研究課題/領域番号 |
22K06306
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
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研究機関 | 基礎生物学研究所 (2023) 沖縄科学技術大学院大学 (2022) |
研究代表者 |
安島 理恵子 基礎生物学研究所, 初期発生研究部門, 准教授 (10615066)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | Wnt5a / ATXN10 / 初期発生 / 着床 / 卵管上皮 / 形態形成 / 平面内極性 / Wnt/PCPシグナル / マウス |
研究開始時の研究の概要 |
Wnt/PCPシグナル経路により制御される、上皮細胞の平面内極性制御と間葉系細胞の細胞運動制御という、2つの異なるイベントがどのような分子機構で制御されるかを明らかにするため、Wnt5a下流候補因子のマウス初期胚における機能解析を行う。平面内極性はノードにおけるPCPコアタンパク質の非対称局在制御に関わる因子の同定、細胞運動制御は前後軸伸長を指標に候補因子のCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用い変異マウスの作成と解析を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、上皮細胞の平面内極性制御と間葉系細胞の細胞運動制御という、2つの異なるイベントを制御するWnt/PCPシグナル経路の、様々な組織の形態形成制御機構における分子機構を明らかにすることを目的に、Wnt5aの下流因子を同定し、その役割の解析を行なっている。 研究代表者は前年度までに、Wnt5aの下流因子としてATXN10を同定し、Atxn10のマウス胚のノードにおけるコンディショナルノックアウト(cKO)胚を解析することで、ATXN10が、ノードにおける平面内極性構築に伴い制御される、繊毛の位置の後方移動に重要な役割を持つことを示した。 Atxn10遺伝子欠損(KO)胚は着床前後に胎生致死になることから、本年度は、Atxn10 KOの着床期並びにAtxn10 cKOの平面内極性を示す成体の組織における機能解析をそれぞれ進めた。 Wnt5a並びWnt/PCPコアタンパク質はこれまでに、胚の着床後の子宮上皮細胞のリモデリングの方向性を規定する役割が報告されている。この子宮上皮細胞のリモデリングと胚の着床の向きは一致することが知られている。本研究によりAtxn10 KOは着床の向きに異常が生じることがわかった。現在、Wnt5aが制御するATXN10の機能がどのように着床の向きを規定するか分子機構の解析を進めている。 卵管上皮の多繊毛細胞は、Wnt/PCPシグナル経路により、その繊毛の向きが制御されることが報告されている。卵管上皮の多繊毛細胞におけるAtxn10 cKOを解析し、ノードにおける表現型と比較することで、各組織におけるATXN10の機能の相違を解析した。卵管上皮の多繊毛細胞におけるAtxn10 cKOは、ノードと異なり、繊毛の向きや位置に顕著な異常は観察されなかった。一方多繊毛細胞の減少が見られた。したがってATXN10の組織間の異なる機能を示す結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、Wnt/PCPシグナル経路の下流の分子機構を、様々な組織の形態形成制御機構において明らかにすることが大きな目的のひとつである。本年度は、ノードにおいてWnt5aの下流で平面内極性制御に関わる因子として同定されたATXN10の、ノード以外の組織における機能解析を進められた。 マウス胚の着床の方向性制御は主に子宮側の分子機構の解析がなされているが、胚側の機構は不明な点が多い。本研究でATXN10のマウス胚着床の方向性制御への関与を示したことから、ATXN10の機能を解析すること、またその機能にWnt5aが及ぼす影響を解析することで、胚着床の方向性制御の分子機構が明らかになると期待される。 卵管におけるAtn10 cKOの機能解析は、当初の予想と異なり、ノードで見られた繊毛の位置/方向性の異常が、多繊毛細胞では見られなかった。一方多繊毛細胞数の減少が観察された。この結果は、ATXN10が平面内極性構築前に細胞の増殖や分化に寄与している可能性、並びにWnt/PCPシグナル経路による平面内極性制御が、一次繊毛を持つ組織と、多繊毛細胞を持つ組織で異なる分子に制御されている可能性を示唆する重要な知見である。 本研究の目的のひとつである、新たなWnt/PCPシグナル経路の下流因子の同定について、本年度においてはWnt5aの下流で働く因子で予想されるような表現系を示す因子は見つからなかった。今後はさらに解析対象の候補を増やし、解析を進める予定でいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究において、ATXN10のノードにおける繊毛の位置の制御機構、卵管の多繊毛細胞減少の機構をそれぞれ解析を進めることで、各組織における平面内極性構築の分子機構の違いを明らかにしたい。卵管の多繊毛細胞の増殖や分化と、平面内極性構築の時系列的な解析と、細胞分化と平面内極性構築の関連について解析することで、組織間における分子機構の違いの理解が進むと考えられる。さらに、それぞれの機能におけるWnt5a刺激の寄与について、解析を進める予定である。 本年度は、所属が変わり研究施設の移動があったことで、動物実験の立ち上げに時間を要したことから、新たな候補因子のスクリーニングの実行が予定の一部しか実行できなかった。今後は、検証する候補因子を増やし、スクリーニングを進める予定である。そして新たな因子が同定され次第、上皮細胞の平面内極性制御と間葉系細胞の細胞運動制御のそれぞれにおける機能を検証したい。
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