他の側鎖についても同様の方法で水素結合エネルギーの評価を行い、結果を分子力場開発につなげる。分子力場開発に関しても近距離の相互作用に基づき原子電荷を変化させる方法を分子動力学プログラムに実装していく。さらには、本計画を通じて開発したNFAはタンパク質中の水素結合でだけでなく、タンパク質リガンド相互作用における各アミノ酸残基の影響の定量化など、より広範な応用先があると考え拡張をしていく。
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