研究課題/領域番号 |
22K06240
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
荻野 肇 広島大学, 両生類研究センター, 教授 (10273856)
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研究分担者 |
越智 陽城 山形大学, 医学部, 准教授 (00505787)
井川 武 広島大学, 両生類研究センター, 准教授 (00507197)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 発生 / 進化 / ゲノム重複 / エンハンサー / ツメガエル |
研究開始時の研究の概要 |
脊椎動物の進化では、ゲノム重複の度に倍加遺伝子(オオノログ)の片方が失われて1コピーに回帰したり、2コピー間で祖先遺伝子の発現パターンを分割するようになったり、片方が祖先遺伝子の発現パターンを維持しつつ、もう片方が新しい発現を獲得したりといった遺伝子進化が起きているが、それら運命選択の仕組みは殆どわかっていない。これに対して応募者は、スーパーエンハンサー(SE)を持つ遺伝子がゲノム重複後に2コピーで維持されやすいことを発見した。本研究ではツメガエルのゲノム重複(RX)と真骨魚のゲノム重複(R3)、脊椎動物祖先種のゲノム重複(R1/R2)に注目し、SEが進化運命を拘束する仕組みを解明する。
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研究実績の概要 |
昨年度に続き、ネッタイツメガエルの祖先種から分岐後にゲノム重複(RX)を経験したアフリカツメガエルと、真骨魚の祖先種でゲノム重複(R3)を経験したゼブラフィッシュの両種において、2コピーとも維持されている倍加遺伝子269種538個に注目した。それらとネッタイツメガエルの祖先型オーソログ269個との間でトランスクリプトームデータの比較解析をおこない、倍加コピー間での発現分化が収斂進化を示す遺伝子群の同定をおこなった。 これら269種は「倍加後に2コピーで維持されやすい遺伝子」と考えられるのに対して、アフリカツメガエルとゼブラフィッシュの両種において倍加コピーの片方が既に失われている遺伝子88種は「倍加後に1コピーに回帰しやすい遺伝子」と考えられる。そこでゲノム重複を経験していないネッタイツメガエルにおいて、これらに対する祖先型遺伝子群の発現パターンの比較解析をおこなったところ、269種は88種に比べ、脳で高発現する遺伝子が多いことがわかった。代表者らは先行研究により、269種は88種に比べ、スーパーエンハンサー(SE)を統計的に有意に多く持つことを発見している。したがって以上の解析から、脳で活性化するSEを持つ遺伝子は倍加後に2コピーで維持されやすいことが示唆された。 また昨年度に同定したネッタイツメガエルsox9遺伝子のSE候補領域を構成する保存非コード領域(Conserved Noncoding Element, CNE)のそれぞれについて、ツメガエル胚を用いたトランスジェニックレポーター解析を進めた。その結果、6つのCNEのうち、5つが脳や軟骨、眼等で冗長なエンハンサー活性を示した。ネッタイツメガエルのsox9遺伝子は主に脳と軟骨、眼で発現するが、その発現はこれらのCNEから構成されるSEが担うと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに予定通り、トランスクリプトームの種間比較により、倍加コピー間での発現分化が収斂進化を示す遺伝子群の同定をおこなった。この解析により同定した遺伝子の1つのsox9に注目して、そのネッタイツメガエルの祖先型遺伝子のCNEクラスターを同定し、それらがいずれも脳と軟骨で冗長に働くエンハンサーであること、すなわちSEを構成することをトランスジェニックレポーター実験によって証明した。現在CRISPR法を用いて各CNEを個別に破壊する実験を進めているが、その結果がCNE間の機能的冗長性を示す場合、それはSEの進化的頑強性を示唆する。 またネッタイツメガエルのsox9遺伝子は、脳と軟骨に加えて眼でも発現する。一方、アフリカツメガエルとゼブラフィッシュはゲノム重複により形成された2つのsox9を持ち、いずれの種においてもその片方はネッタイツメガエルの祖先型sox9と同じく脳と軟骨、眼で発現するが、もう片方は眼の発現をほとんど失っている。ネッタイツメガエルsox9が持つSEは、アフリカツメガエルとゼブラフィッシュがそれぞれ持つ2つのsox9においても配列上は保存されていることから、倍加後に眼での発現を失った方のsox9は、眼特異的なサイレンサーを獲得した可能性が高い。またこれらの結果は、SEが倍加後のsox9の進化運命を拘束し、2つのコピー間の発現分化パターンに関して機能特化型の収斂進化を引き起こした可能性を示す。 以上、とりわけ本年度に解析を深めたsox9遺伝子に関して、本研究の仮説、すなわち倍加遺伝子がゲノム重複前の祖先遺伝子から引き継いだ頑強なスーパーエンハンサーが、シス変異の蓄積による偽遺伝子化を抑制するとともに、倍加遺伝子の間での発現パターンの進化的分化をも制限し、収斂進化の拘束要因になるという考えを支持する成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べた通り、ドライ解析によるトランスクリプトームの種間比較と、その過程で同定した収斂進化遺伝子の代表例としてsox9のウェット実験を進めている。今後、トランスクリプトームデータを補完するために、sox9以外の遺伝子についてもin situハイブリダイゼーション実験やqPCR実験をおこない、発現解析全体の解像度を向上させる。sox9に関しては、アフリカツメガエルやゼブラフィッシュにおいて眼での発現を失った方の遺伝子コピーに注目し、研究代表者らが先行研究で報告したpax遺伝子の場合(Nat Commun. 2012, 3: 848, doi: 10.1038/ncomms1851)と同様に、転写開始点近傍に眼特異的なサイレンサー活性を獲得していないかどうかトランスジェニックレポーター実験により調べる。サイレンサー領域を同定したら、それをCRISPR法を用いて欠失させ、SEに依存した眼での発現が回復するかどうか検討する。また、sox9以外の収斂進化遺伝子候補についてもウェット実験を進め、SEが倍加遺伝子の進化運命を拘束する普遍的メカニズムを解明する。並行して、活性化型エンハンサーのマークであるヒストン修飾H3K27acに対する ChIP-seqの条件検討も継続し、RXとR3のいずれの後でも進化的に2コピーで維持されている全遺伝子種に対してSEの網羅的同定を進める。
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