研究課題/領域番号 |
22K06304
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
関井 清乃 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 助教 (50786358)
|
研究分担者 |
小林 一也 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (50360110)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | プラナリア / 生殖様式 |
研究開始時の研究の概要 |
扁形動物プラナリアには、無性生殖と有性生殖を使い分けるものがいる。この生殖様式の転換を可能にしているのが、プラナリアが全身に有する分化多能性幹細胞であり、ここから生殖細胞を含めたすべての組織を形成できる。しかし、無性個体は分裂後、脳も含めすべて再生するのに、生殖細胞・器官だけは作らず、無性状態を維持し続ける。最近、プラナリアが無性状態のままでいる仕組みに共生細菌が関与しており、宿主の多能性幹細胞の分化を抑えて卵巣が形成されないようにしていることを明らかにした。本研究ではこれを「有性化抑制因子」としてその同定をめざす。
|
研究実績の概要 |
扁形動物プラナリアには、無性生殖と有性生殖を使い分けるものがいる。この生殖様式の転換を可能にしているのが、プラナリアが全身に有する分化多能性幹細胞であり、ここから生殖細胞を含めたすべての組織を形成できる。しかし、無性個体は分裂後、脳も含めすべて再生するのに、生殖細胞・器官だけは作らず、無性状態を維持し続ける。 プラナリアは実験的に無性個体を有性個体に転換させる系が確立されている(有性化)。プラナリアのクローン集団(Dugesia ryukyuensis OH株)を用いた先行研究で、遺伝的なバックグラウンドが同じであるにもかかわらず、無性個体と有性個体の細菌叢は大きく異っており、また、抗生物質処理によってプラナリアの有性化が一部進行することから、プラナリアが無性状態のままでいる仕組みに共生細菌が関与していることを明らかにし、denovo276を同定した。denovo276は宿主の多能性幹細胞の分化を抑えて卵巣が形成されないようにしている。腸内細菌であることからその仕組みには何らかの代謝産物が関与していることが考えられ、本研究ではこれを「有性化抑制因子」としてその同定をめざす。 化合物の実体としては既知物質および未知物質の両方の可能性が考えられる。そこでどちらの可能性も想定して因子同定のアプローチを行えるように、2022年度はまずdenovo276のin vitro培養系の確立を試みた。抽出方法や培地の種類、培養条件の検討を重ねながら、PCRおよびDNAシーケンスによる配列解析で確認することで、無事にdenovo276の単離・培養に成功した。2023年度はdenovo276の培養上清について、メタボローム解析を行い、denovo276で特異的に生産される代謝産物を同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では抗生物質処理によって卵巣が誘導されたプラナリアを用いて、「無性個体に多く存在し、かつ抗生物質処理でdenovo276が除かれた個体では減少している代謝産物」という基準から、denovo276が産生する有性化抑制因子の候補物質を見つける予定であった。しかし代謝産物を網羅的に解析するメタボローム解析では、プラナリア由来の化合物も多く検出されることが予想され、それらの中からいかに候補化合物を絞り込むかが重要な課題であった。 腸内細菌がうまく培養できるかは運によるところも大きいが、幸いにも本研究では2022年度にdenovo276の単離・培養に成功し、それらの培養上清のみを解析の対象とすることが可能になった。 2023年度は培養条件についてさらに条件検討を重ね、培地のみのコントロール群と、denovo276を培養したのちに遠心で菌体を取り除いた培養上清(実験群)を用意して、メタボローム解析を行った。その結果、コントロール群と実験群で合わせて423の代謝産物を検出した。コントロール群と比較して、実験群で統計的に有意に多く存在する物質は37物質あり(t-test, P<0.05)、そのうちの9物質は実験群で2倍以上多く存在していた。また、実験群では検出されたが、コントロール群で検出されなかったために、統計的なサポートを得ることができなかった実験群特異的な代謝産物が、15物質あった。以上をまとめると、denovo276が産生する有性化抑制因子の候補として、まずは24の候補物質(実験群で2倍以上多く存在する9物質と実験群特異的な15物質)を得ることができた。今後はこの24物質について、それらをプラナリアに与え、その効果を検証する予定である。 これらのことから総合して、「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度に単離・培養に成功したdenovo276について、2023年度は培地のみのコントロール群と、denovo276の培養上清(実験群)についてメタボローム解析を行った結果、denovo276が産生する有性化抑制因子の候補として24の候補化合物(実験群で2倍以上多く存在する9物質と実験群特異的な15物質)が得られた。 今後はこれらの候補化合物をプラナリアに与えて、抗生物質処理で誘導される卵巣がキャンセルされるかどうかで卵巣抑制効果を評価する予定である。また因子が未知物質である可能性も考慮し、単離・培養したdenovo276が産生する物質を天然有機化合物の分離・精製法を用いて分画していき、卵巣分化抑制効果のある物質の同定を試みる。
|