研究課題/領域番号 |
22K06188
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 (2023) 埼玉大学 (2022) |
研究代表者 |
野村 勇太 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (90745283)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | プロテオゲノミクス / ダークプロテオーム / オーバーラップ遺伝子 / 翻訳制御 |
研究開始時の研究の概要 |
データ駆動型のプロテオゲノミクス解析法をさらに最適化して利用することで、ヒトゲノム上で未報告のCDS領域にコードされた未知のタンパク質群 (ダークプロテオーム) をより網羅的に明らかとし、ヒトゲノムのアノテーション精度を向上させる。さらに、既知遺伝子とは別の読み枠で重なって配置された新しい遺伝子群の探索とそれらを中心とした未開拓な遺伝子発現の制御機構解明を通して、ヒトを含む真核生物にて提唱されてきた「mRNAのモノシストロニック性」の定説に対して再考を促す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒト由来のトランスクリプトームデータおよびプロテオームデータの両方を用いたデータ駆動型のプロテオゲノミクス手法により、ヒトゲノムにコードされた新しいタンパク質群 (ダークプロテオーム) を同定することで、生命科学研究において最も重要な情報基盤であるヒトゲノムのアノテーション精度の向上を推し進めることである。本目的達成のため、まず昨年度 (初年度) は、ヒト細胞株由来のmRNA-Seq解析によって取得されたトランスクリプトームデータを新たにアセンブリ・再解析し、ダークプロテオームをコードすると予測されるORF群をより網羅的に収集したORFeomeデータベースと、これをin silico翻訳したアミノ酸配列データベースの構築を完了させていた。さらに、この最新の配列データベースを参照したヒト細胞株由来プロテオームデータの予備的な再解析では、ヒト由来のダークプロテオームを多数見出すことに成功していた。今年度は、当初の研究実施計画通り、さらなるダークプロテオームの探索に加え、試験管内合成 (無細胞合成) したペプチド標品による照合作業・確定実験によって、マイニングデータの網羅性と信頼性を向上させることに成功した。また、バリデーションを終えた多数のダークプロテオームにおいて、コード領域の存在位置や機能性に共通点が見られ、さらに、共通した誕生機序と進化的特徴も有することが判明した。これら最新の解析結果を学術論文に纏め、国際誌への論文投稿を完了させた。現在最終的な出版に向け査読を受けているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度 (初年度) に引き続き、今年度も、データ駆動型のプロテオゲノミクスによるダークプロテオームの探索に取り組んだ。加えて、今年度は、当初の研究実施計画に従い、試験管内合成 (無細胞合成) したペプチド標品による照合作業・確定実験を実施した。これにより、マイニングデータの網羅性と信頼性を向上させることに成功した。さらに、バリデーションを終えたダークプロテオームの配列的特徴やコード領域の特徴、それらの共通点を探ることで、ダークプロテオームの役割や存在意義への理解が進み、また、さらなるダークプロテオームの発見の足がかりになると考え、これら多面的な観点でのデータサイエンスに取り組んだ。その結果、コード領域の存在位置の共通性やシスエレメントとしての機能的共通性が見られ、また、共通した誕生機序と進化的特徴も有することが判明した。これら最新の解析結果を学術論文に纏め、国際誌への論文投稿を完了させ、現在最終的な出版に向け査読を受けているところであり、当初の研究実施計画を鑑みて、順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で実施した配列データベースの改良により、データ駆動型プロテオゲノミクスによるダークプロテオームの探索カバレッジが飛躍的に向上した。一方で、ヒト由来の公開プロテオームデータではデータ欠損もよく見られ、データごとにその網羅性にはバラツキが見られたため、引き続き、より多くの公開・非公開のプロテオームデータを精査し、合成ペプチド標品によるダークプロテオームの照合・確定実験が必要である。本研究では、この照合・確定実験の効率化を実現するペプチド標品の試験管内合成法を新たにデザインし最適化できたことから、本手法を使い進める。また、当初の研究実施計画にも示したダークプロテオームとこれらをコードする遺伝子群の生物学的意義の解明については、今回明らかとしたダークプロテオーム遺伝子の誕生機序や進化的特徴を考慮すると、下流部にある既知遺伝子の翻訳制御で果たす機能的役割が大きいと推察される。そのため、バリデーションを完了したダークプロテオームをコードする遺伝子群から特徴的なモデル遺伝子を選出、もしくは、それらの特徴を有する短鎖長の仮想遺伝子を解析対象とし、翻訳開始点の制御機構を詳細に解析し、最終的に国際誌で論文報告する計画である。
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