研究課題/領域番号 |
22K06254
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
村尾 直哉 宮崎大学, 医学部, 助教 (20773534)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 神経幹細胞 / 小胞体 / Derlin-1 / ニューロン新生 |
研究開始時の研究の概要 |
成体期の神経幹細胞は、その大半が増殖をしない“休眠状態”にある。この神経幹細胞の休眠は、良い状態の幹細胞を脳内にストックし、一生涯を通した神経細胞の産生機構を維持するために必要不可欠な性質である。しかしながら、その性質が一体どのように獲得・維持されるのかについては不明な点が多い。本研究では、胎生期から継続的に神経幹細胞の高い増殖レベルを保つ、小胞体膜分子Derlin-1の欠損マウスを成体神経幹細胞の性質獲得不全モデルと捉え、その解析を通して、小胞体が制御する成体神経幹細胞の新たな休眠状態の獲得メカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
脳内の海馬領域に存在する神経幹細胞は生涯に渡り神経細胞を産生し、この現象は記憶や本能行動などの様々な生命現象に重要な役割を果たす。これまでに、成体期の神経幹細胞のみが有する最大の特徴として、その大半が増殖をしない“休眠状態”にあることが明らかになっている。この神経幹細胞の休眠は、良い状態の幹細胞を脳内にストックし、一生涯を通した神経細胞の産生機構を維持するために必要不可欠な性質である。しかしながら、その性質が一体どのように獲得・維持されるのかについては不明な点が多い。一方で、神経幹細胞の発達過程では、外部シグナルを受け取る細胞膜表面タンパク質の発現亢進や、脂質代謝経路の発達等が明らかになっている。これらの知見より申請者は、膜タンパク質の合成・輸送や、様々な細胞内代謝プロセスに関わる小胞体の働きが、成体神経幹細胞の休眠状態の獲得に重要であると考えられる。本研究では、小胞体タンパク質品質管理機構の成体神経幹細胞の休眠状態の獲得における役割を検証し、生涯の継続した神経細胞の産生に重要な新規分子メカニズムの提示を目指す。今年度は、昨年度Derlin-1と関連した神経幹細胞の休眠状態の制御に関わる可能性のある因子として同定したシグナル伝達兼転写活性化因子Stat5bの解析を行った。ラット海馬由来の成体神経幹細胞やマウス脳内へのウイルス打ち込み実験等により、Stat5bがDerlin-1の下流で成体海馬神経幹細胞の休眠状態を制御していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度に計画していた研究項目について、変更はありつつも同等以上の進行状況であるため。令和4年度にDerlin-1と関連して成体海馬神経幹細胞の休眠状態を制御する因子としてStat5bを同定することができたので、それに着目して研究を行った。ラットの成体海馬由来の培養神経幹細胞を用いてStat5bをノックダウンし、Bmp4による増殖性神経幹細胞の休眠状態への誘導を行ったところ、Stat5bをノックダウンした神経幹細胞はDerlin-1をノックダウンした神経幹細胞と同様に高い増殖レベルを保ったままであり、活性化状態から静止状態への移行障害が見られることが明らかになった。さらに、Derlin-1をノックダウンした神経幹細胞に対してStat5bをレンチウイルスを用いて発現誘導すると、Derlin-1をノックダウンした神経幹細胞で見られた高い増殖レベルが維持されず、多くの細胞が休眠状態へと移行した。加えて、Derlin-1の欠損マウスの海馬領域にStat5b発現レンチウイルスを脳内インジェクションにより感染させると、神経幹細胞の休眠状態への移行障害が改善された。さらに、研究計画に記載はしていなかったが、ケミカルシャペロンとして知られる4-PBAの投与がStat5bの発現を上昇させ、Derlin-1欠損で見られる細胞およびマウスでの表現型を改善することも新たに明らかにした。以上より、当初の計画とは少し異なっているものの、研究計画の目的と合致した多くの重要な新しい知見を得ることができたため、本研究の現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は当初の計画から少し変更して研究を遂行し、シグナル伝達兼転写活性化因子Stat5bの成体海馬神経幹細胞の休眠状態の制御における重要性を明らかにした。そのため今後は、Derlin-1とStat5bの関係に着目し、より詳細にそのメカニズムを検討する予定である。また、ケミカルシャペロン4-PBAがDerlin-1欠損マウスの神経幹細胞の活性化状態から休眠状態への移行障害を改善できることも明らかになった。そのため、このケミカルシャペロン4-PBAに着目し、Derlin-1欠損マウスで見られる記憶障害などの行動変化にも影響を与えるかどうかを詳細に解析していく予定である。さらに、当初の計画にも記載しているが成体神経幹細胞のプロテオーム解析等も実施できるように準備を進めている。令和6年度末までに、研究成果を論文として国際雑誌で発表できるよう研究を推進していく予定である。
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