研究課題/領域番号 |
22K06179
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 祥子 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (90624966)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ヌクレオソーム / クライオ電子顕微鏡 / ヘテロクロマチン / エピジェネティクス |
研究開始時の研究の概要 |
真核生物のゲノムDNAは、H2A、H2B、H3、H4からなるヒストン八量体にDNAが巻き付いたヌクレオソームを基本単位としてクロマチンを形成し、高次に折りたたまれて細胞核に収納されている。遺伝子を多く含み転写活性化したユークロマチン領域に対し、構成的ヘテロクロマチン領域は、繰り返し配列や転写が抑制された領域を多く含み、ゲノムの安定性に寄与している。本研究は、構成的ヘテロクロマチンのエピジェネティックマークの書き込み酵素を含むクロマチンを試験管内で再構成し、立体構造を解析することにより、ヘテロクロマチン維持の機構を明らかにしようとするものである。
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研究実績の概要 |
真核生物のゲノムDNAは、ヒストンH2A、H2B、H3、H4からなるヒストン八量体にDNAが巻きついたヌクレオソームを基本単位としたクロマチンを形成し、細胞核内に収納されている。遺伝子を多く含み転写活性化したユークロマチンに対し、繰り返し配列を多く含む構成的ヘテロクロマチンは、転写やDNA組換えが抑制されゲノムの安定化に寄与していると考えられている。本研究は、構成的ヘテロクロマチンのエピジェネティックマークの書き込み酵素を含むクロマチンを試験管内で再構成し、クライオ電子顕微鏡を用いて立体構造を解析することにより、ヘテロクロマチンの形成と維持の機構を明らかにすることを目的としている。 2023年度は、構成的ヘテロクロマチン領域のヒストンH3の9番目のリシン残基にメチル基を導入するヒストンメチル基転移酵素がクロマチン上でヌクレオソームをメチル化する機構を解析するため、ヒストンメチル基転移酵素、および活性中心を含むドメインであるSETドメインを精製した。クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析による高分解能構造の取得に適した観察用試料を調製するため、精製したメチル基転移酵素と、試験管内で再構成したヌクレオソームを用いて複合体を形成した。複合体は、架橋・精製を行ない、クライオ電子顕微鏡グリッドを作成した。これらの試料を撮影し、粒子の状態を観察した。良好な粒子が確認された試料からデータセットを取得して解析を行ない、ヌクレオソームの三次元構造を再構築した。今後は、異なる架橋状態の画分から得られた試料の解析を進めるとともに、試料調製時の架橋条件の最適化を行うことにより、複合体構造を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構成的ヘテロクロマチン領域のヒストンH3の9番目のリシン残基(H3K9)にメチル基を導入するヒストンメチル基転移酵素および活性中心を含むSETドメインの精製を行ない、これらのタンパク質はメチル化活性を有することを確認した。試験管内再構成ヌクレオソーム、SETドメインの活性中心に強く結合することが知られている変異体であるH3K9Mを含むヌクレオソーム、および、クロマトソームに対して、精製したメチル基転移酵素を加え、複合体形成の条件を検討した。精製したメチル基転移酵素とヌクレオソームを含む複合体の形成条件を検討し、複合体を形成させた。架橋剤存在下でスクロース密度勾配法を用いて複合体の架橋および精製を行ない、架橋状態の異なる複数の画分からクライオ電子顕微鏡観察用試料を作成した。試料濃度およびグリッドを検討した結果、粒子の状態が良好な観察用試料が得られたため、データセットを取得して解析を行った。その結果、ヌクレオソームの三次元構造が再構築された。メチル基転移酵素との複合体構造の決定には至らなかったが、異なる架橋状態の試料から良好な観察用試料が複数得られており、研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に引き続き、クライオ電子顕微鏡によるヒストンメチル基転移酵素とヌクレオソームを含む複合体を試験管内で再構成し、単粒子解析による立体構造解析を行なう。2023年度に得られた知見から、特に、複合体精製時の架橋条件の検討を行うことにより、複合体の安定性を高め、観察用の凍結試料においてヌクレオソーム単体に対する複合体の存在比率を改善することにより、複合体の構造解析に適した試料を調製できることが期待される。また、スクロース密度勾配法を用いた架橋法では、架橋状態に依存して試料を分画することができる。架橋状態の異なる試料から凍結試料を作成し、クライオ電子顕微鏡を用いて解析に適した試料のスクリーニングを行う。良好な凍結試料が得られ次第、データセットを取得し、クライオ電子顕微鏡構造解析を行う。
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