研究課題/領域番号 |
22K06214
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
内田 清薫 (関根清薫) 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (00794398)
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研究分担者 |
多羅間 充輔 九州大学, 理学研究院, 助教 (90756834)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | アクチン / 超解像イメージング / 組織形成 / ショウジョウバエ / 粗視化分子動力学モデル |
研究開始時の研究の概要 |
組織形成にともない個々の細胞形態は激しく変化するが、組織の統一性を維持するため細胞のサイズや動態には均一性も求められる。ショウジョウバエ気管上皮細胞では、アクチン細胞骨格による等間隔のストライプパターンが、均一な気管の内径に不可欠である。申請者らはこのパターンがアクチン微小集合体の異方的な融合により形成されることを見出した。これは、アクチンパターンが自己組織化され、それが組織の均一性獲得の基盤となることを強く示唆する。本研究ではこの仮説を実証するため、実験・理論双方のアプローチから、アクチン微小集合体によるパターン形成の機構、均一なアクチンパターンによる組織形態・動態の制御機構を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究はショウジョウバエ気管上皮細胞および雄外生殖器周辺上皮細胞をモデルシステムとし、下記5点について、明らかにすることを目的としていた。① 組織特異的なアクチン結合分子、② 生体内細胞に生じるアクチン微小集合体とそれを起点としたパターン形成のプロセス、③ 数理モデルによるアクチンパターンの形成原理、④ アクチン微小集合体を核とする近傍分子の制御機構、⑤ アクチンパターンを組織全体、又は一部で乱した際の組織形態・集団移動に与える影響。 2022年度は、上記の目的のうち①、②、③、④をショウジョウバエ気管上皮細胞について明らかにした。その結果、気管上皮細胞の頂端膜の直下では、アクチンの微小集合体がZasp52およびα-Actininといったクロスリンカーにより自己組織化されており、さらにミオシンが微小集合体同士の融合を制御していることを明らかにした。また、フォルミンタンパク質であるDAAMが管状組織の軸情報を感知することで、微小集合体の動きに異方性を与え、融合を周方向へ偏らせていることが明らかとなった。これらの結果は研究分担者の構築した粗視化分子動力学モデルにおいても、同様の結果がシミュレーションされた。以上の結果および考察に議論を重ね、共同研究者とともに論文にまとめ、投稿した。 また、雄外生殖器周辺上皮細胞においては、①、 ②、④を進めている。特に、②について、リング状のアクチン微小集合体にはMyo1Dに加えて、膜脂質マーカーが局在することを明らかにし、アクチンーMyo1D-膜脂質の関係について解析を進めている。また、分子メカニズムの保存性を検証し、簡便な細胞移動実験を行うため、ほ乳類細胞の系も立ち上げて、実験を進めている。さらに、組織内における超細胞微細構造を明らかにするため、電子顕微鏡を用いた観察を行うための共同研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画の半分程度を成す、気管上皮細胞におけるアクチン微小集合体の解析とパターニングの自己組織化のメカニズムの解明についてほぼ実験・解析を終え、共同研究者と打ち合わせを行いつつ論文の執筆、および投稿まで達成した。 また、雄外生殖器周辺上皮細胞においても、実験と解析を始めている。予定外の共局在分子などを見つけたため、当初の研究計画や仮説を見直しつつ、新たな共同研究を開始している。また、分子メカニズムの保存性を検証し、簡便な細胞移動実験を行うため、ほ乳類細胞の系も立ち上げて、実験を進めている。 以上、初年度ではあるが研究計画の半分程度を進め、新たな計画を立案・実施していることから、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画通り、ショウジョウバエ気管上皮細胞および雄外生殖器周辺上皮細胞をモデルシステムとして、アクチン微小集合体を起点とした組織スケールの細胞骨格パターニングの分子メカニズムを明らかにすることを目標に実験、解析、理論モデルの構築を行っていく予定である。 気管上皮細胞における研究に関しては、現在論文投稿中のため、その査読の結果を受けて追加で実験や解析を行い、今年度中には論文として発表したい。また、その後も、Expansion Microscopyなどを用いてアクチン微小集合体の局在分子がどのように構成されているかを明らかにしていきたい。 雄外生殖器周辺上皮細胞における研究に関しては、引き続き組織内の観察を行うとともに、哺乳類培養細胞での実験結果を組み合わせて、保存されたアクチンーMyo1D集合体の分子メカニズムの模索を続ける。それらの結果を合わせて、共同研究者と相談をして、新たな粗視化分子動力学モデルの構築を行っていきたいと考えている。
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