研究課題/領域番号 |
22K06289
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
川出 健介 基礎生物学研究所, 共生システム研究部門, 助教 (90612086)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | アルギニン代謝 / ヒメツリガネゴケ / 代謝フラックス解析 / シュート形成 |
研究開始時の研究の概要 |
植物は進化過程で茎や葉をつくる体のつくりを確立した。この体制革新には器官の発生・成長を促す代謝変化も伴ったと考えられるが、その仕組みは未解明である。これまで申請者は、陸上植物の進化において初期に出現したヒメツリガネゴケでは、シュート構造である茎葉体の発生・成長がアルギニン代謝の変化で促進される現象を発見した。そこで本研究では、アルギニン代謝の動態に応じて活性化、もしくは抑制される代謝経路を代謝フラックス解析で同定する。さらに、当該経路の細胞分裂・伸長における機能を細胞観察で明らかにする。最後にこれら知見をシロイヌナズナでも検証し、体制革新を代謝および細胞レベルで統合的に理解する
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研究実績の概要 |
これまでに、陸上植物の進化において初期に現れたコケ植物・ヒメツリガネゴケでは、茎や葉からなるシュート組織(茎葉体)の発生および成長がアルギニン代謝の変化で促進される現象を見いだしている。そこで本研究では、茎葉体の発生および成長に応じて活性化もしくは抑制される代謝経路の同定を最初の課題とした。そのために、安定同位体13C(炭素)もしくは15N(窒素)で標識したアルギニンをヒメツリガネゴケ組織に取り込ませ、茎葉体の発生および成長とともに利用される動態を質量分析装置で解析する実験系の構築に着手した。ここではまず、安定同位体標識アルギニンをヒメツリガネゴケ組織に処理する方法を検討するとともに、処理する濃度および時間の組み合わせを最適化することを試みた。そして、安定同位体標識アルギニンを添加した培地の上にセロハンを敷き、その上で培養したヒメツリガネゴケにおいて、安定同位体標識アルギニンだけでなく、アルギニン代謝に関連するアグマチン、シトルリン、オルニチンにも安定同位体を含むものを検出する実験系を確立することができた。次に、安定同位体標識アルギニンを処理した後に時系列に沿って原糸体や茎葉体を採集し、茎葉体で特徴的に見られるアルギニン代謝の動態を同定するための実験に取り組んだ。そうしたところ、アグマチン、シトルリン、オルニチンの3方向へ代謝されうるアルギニンが、茎葉体では特徴的な方向へ偏って代謝されていることが分かってきた。このような、アルギニン代謝の発生および成長に応じた特徴的な変化はこれまで知られていないことから、茎葉体におけるアルギニン代謝の役割について考察する重要な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
安定同位体標識アルギニンを用いて代謝フラックスを調べる実験は先例が非常に乏しく、限られた情報の中で実験系を確立することが求められていた。そのような状況であったが、初年度に各種条件の検討を重ねて、実験系を確立することができた。さらに、その実験系を用いて、茎葉体で特徴的に起こる代謝動態を見いだすまで研究を発展させることができた。他方で、原糸体と比べて茎葉体では、培地に添加した安定同位体標識アルギニンの取り込み効率が低いことも分かった。これにより、アグマチン、シトルリン、オルニチンが、さらにどのように代謝されているのか検討することが現時点では難しく、実験系のさらなる改善が必要であることが判明したため、やや遅れているという評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
茎葉体をサンプルとした際の代謝フラックス解析において、アルギニンに由来する安定同位体標識を取り込んだアグマチン、シトルリン、オルニチンがどのように代謝されるのか検出できるように改善を試みる。そのために、最も単純な改善策としては、分析に供する茎葉体のサンプル量を増やすことが考えられる。そこで、現実的なサンプル量と、検出に必要なサンプル量のバランスを考慮して実験条件の検討を行う。また、これまで安定同位体15N(窒素)で標識されたアルギニンを用いてきたが、13C(炭素)で標識されたアルギニンを用いて炭素骨格の流れを追跡することにも取り組む。 このような実験系の改善を試みるのと並行し、すでに見いだしている茎葉体における特徴的な代謝変化については、茎葉体の発生および成長との関係性を調べる実験を始める。そのためには、変化のあった代謝経路の推定機能について、代謝物の投与実験や薬剤処理実験から着手する。 初年度は代謝物分析に焦点を当ててきたが、ある程度の進展が見られたので、計画通りに細胞レベルでの解析にも着手する。そのために、まずは茎葉体における細胞の増殖活性や肥大成長活性について、野生株と、アルギニン代謝が茎葉体で特異的に乱れるangustifolia3変異株の比較定量解析を行う。
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