研究課題/領域番号 |
22K06181
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
黒谷 賢一 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 特任准教授 (10402778)
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研究分担者 |
川勝 弥一 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 研究員 (40899605)
中村 保一 国立遺伝学研究所, 情報研究系, 教授 (60370920)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ベンサミアナゲノム / ベイジアンネットワーク / NbXCP1 / 接木 / GH9B3 / ネットワーク解析 |
研究開始時の研究の概要 |
接木は二つ以上の植物を一つに接ぐことで耐病性や、収量など各々が持つ特性を併せ持った植物として栽培する農業技術として古くから利用されているが、通常近縁な植物種間でしか接木できないなど、その成立の原理については不明な点が多い。そこで、まず遠縁の植物種とも接木が出来るベンサミアナタバコについてゲノムリファレンスの不備を解消し、遺伝子データベースを構築する。次に接木成立の鍵となることが示されているGH9B3遺伝子の生理的意義について探求するため、接木実施時のGH9B3遺伝子の発現を調節する因子、およびGH9B3遺伝子の下流で機能する因子を同定すことにより、植物の接木の分子メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
昨年度実施し、解読した結果を公開したベンサミアナタバコゲノム配列情報を用い、ベンサミアナタバコの遺伝子発現プロフィールデータベースを構築した。RNA-seqによってベンサミアナの植物体の、実生から開花期までの各種生育ステージにおいてトランスクリプトームを取得した。また傷処理もしくは接木した茎のトランスクリプトームを部位ごとに取得した。これまでに取得していた接木植物の時系列トランスクリプトームデータに加え、これらのトランスクリプトームデータを解読したゲノム配列をリファレンスとしてマッピングし、得られた結果をデータベース化してウェブサイトにて公開した。 接木時系列トランスクリプトームデータからベンサミアナタバコの全遺伝子レベルのベイジアンネットワーク解析を実施した。これにより、遺伝子間の制御、被制御の関係性を持った発現ネットワークを構築した。 植物の接木の成立には接合部の細胞の癒合の後、穂木と台木の通道組織が再接続されることが重要であると考えられる。今回、植物の通道組織の形成に関わるXYLEM CYCTEIN PROTEASE 1 (NbXCP1)遺伝子の発現が接木接合部位で上昇することを接木時系列トランスクリプトーム解析から見出した。上記ベイジアンネットワークからNbXCP1の発現制御ネットワークの上位にこれまでに道管の形成のマスターレギュレーターであると考えられてきたVND7が存在することを明らかにした。またVND7の下流にはNbXCP1以外にも多数の道管形成遺伝子を含む遺伝子クラスターと、これまで見出されたことのなかった遺伝子クラスターが存在することを示した。これら成果について、プレプリントリポジトリと投稿論文によって公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画のとおり、生育ステージ、器官、接木時系列等の遺伝子発現プロファイルデータベース、及びブラウザを構築し、公開できた。 遺伝子発現ネットワーク解析については、上記発現プロファイルデータベース構築に用いたベンサミアナタバコの接木部位時系列トランスクリプトーム、および発達段階、組織部位ごとのトランスクリプトームの大規模データセットを用い、ベイジアンネットワーク解析の手法を植物において適用することに成功した。まずゲノムにコードされた全遺伝子およそ5万遺伝子の発現ネットワークを得ることができた。そのうえで、接木の成立に重要な遺伝子に注目した1000遺伝子規模の発現ネットワークを互いの因果を含めて得ることができた。得られた遺伝子ネットワークによって、これまでに提唱されていた、道管形成に関わる遺伝子の制御関係を検証できただけでなく、未知の遺伝子クラスターの存在も示すことができた。 道管形成遺伝子の過剰発現、発現誘導、破壊系統は作出済みであり、接木表現型に対する影響を調査中である。
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今後の研究の推進方策 |
道管形成遺伝子の発現調節による接木表現型への影響を引き続き実施し、論文化を目指す。 構築した新しいゲノム情報と、遺伝子発現プロファイル情報をもとに遺伝子発現ネットワークを構築する。これまでに発表した以外の接木遺伝子群についても発現ネットワークを解析し、接木の成立、植物の障害応答、傷修復についての知見を深める。異なる植物間での遺伝子ネットワークの共通性、差異を検出し、接木応答性等の理解を深める。ネットワーク解析から明らかとなった接木関連遺伝子群の過剰発現、異所発現、遺伝子破壊によって接木やその他の植物形質にどのような影響が及ぶか検証する。
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