研究課題/領域番号 |
22K06172
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 東海学院大学 |
研究代表者 |
小田 俊郎 東海学院大学, 健康福祉学部, 教授(移行) (20321739)
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研究分担者 |
太田 元規 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (40290895)
武田 修一 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任助教 (50509081)
岩佐 充貞 名古屋大学, 情報学研究科, 協力研究員 (60509082)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | アクチン / ATPase / Pi放出 |
研究開始時の研究の概要 |
アクチンは単量体とそれが重合した線維の2状態をとり、その転移が仮足のような細胞運動を駆動する。アクチンは線維に取り込まれると結合したATPを加水分解し、やがてランダムにリン酸を放出してADP結合型になり線維端から脱落する。加水分解からリン酸が放出されるまでの時間がアクチン分子が線維に留まる時間を支配し、重合・脱重合サイクルの速度を決める。しかし、リン酸の保持から放出可能な状態へ転移する過程はよく分かっていない。この転移を構造面から検討するため、back doorモデルの実験的検証、リン酸放出過程の時分割X線結晶構造解析、操舵分子動力学を用いたシミュレーションなどで検討する。
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研究実績の概要 |
昨年度は、高分解能繊維型コンフォメーションアクチンの結晶構造とそれに基づく量子化学計算をもとに、アクチンのATP加水分解機構を議論した論文「Structures and mechanisms of actin ATP hydrolysis」をPNAS発表した。また、Pi放出穴の蓋(バックドア)に相当するArg177が相互作用するHis161に注目し、その側鎖のフリッピングを制御するPro-rich-loopのアクチン変異体を調製して生化学実験・結晶構造解析を行い、論文「Mutagenic analysis of actin reveals the mechanism of His161 flipping that triggers ATP hydrolysis」を発表した。現在進行中の研究の進捗状況は以下の通り。1.アクチンの加水分解とPi放出の両方に影響を与えるであろうヌクレオチド結合カチオンがアクチン構造に与える影響を、SPring-8にて結晶構造解析を行って検討した。まだ、明瞭な結論はいられていない。2.既存の結晶構造をもとにPro-rich loopの形状を検討し、PL-F型とPL-G型があることを発見した。サイトカラシン-アクチンでは分子全体はG型であるにも関わらず、Pro-rich-loopはPL-F型であることを見つけた(全体構造と必ずしも対応しない)。MDシミュレーションを用いて、相補的ストランドの182-194のヘリックスが結合していないB端では、分子全体がF型でも、PL-G型になることを見出した。さらなる検討が必要である。また、アクチン発現系の改良のため、RosenらのNMRの論文にある、N末にHisタグとThymosin-beta4を付けてTEVで切るコンストラクトを調製し、可溶性発現アクチンが増加することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題Ⅰと課題Ⅱに関して:アクチン発現量の改善などのために、バキュロウイルスを用いたアクチン発現系(改良型)の構築を試み、従来型の発現系と比べてより多くの可溶性発現アクチンを確認した。その際、RosenらのNMRの論文にある、N末にHisタグとThymosin-beta4を付けてTEVで切るコンストラクトを用いた。生化学・発現実験の拠点としている名大の成田研究室があるG館の耐震工事のため、昨年の年末から一時的に研究室を引っ越している。そのため、発現実験を行うことができず、計画が少し遅れている。 課題Ⅲに関して:フラグミン-アクチン結晶ではアクチンの全体構造はF型であり、ヌクレオチドはADP/Piであるが、Latrunculinをソーキングすることにより全体構造がG型に変わることを見出している。GアクチンではPiを保持できないので、その過程を結晶構造解析によって観察すればPi放出過程を検討できると思われる。その前段階として、F型アクチンでPiと周辺残基や水分子との結合の安定性を検討するために、ヌクレオチドに結合するカチオン(Ba、Mg、Ca等)を変え構造に摂動を加え、結晶構造解析を行った。 課題Ⅳに関して:Fアクチン6djmやF2A4のFアクチン様アクチン-フラグミン複合体をもとに本格的にMDを行った。相補的ストランドのアクチンの182-194のαヘリックスがPro-rich loopに結合しているかに依存して、放出穴の開閉が決まることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
課題Ⅰと課題Ⅱに関して:6月に校舎の耐震工事が終了して、成田研究室がG館に戻る。できるだけ速やかに発現実験を再開する。本年度は、発現アクチンの精製方法を確立し、各種解析のための実験系の構築とアクチン変異体の調製に着手する予定である。我々が提案しているN111の変異体を用いた類似の変異体実験がRunserのグループによるプレプリントとして最近発表されたため、穴の開閉ではなく、開閉の制御に主眼を転換してその解明のために必要な変異体を構築する。 課題Ⅲに関して:昨年度に行った、ヌクレオチドに結合するカチオン(Ba、Mg、Ca等)による摂動を加えたアクチン構造の解析を引き続き行い、構造を得る。また、Latrunculinのソーキング実験の準備を行う。 課題Ⅳに関して:昨年度、Fアクチン6djmやF2A4のFアクチン様アクチン-フラグミン複合体をもとに本格的にMDを行った。さらに、このMDを長時間化して、穴の開閉とC末端を繋ぐ水素結合ネットワークの解明に努める。また、放出穴の開閉と相関するPro-rich loopの構造分類など、これまでに得られた結果を早急に発表する。
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