研究課題/領域番号 |
22K06199
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
船越 祐司 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30415286)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | インフラマソーム / 低分子量G蛋白質 / 炎症応答 / 炎症 |
研究開始時の研究の概要 |
インフラマソームは、病原体や内因性刺激物質を感知しサイトカイン放出を誘導する、炎症応答の中心を成す複合体である。インフラマソームはプリオン様の凝集体を形成し、細胞外へと放出され、マクロファージなどにより貪食されることで連鎖的に炎症応答を誘導し炎症を増幅させる。研究代表者らは、インフラマソームの細胞間伝播において低分子量G蛋白質Arf6とRab11が主要な役割を果たすことを示す予備的知見を得ている。本研究では、インフラマソームの細胞外への放出、およびマクロファージなどによる取り込みにおけるArf6、Rab11の機能を解析することにより、インフラマソームの細胞間伝播メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
インフラマソームは、病原体や内因性の刺激物質を感知し、サイトカイン放出を誘導することによって炎症応答を惹起・増幅させる炎症応答の中心を成す複合体である。さらに、インフラマソームはプリオン様の凝集体を形成し、細胞外へと放出され、マクロファージなどにより貪食されることで連鎖的に炎症応答を誘導し炎症を増幅させる。このプリオン様のインフラマソームの細胞間伝播は過剰な炎症応答の一因であり、メカニズムの解明は重要な課題である。本研究では、特に細胞内輸送に関わる低分子量G蛋白質を中心に、この課題に取り組む。本年度は以下の研究成果を得た。 1)我々は、マクロファージ中の低分子量G蛋白質Arf6が、細胞外ASC speck(インフラマソーム複合体中のアダプター蛋白質ASCの凝集体)の貪食を促進し、貪食したマクロファージ中で新たなインフラマソーム形成を誘導することにより、アレルギー性の気管支喘息を増悪させることを明らかにしている。本年度は、Arf6上流の活性化因子(GEF)の同定を試みた。その結果、Cytoheisnファミリーの阻害剤Secin H3処理により、マクロファージによる細胞外ASC speck依存のサイトカイン放出が抑制された。この結果より、ASC speck刺激により、CytohesinファミリーがArf6を活性化し、ASC speckのファゴサイトーシスを誘導することが明らかとなった。 2)インフラマソーム形成後、ASC speckが放出される過程に関わる因子を同定するために、ASCの結合因子、shRNAライブラリースクリーニングを行い、候補因子として低分子量G蛋白質Rab11を同定した。Rab11は膜蛋白質の細胞膜へのリサイクリング過程に関わっており、リサイクリングエンドソームを介した輸送が、何らかの形でASC speckの放出に関わっていることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、インフラマソームのプリオン用細胞間伝搬メカニズムの解明を目指しており、炎症応答時にASC speckがマクロファージから放出され、周辺のマクロファージに貪食されて新たなインフラマソーム形成が誘導され、炎症が増幅するメカニズムの解明を目的とする。我々は以前に、低分子量G蛋白質Arf6がASC speckのファゴサイトーシスを促進し、炎症反応を増強・増悪させることを報告しているが、本年度は、マクロファージが細胞外ASC speckを貪食する際にArf6を活性化するGEFを同定しており、ASC speck認識から貪食を誘導するシグナル経路の一端を明らかにしている。一方で、ASC speckを放出する際の鍵となる因子としてRab11を同定しており、Rab11を介したリサイクリング機構がASC speckの放出に関与することを見出している。このように、ASC speckの放出と貪食における中心因子を同定していることから、これら因子の解析を進めることにより、残りの研究期間の2年間でインフラマソームの細胞間伝搬機構を明らかにすることは、十分に達成可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を基に、残りの研究期間で以下の解析を実施する。 1)Arf6を介したASC speck貪食シグナル伝達経路の解明:Arf6上流のGEFとしてCytohesinファミリーを同定したが、さらに、ASC speckを認識しGEFを活性化するレセプター、また、Arf6の下流でファゴサイトーシスを誘導するエフェクター分子を同定する。さらに、貪食されたASC speckが、どのようにしてリソソームによる分解を逃れ、新たなインフラマソームを形成するのか、そのメカニズムを明らかにする。 2)ASC speckの放出におけるRab11の機能解析:インフラマソームは直径約1~2μmの巨大な複合体であることから、通常の分泌やエキソサイトーシスではなく、細胞膜の溶解に伴って細胞外に放出されると想定されている。そこで以下の解析によりASC speck放出機構を明らかにする。 ①Gadermin D (GSMD)の細胞膜への輸送:GSMDはインフラマソームの活性化後、切断され、細胞膜へと輸送されオリゴマー化しGSDM孔を形成する。この孔を介してIL-1βを放出するとともに、細胞膜の溶解を伴う細胞死を誘導し細胞内因子の一部が細胞外に放出される。そこで、GSMDの細胞内輸送へのRab11の関与を検討する。②炎症惹起時にRab11エンドソーム上に集積する因子の探索、およびshRNAライブラリースクリーニングによりASC speck 放出に必要な因子を探索する。これにより、GSDMDの他にASC speck放出を促すRab11のエフェクター、GSDMDを認識しRab11エンドソームにリクルートするアダプター因子の同定を試みる。 3)個体における解析:Arf6やRab11、その他同定した因子のマクロファージ特異的ノックアウトマウスや阻害剤を用いて、炎症応答・増悪への関与を検討する。
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