研究課題/領域番号 |
22K06189
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43060:システムゲノム科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中井 謙太 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60217643)
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研究分担者 |
VANDENBON ALEXIS 京都大学, 医生物学研究所, 准教授 (60570140)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ハウスキーピング制御領域 / DNAメチル化 / 大規模言語モデル / 細胞種特異的発現制御 / クロマチンループ / 自然言語モデル / ゲノム情報解析 / モチーフ文法 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、細胞種特異的遺伝子発現に果たすエンハンサー配列の役割が注目されている。しかし、 エンハンサー配列は進化的保存が控えめで、その基本構造の理解はエンハンサー文法問題と呼ばれる大きな謎になっている。本研究では、以下の3つの側面から、この問題の解決を目指す。 1) 細胞種特異的発現遺伝子エンハンサーにみられる頻出モチーフパターンの抽出 2) 類縁細胞種間比較解析によるクロマチンループ構造の階層性の発見 3) 言語モデルによるエンハンサー文法理解
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研究実績の概要 |
エンハンサー文法の探求をいくつかのアプローチで行っている。 現在、一番力を入れているのは、ABC予測法による、いろいろな細胞や組織におけるエンハンサーと標的プロモーターの相互作用予測結果の解析である。これらのデータにおける予測活性エンハンサーの位置をヒトゲノム上にマップすることで、ゲノム上に位置付けられたエンハンサーがどのような細胞で活性化されているかを調べたところ、ほとんど全ての細胞で活性化されているエンハンサーが1000個程度あることを発見し、こちらの方が新規の知見と結びつく可能性が高いと判断して、当初の計画とは少しずれるが、こちらを優先して解析することにした。その結果、これらのほとんどはエンハンサー部位というよりは、むしろアノテーション的にはプロモーター部位と対応することがわかった。ABC予測はゲノム上の活性化領域をヒストンマークなどの情報から選んでいるため、プロモーター領域が含まれうること自体は新しいとは言えないが、ほぼすべての細胞で活性化されている領域がプロモーター領域と対応していることは興味深い知見と言える。プロモーター領域がエンハンサー活性を持ち得ることも従来から提唱されていたが、我々の結果はエンハンサーとプロモーターの類縁性と相違性を明らかにする足掛かりになると思われ、現在追加データを収集し、論文投稿を準備している。 そのほか、近年注目度の高い大規模言語モデル(LLM)のゲノム解析への応用を中国山東大学のWei博士らのグループと行っており、いくつかの論文発表を行った。また、クロマチンループの大規模データの解析にも大学院生が取り組んでくれたが、はかばかしい結果がでないままに卒業になってしまっている。また、パイロット的にABC予測結果を視覚的に確認しやすいデータベースを試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ABC予測に基づく研究に関しては、毎週オンラインミーティングで進捗状況を確認し、結果について議論を続けている。論文も投稿準備中であり、いくつかの国際学会などでも発表済みや発表予定である。また本研究に端を発した共同研究をトルコのグループと行う話が持ち上がっている。 中国グループとの共同研究も順調に進んでおり、現在も研究が進行中である。 さらに、研究室の大学院生が深層学習モデルを用いたエンハンサー予測に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、主にハウスキーピング転写制御領域について集中して研究を行ったが、とりあえず研究がまとまりつつあるので、2023年度は、当初の計画に戻って、細胞種特異的エンハンサーの特徴づけに取り組む予定である。そのとき、ゲノムDNAの特定の領域(ブロック)が、細胞種特異的に脱メチル化されるという網羅的なデータが最近発表されており、この領域が細胞種特異的エンハンサーと重なっている可能性が高いので、このデータも取り入れて研究を進めていきたい。 また、大規模言語モデルに基づく研究でも、DNA脱メチル化ブロックの予測に挑戦し、ある程度それがうまくいけば、脱メチル化を細胞特異的に起こす配列的特徴をできるだけグローバルに探索したいと考えている。 進展の著しい分野なので、世界の研究の進展に目を配りながら、臨機応変に研究を進めていきたい。
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