研究課題/領域番号 |
22K06296
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山口 陽子 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (70801827)
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研究分担者 |
今野 紀文 富山大学, 学術研究部理学系, 講師 (50507051)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 後葉ホルモン / GPCR / メダカ / Gタンパク質選択性 / 分子進化 / 構造機能連関 / 遺伝子編集 |
研究開始時の研究の概要 |
脊椎動物の下垂体後葉ホルモンは強力な抗利尿作用をもち、乾燥した陸上環境への適応に必須である。この抗利尿作用を媒介するV2a型受容体(V2aR)の分子・機能進化は、我々の環境適応能力の成り立ちを理解する上で重要な課題だが、詳細は不明である。本研究ではV2aRとその祖先型分子であるV2b型受容体(V2bR)に着目し、モデル生物のメダカを用いた実験で、V2bRからV2aRへの進化を人為的に再現する。これによりV2aRの進化過程とその影響について、分子~個体までのレベルで包括的に検証する。
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研究実績の概要 |
下垂体後葉ホルモンは、腎臓に発現する受容体V2aRを介して強力な抗利尿作用を発揮し、乾燥した陸上環境に適応する上で必要不可欠な役割を果たす。V2aRとその祖先型分子であるV2bRはシグナリング特性が異なり、前者はcAMPを、後者はCa2+を用いた情報伝達を行う。この違いは、両者が共役するGタンパク質の種類に起因する。一般的に、V2aR(cAMPタイプ)はGsと、V2bRを含むその他の後葉ホルモン受容体(Ca2+タイプ)はGqと共役するとされる。本研究は、遺伝子工学的手法を駆使してV2bRからV2aRへの進化を分子~個体レベルで再現し、V2aRの成立過程ならびにそれが後葉ホルモン系の機能進化に与えた影響を解明することを目指す。 研究の第一段階は、V2aRとV2bRそれぞれのシグナリング特性を決定するアミノ酸配列モチーフを特定することである。当初の予定では、メダカV2aRとV2bRの配列を一部入れ替えたキメラ受容体を作成し、そのGタンパク質選択性について、FRET(Gs)または電気生理学をベースとした手法(Gq)で検証することとしていた。しかし研究の過程で野生型受容体の機能特性を精査する必要が生じたため(下記参照)、そちらを優先した。 キメラ受容体に先んじて野生型受容体のGタンパク質選択性を検証したところ、Gsとの共役能についてはV2aRがV2bRに勝り、先行研究と一致する結果が得られた。一方で、V2bRのGq応答性は極めて低いことが示された。比較のためにネッタイツメガエルの受容体も解析に加えたが、同様の結果となった。すなわち、V2bRのCa2+シグナリングは従来考えられていたGqではなく、別のGタンパク質によって引き起こされる可能性が示唆された。 なお、in vitro実験におけるGタンパク質選択性の解析は、生理学研究所の共同利用研究制度により実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定を変更し、野生型後葉ホルモン受容体の機能特性検証を優先したため(「研究実績の概要」参照)。
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今後の研究の推進方策 |
野生型V2aRとV2bRとでGs応答性に差が見られたことから、「V2bRに変異を導入し、よりV2aRに近い機能特性をもつキメラ受容体を作成する」という当初の実験予定を遂行する。これと並行して、V2bRがどのGタンパク質受容体と共役するのかを明らかにする。Gq以外で細胞内Ca2+の亢進を引き起こすGタンパク質としてはGsとGiが知られている。このうち現時点で未検証のGiに的を絞り、電気生理学的手法によってV2bRとの共役を解析する。本年度と同様に生理学研究所の共同利用研究制度を活用する。
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