研究課題/領域番号 |
22K06233
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
越智 陽城 山形大学, 医学部, 准教授 (00505787)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 腎再生 / パイオニア因子 / 再生縁ハンサー / 機能ゲノム解析 / ATAC-seq / 核内構造体 / ツメガエル / 再生 / エンハンサー / 遺伝子発現制御 / ゲノム / KLF / ゲノム機能 / エピゲノム |
研究開始時の研究の概要 |
魚類や両生類はほ乳類と比べて高い再生能を持つ。これら動物が損傷を受けた組織を再生する時、再生で使う遺伝子のエンハンサーは閉じた状態からオープン状態へと移行する必要がある。エンハンサーのクロマチンオープンニングは組織再生において極めて重要なステップであるにも関わらず、その実体は全くわかっていない。そこで本研究は閉じている再生エンハンサーのクロマチンを開けるパイオニア因子の同定と開いた状態を維持するメカニズムの解明を試みる。
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研究実績の概要 |
エンハンサーのプライミングとプライミングが維持されている状態 (Primed状態) は、細胞 の運命を決定するプロセスにおいて極めて重要なステップである。再生エンハンサーを活 性化させるには、なにより最初に閉じたクロマチンを開ける必要がある。これを担う転写因 子はパイオニア転写因子と呼ばれるが、再生においていずれの転写因子がその役割を担うの か、それら因子がどのように再生エンハンサーのヌクレオソーム上の標的DNA配列を探索 しオープニングに導きプライミングするのか、プライミングされた状態のエンハンサーに如何なる情報が加わると、標的遺伝子の転写が開始されるかなど、全く不明であり、解決すべき問題として残されている。この目的で、本研究課題は、損傷した組織を再生させるか否か、損傷後の細胞の運命決定のプロセスにおいて最初のステップであるクロマチンのオープニングを担うパイオニア転写因子の同定と、それら因子によるプライミング機構とプライムされた状態(Primed状態)から脱してPoised状態に向かうメカニズムを明らかにする。本年度は、再生特異的に核内構造体に集積するゲノム領域の同定を目的としたNuclear body-associated genomic sequences (High-salt recovered-sequence/HRS-seq)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度までに、クロマチンが閉じた状態から再生を開始させるためには、 Kruppel-like factors (KLF) ファミリーの属するKLF15とその標的遺伝子のアドレナリン受容体が鍵であること、アドレナリン受容体の作動薬を損傷後の腎組織に作用させると再生が促進されることを報告した。この研究の過程で、Sin3A Associated Protein 25 (SAP25) や H1.5 linker histone (h1-5) など、エピゲノム制御に関わる遺伝子が含まれることも発見していた。SAP25は、抑制型クロマチン構造を形成する転写因子Sin3Aと直接結合するだけでなく、ストレスシグナル依存的に KLF型の転写因子と共に核内構造体のひとつpromyelocytic leukemia protein (PML) 核内ボディに局在することが知られている。PMLボディは液-液相分離で形成された核内構造体の一つで、抗ウイルス応答、 DNAダメージ応答、アポトーシス、老化などの細胞ストレスを探知し遺伝子の発現を制御する足場として働く。プライムされた状態(Primed状態)から脱してPoised状態に向かうプロセスで、再生エンハンサーが核内構造体に集積する可能性がある。本年度は、プライムされた状態(Primed状態)から脱してPoised状態に向かうメカニズムの解明を目的として、Nuclear body-associated genomic sequences (HRS-seq)を行った。その結果、損傷ストレス・再生特異的に核内構造体に集積するゲノム領域の同定に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べたように、nuclear body–associated genomic sequences (HRS-seq)を行った。その結果、損傷ストレス・再生特異的に核内構造体に集積するゲノム領域の同定に成功した。HRS-seqでは、PMLボデイ、核小体、カハール体、核ラミナなどの核内構造体に集積するゲノム領域を同定することができるが、いずれの核構造体に集積しているのかは不明である。そこで今後はまず、それぞれの核内構造体を認識する抗体と集積するゲノム領域のHybridization chain reaction(HCR) in situ hybridizationを組み合わせた、HCR-IF/HCR DNA-FISHにより、いずれの核内構造体に損傷ストレス・再生特異的なゲノム領域が集積するのか明らかにする。また、研究者らはこれまでに再生における網羅的オープンクロマチン解析やH3K27ac ChiP-seqのデータを取得しており、これらデータの比較により核内構造体に集積するゲノム領域の特徴を情報科学的に抽出する予定である。また、集積するゲノム領域の特徴を情報科学的に抽出するために、H4K20me1やH3K27me3など、比較解析に有用となるエピゲノムデータの収集を行う。
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