研究課題/領域番号 |
22K06253
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
遠藤 充浩 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (40391883)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 多能性 / エピジェネティクス / ポリコーム / 転写因子 / 多能性幹細胞 / 分化 / 発生 / マウス / 幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類の多能性には発生段階に応じてナイーブ型、フォーマティブ型、プライム型と呼ばれる異なる状態が存在するが、多能性の状態が遷移する仕組みや、この遷移の機能的な役割については良く分かっていない。本研究では、転写因子Dppa2/4が形成するクロマチン制御複合体の多能性幹細胞における役割に注目して、多能性遷移過程で起こるエピゲノム変化の背景となる分子機構を明らかにする。またマウス多能性胚におけるクロマチン構造の遷移をCUT&Tag技術等を用いて同定し、Dppa2/4欠損による影響を明らかにする。以上により多能性状態の遷移を規定するエピゲノム制御と発生過程におけるその機能的意義の解明を目指す。
|
研究実績の概要 |
マウスES細胞において、転写因子Dppa2とポリコーム群Pcgf6は共に、新規DNAメチル化の標的遺伝子(Germline遺伝子、Dux及び一部の発生関連遺伝子)に結合することが分かった。この遺伝子群におけるDNAメチル化レベルが、Dppa2欠損で増加し、Pcgf6欠損で減少するが、Dppa2/Pcgf6両欠損ではこれらの影響がキャンセルされて、野生型に近いレベルに戻ることが分かった。新規DNAメチル化酵素Dnmt3bの結合様式もDNAメチル化レベルと同様の変化を示した。一方、Dppa2欠損・Pcgf6欠損・Dppa2/Pcgf6両欠損ES細胞における、これら遺伝子の発現レベルとH3K4me2/3修飾レベルの変化は、DNAメチル化レベルと逆相関を示した。Dppa2はCompass-like/MLL2複合体と結合しており、この複合体の構成因子WDR5の結合レベルもH3K4me2/3修飾レベルと同様の変化を示した。Dppa2欠損・Pcgf6欠損・Dppa2/Pcgf6両欠損ES細胞の分化能を評価するため、これらにmCherry蛍光タンパクを導入後、野生型マウス胚盤胞に注入して、ES細胞が生着したキメラ胚の解析を行った。その結果、Dppa2欠損ES細胞またはPcgf6欠損ES細胞が生着した胚は胎生13.5-14.5日の時点で発生異常を示したが、Dppa2/Pcgf6両欠損ES細胞が生着した胚の大半が胎生13.5-14.5日の時点でほぼ正常であった。以上より、Dppa2とPcgf6が、Compass-like/MLL2複合体の拮抗的な制御を介して、新規DNAメチル化の標的遺伝子におけるH3K4me2/3修飾とDNAメチル化修飾のレベルを適切に維持しており、この拮抗的制御がES細胞のdevelopmental potentialに重要であることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、多能性関連転写因子Dppa2/4とポリコーム群Pcgf6が、新規DNAメチル化の標的遺伝子におけるH3K4me2/3修飾とDNAメチル化修飾のレベルを拮抗的に制御しており、この拮抗的なエピジェネティック制御がES細胞のdevelopmental potentialの維持に重要であることが明らかになった。これは、新規DNAメチル化の標的遺伝子におけるナイーブ型多能性に特有のクロマチン状態が、将来の適切な分化に備えた待機状態、いわゆるエピジェネティックプライミングとして機能していることを示しており、本研究課題が目指す成果の一部が得られたと考えている。従って本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、Dppa2/Pcgf6が共通標的遺伝子を認識するメカニズムを追究する。これらの遺伝子配列に転写因子Yy1/Zfp42の結合モチーフが高頻度に含まれていることから、これらの転写因子がDppa2/Pcgf6の標的遺伝子への誘導に寄与する可能性が考えられる。そこでYy1/Yy2/Zfp42のloss of function実験(shRNAノックダウン, CRISPRノックアウト等)を行い、Dppa2/Pcgf6共通標的遺伝子の転写や、Dppa2/Pcgf6結合などへの影響を解析することにより、Dppa2-Pcgf6軸による標的遺伝子認識のメカニズム解明を目指す。Pcgf6はPRC1.6複合体の構成因子である。PRC1.6複合体に含まれる他の構成因子(L3mbtl2)とDppa2の関係についても解析を行い、PRC1.6複合体とDppa2の関係を追究する。さらにPRC1.6複合体において最も中心的な役割を担うMgaのコンディショナル欠損マウスを作製しており、このマウスを用いてPRC1.6機能の生物学的機能の解明を目指す。
|