研究課題/領域番号 |
22K06200
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中村 駿 東京医科歯科大学, 高等研究院, プロジェクト助教 (80882779)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | タイトジャンクション / クローディン / 構造生物学 |
研究開始時の研究の概要 |
タイトジャンクション(TJ)は細胞同士を接着して細胞間隙バリアを形成するが、薬物治療においては薬の標的部位への到達を妨げる障壁となる。特に、創薬ターゲットとして重要な中枢神経疾患では血液脳関門のTJの通過は大きな課題である。TJのバリア機能はCldnが担い、27種のサブタイプが器官特異的に発現する。ウェルシュ菌産生毒素のC末領域は、Cldnに結合してTJを緩めることができるが、Cldnサブタイプによって感受性が異なり、血液脳関門に発現するCldn5には結合できない。本研究では、TJ形成の構造基盤を解明し、血液脳関門の透過制御を可能とするC-CPE改変体の創製を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、タイトジャンクション構造基盤を解明し、その透過制御を可能とするモジュレータの創製を目指している。本年度は、構造未解明であるクローディンサブタイプの構造解析に向けた実験及びクローディンサブタイプ特異的な結合親和性を高めたC-CPEの改変を進めた。X線結晶構造解析を目指し結晶性改善のために設計したN末端領域を最適化したコンストラクトについて、大量発現・精製・結晶化初期スクリーニングを行い、これまでと異なる条件を含む複数の結晶化条件にて微結晶を得ることができた。高分解能データの取得を目指し、結晶化条件の最適化を進めている。また、このクローディンサブタイプに特異的な抗体を共同研究先が開発したため、結晶性の改善を期待し、クローディンとFabフラグメントの複合体を精製した。クローディンとFabの複合体についても、結晶化初期スクリーニングを行い、クローディン単体とは異なる複数条件にて微結晶が得られた。クローディンとFabの複合体については、クライオ電子顕微鏡単粒子解析も進め、初期段階において7Åの電子顕微鏡像を得ることができた。特定のクローディンサブタイプへの結合を目指したC-CPEの改変では、研究代表者がこれまでに構造決定したクローディン3とC-CPEの複合体の構造情報を基にした変異体解析によって、親和性に大きく影響するクローディンの1つの箇所において、この箇所の側鎖の大きさに依存した親和性を示すC-CPE変異の同定を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造未解明のクローディンサブタイプについて、構造解析に向けた実験を進めた。前年度までにX線結晶構造解析を目指し、結晶性を改善するためにN末端領域を可能な限り短くしたコンストラクトを設計し、小スケールにて発現良好であることを確認した。このコンストラクトについて、大量発現を行い、コンストラクト変更前と同様のプロトコルにてクローディンを精製することができた。精製タンパク質は、ゲル濾過法にて評価し、純度及び単分散性が良好であることを確認した。スパースマトリックス法を用いた結晶化初期スクリーニングを行い、これまでと異なる条件を含む複数の結晶化条件にて微結晶を得た。これらの条件を基に結晶化条件の最適化を進めている。また、このクローディンサブタイプに対する抗体を共同研究先が開発した。クローディンを抗体と複合体形成させることは、結晶性の改善効果が期待される。Fabフラグメントを調製し、クローディンと結合させ、ゲル濾過によって複合体として精製した。Fabとクローディンの複合体について結晶化初期スクリーニングを行い、クローディン単体とは異なる複数条件にて微結晶を得た。これらについても条件の最適化を進めている。さらにクローディンとFabの複合体について、クライオ電子顕微鏡単粒子解析法による構造解析も進めている。クローディン単体では分子サイズが小さいためクライオ電子顕微鏡による構造解析は非常に困難であったが、Fabとの複合体化によって初期段階において7Å程度の電顕像を得ることができた。また、タイトジャンクションの透過制御のために特定のクローディンサブタイプに結合するC-CPE改変を目指しており、C-CPEの変異体解析を進めた。蛍光ゲル濾過法を用いた結合実験によって、親和性を決定する1つの箇所に着目し、側鎖の大きさに依存した親和性を示す変異体を同定しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
クローディンサブタイプの新たな立体構造を明らかにすることは、サブタイプ間で異なるバリア形成機構やC-CPE親和性に関する構造情報が得られるため重要である。現在、X線結晶構造解析およびクライオ電子顕微鏡単粒子解析のいずれの手法についても構造決定を目指して進めている。得られる構造情報や分解能が異なると予想されるため、いずれの手法も並行して進める予定である。現在結晶が得られているクローディンサブタイプの構造を決定するためには、高分解能の回折データが必要である。pH・塩・沈殿剤等の結晶化条件やクライオプロテクタント条件の最適化を行い、X線回折実験によってデータの分解能を評価する。SPring-8のビームラインにて研究課題を取得しており、定期的にX線回折実験を行う予定である。単粒子解析についても分解能の改善が必要である。現状のグリッド作製条件では、粒子の分布や配向に改善の余地があるため、界面活性剤の種類や濃度を最適化によって精製条件の検討を行う。クライオ電子顕微鏡は所属研究室が所有しているものを用いて実験を進めることができる。C-CPEの改変については、クローディン3など既存の構造情報を基に引き続き進める。これまで得た情報を基に、変異を組合せることによる相乗効果を評価する。
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