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Klf型転写因子の循環器システムにおける役割

研究課題

研究課題/領域番号 22K06235
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分44020:発生生物学関連
研究機関山梨大学

研究代表者

川原 敦雄  山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10362518)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワードゲノム編集技術 / Klf型転写因子 / ゼブラフィッシュ / 循環器システム / 造血発生 / 機能欠損変異体 / 循環器系
研究開始時の研究の概要

心臓・血管発生と連動する循環器系の構築は個体発生で最初に機能する器官であり心疾患を含む循環器疾患は日本人の死因の上位を占めることから、循環器系を調節する分子の同定とその分子機能の解明は、循環器系の生理機能および循環器疾患の病態の理解に必要不可欠である。研究代表者が単離したKlf型転写因子であるklf17遺伝子を破壊したklf17遺伝子破壊ゼブラフィッシュは、心臓の肥大が認められ、さらに、klf17-klf1二重変異体では一次造血における赤血球循環の不全が観察された。これらの機能欠損変異体の表現型解析およびKlf型転写因子の分子機能解析からKlf型転写因子の循環器系における新規機能を解明する。

研究実績の概要

研究代表者は世界に先駆け新規のKlf型転写因子であるklf17遺伝子の単離に成功した実績があり、モデル生物であるゼブラフィッシュを用いKlf17の生理機能の解明に一貫して取り組んできた。Klf17はC末にZnフィンガーDNA結合ドメインを持つ転写因子であり、標的遺伝子の発現制御を介して器官形成を制御すると考えられているが、脊椎動物の形態形成における分子機能は不明な点が多い。klf17遺伝子はゼブラフィッシュの初期発生過程において造血発生の場である血島、孵化腺及び側線に発現している。研究代表者はゲノム編集技術CRISPR-Cas9法を用い作製したklf17遺伝子破壊ゼブラフィッシュ(機能欠損変異体)の表現型解析からklf17遺伝子が孵化腺および側線の形成に必須な遺伝子であることを明らかにした。その後、研究代表者はklf17遺伝子が成育過程においては心臓に発現していることを見出しており、本研究ではKlf型転写因子の造血発生および循環器システムにおける分子機能を明らかにすることが目的である。klf17変異体における造血発生を調べてみると赤血球の産生に顕著な異常は認められていない。1次造血の場である血島にはklf17遺伝子以外にklf1遺伝子といった他のKlf型転写因子の発現が報告されている。本研究では、ゲノム編集技術CRISPR-Cas9法により作製したklf1およびklf17遺伝子破壊ゼブラフィッシュの形態形成における表現型解析から造血発生および循環器系におけるKlf型転写因子の生理機能の解明を目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究代表者はゲノム編集技術CRISPR-Cas9法を用いklf1及びklf17遺伝子破壊ゼブラフィッシュを作製し、それら機能欠損型変異体の形態形成における表現型解析を行った。klf1およびklf17遺伝子は造血発生に場である血島に発現誘導される転写因子であるが、klf1単独変異体およびklf17単独変異体はともに顕著な造血発生異常を示さなかった。興味深いことに、klf1-klf17二重変異体では1次造血における赤血球の生成量が減少することが明らかになった。この時、1次造血でのミエロイド系細胞の生成には顕著な差は認められなかった。赤血球分化過程を前駆細胞の段階から可視化できるgata1:mRFP系統を基盤としてklf1-klf17二重変異体の機能解析を行った結果、発生初期の赤血球前駆体細胞の生成には差が認められないが、赤血球の分化・成熟過程での形態学的な異常が観察され、循環する赤血球の数が減少することが明らかとなった。さらに、造血発生における分化マーカー遺伝子の発現変動を調べた結果、幹細胞マーカーであるc-myb, sclの発現に顕著な差は認められなかったが、分化マーカー遺伝子であるband3, mitoferrinおよびalas2遺伝子発現が減弱している結果が得られたので、それらの実験結果を論文として発表した(Suzuki H et al. Scientific Reports, 2023)。ゼブラフィッシュの造血発生は1次造血(血島)から2次造血(腎臓)に生成の場が移動するので、上記の前駆細胞から可視化できるgata1:mRFP系統を活用し、2次造血および循環器系の構築過程におけるKlf型転写因子の分子機能を解析している。

今後の研究の推進方策

本研究の目的は、Klf1およびKlf17分子といったKlf型転写因子の造血発生および循環器系の構築過程における役割を明らかにすることである。klf1-klf17二重変異体が1次造血における赤血球の産生と分化過程に異常を示すことを見出したので、本研究の成果としてKlf1とKlf17が機能的に協調して1次造血における赤血球分化を制御していることを論文として発表した(Suzuki H. et al. Scientific Reports, 2023)。未解明の研究課題は、上記のKlf型転写因子が腎臓における2次造血や循環器系の構築にどのように寄与しているのかを明らかにすることである。造血発生(gata1:mRFP, lyz:EGFP, CD41:EGFP)や心臓発生(cmlc2: EGFP)は蛍光タンパク質の発現でモニターできるが、初期発生過程ではなく成育過程において解析を行う場合、励起光を組織へ十分に照射できない問題が生じている。このような画像解析における色素細胞の問題を解決するため、ゲノム編集技術を用い黒色素胞、黄色素胞および虹色素胞を欠損した透明ゼブラフィッシュの作出を現在進めており、本研究を遂行する過程で新しい画像解析システムを開発し個体形成の深部で起こる2次造血および循環器系の構築過程におけるklf1およびklf17遺伝子の分子機能を解析する。klf17変異体は成育過程で心肥大の形態異常が認められているので、野生型とklf17変異体の心臓において発現動態が異なる候補遺伝子の探索をRNA sequence解析で調べている。今後、心臓形成における候補遺伝子の発現や機能を調べることでKlf型転写因子による循環器系の構築過程における分子機能を明らかにしたい。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Cooperative contributions of the klf1 and klf17 genes in zebrafish primitive erythropoiesis2023

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Hiroaki、Ogawa Tomotaka、Fujita Shigeyoshi、Sone Ryota、Kawahara Atsuo
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 号: 1 ページ: 122279-122279

    • DOI

      10.1038/s41598-023-39196-1

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [備考] 『赤血球分化における転写因子 Klf17 と Klf1 の重要性』を発見

    • URL

      https://www.yamanashi.ac.jp/wp-content/uploads/2023/08/20230817pr-1.pdf

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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