研究課題/領域番号 |
22K06220
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
水野 克俊 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (00777774)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | インポーチン / 神経軸索 / 細胞質ダイニン / ダイニン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、インポーチン分子が神経細胞において核移行とは異なる機能、特に軸索輸送と細胞遊走について、分子モーターである細胞質ダイニン・キネシンとどのように関連しているかを解析する。手法としては、生化学的実験、顕微鏡によるイメージング実験、子宮内電気穿孔によるin vivoでの実験を組み合わせて実験を実施する。インポーチン分子におけるさまざまな変異が神経機能に及ぼす影響を検証することで、精神・神経疾患の病因の新たな分子機序の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
神経細胞における細胞体から神経終末に至るまでの軸索輸送は記憶・学習・情動など高次脳機能において決定的な役割を果たす。インポーチンα (KPNA) やインポーチンβ(IPOβ)は代表的な古典的核移行因子であり、細胞質から核内への基質の輸送により様々なシグナルを核内へと伝える機能を持つ。近年、統合失調症や自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(AD/HD)などの精神・発達障害に核移行因子が関与することが報告されている。また、ストレス顆粒や凝集体の解消にインポーチンがシャペロンとして機能するなど、インポーチンが核移行以外の機能を有する多機能因子であることが明らかとなりつつある。本研究で代表者らは神経軸索中のKPNAの機能に着目した。特に、KPNAファミリーの中でも脳内で顕著に高発現がみられるKPNA1と細胞質ダイニン(以下ダイニンと呼称)との関係に着目し、核移行とは異なるインポーチンの神経軸索における機能の解析を目指し、精神・神経疾患の新たな治療方法開発を目指した。ラットの大腿神経を用いた生化学的解析の結果、神経軸索抽出物に多くの核移行関連因子が含まれていることが明らかとなった。また、KPNA1がダイニンなどの微小管結合タンパク質と複合体を形成する可能性が示唆された。また、蛍光タンパク質との融合KPNA1やKPNB1を作成し、一次培養の神経細胞においてライブイメージングを行った。その結果、インポーチン分子が軸索で活発に輸送を受け、移動することが明らかとなった。疾患と関連する変異を有するKPNA1も検討したところ、特異的な局在を示すことができたことに加え、配列の改変によって改善させることができることが明らかとなった。以上の結果は核移行とは異なる軸索におけるインポーチンの機能と、疾患の原因を考える上で非常に重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの実験で、実験の実施に必要なマウス後根神経節細胞 (DRG)の一次培養および遺伝子導入の系、ならびにライブイメージングを行うための共焦点顕微鏡およびFRAP装置の準備が完了し、すでに実験を開始している。観察の結果、KPNA1を含む多くのインポーチン分子が軸索を活発に輸送されている様子をイメージングすることができた。インポーチンαとインポーチンβ分子の同時観察、さらにダイニン中間鎖やダイナクチン構成因子などとの同時観察からも、動態や軸索での分子間相互作用についても知見が得られた。さらに、疾患と関連する変異をいれたKPNA1の解析を行った結果、異常な局在と動態を示すことが判明した。現在は、これらのデータの蓄積ならびにラットの大腿神経をモデルとした、免疫沈降/プルダウン実験とLC-MS/MSによる質量分析を含む生化学的解析を進めているところである。さらに、本研究成果の学会における発表および論文投稿を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は軸索性KPNA1の生化学的特性を明らかにするための解析を中心的に行う。それにより、軸索におけるカーゴの輸送をインポーチンがどのように担うか、分子的実体を明らかにする。手段としては、免疫沈降に加えタグによるプルダウンやショ糖密度勾配遠心法による精製などを想定する。さらに、LC-MS/MSにより注目する複合体の構成因子を網羅的に解析する。さらに、インポーチンへの変異が精神疾患にどのような影響を及ぼすのか、軸索の輸送にとくに着目して疾患の原因についての研究に取り組んでいく。疾患の病因となるのが、KPNA1が有する古典的な核内外への物質輸送に起因するのか、ダイニンとの相互作用など核輸送とは異なる機能が核への異常集積により影響されているのか、今後の解析により明らかにしていく必要がある。
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