研究課題/領域番号 |
22K06309
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石井 健一 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60895465)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 攻撃行動 / 社会性 / 痛覚 / 発達障害 / 階層関係 / 神経回路 |
研究開始時の研究の概要 |
動物は、攻撃行動の発動と停止を通じて個体間の階層関係を構築する。その仕組みを理解する上で、攻撃の”ON/OFF”を制御する遺伝子・神経系の働きを知ることが重要となる。しかしながら、攻撃を抑制する「ブレーキ」役の因子の解明が進んでおらず、攻撃制御機構の全体像は把握されていない。そこで私は、最近自身が見出した、ショウジョウバエにおける攻撃の「ブレーキ」役として働く新規遺伝子を起点として、個体間相互作用に依存した攻撃制御の分子基盤を解明する。さらに、複数個体が互いに攻撃し合う中で変化する神経系・遺伝子の働きを追うことにより、個体間の階層関係を規定する、他個体の行動に応じた攻撃制御機構の理解を目指す。
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研究実績の概要 |
攻撃行動は動物個体の社会的経験により影響を受けることが知られているが、そのメカニズムには不明な点が多く残されている。ある個体の攻撃行動が変化する主要因の一つとして、他個体から攻撃を受けたことにより生じる「痛覚」が想定される。そこで本年度は痛覚システムに着目し、ショウジョウバエをモデルとして痛覚制御の分子・神経メカニズムを解析した。 まず、ショウジョウバエの脳神経データベースから、痛覚感知を担う一次侵害受容ニューロンと接続する二次ニューロン群を探索した。これらのうち、遺伝学的な神経活動阻害によりハエの痛覚応答性が顕著に上昇する「痛覚抑制ニューロン」を同定し、SDGsと命名した。次に、神経細胞の活動を計測する生理学実験を行ったところ、SDGsから放出される神経伝達物質GABAが一次侵害受容ニューロンのGABA-B受容体に作用し、痛覚応答が抑制されることが示された。さらに、SDGsの神経活動は常時一定でなく、個体の栄養状態により柔軟に変化することが見出された。絶食後のハエに糖を摂食させると、SDGsの神経活動が亢進し、痛覚応答性が顕著に低下した。これらの結果は、新規痛覚抑制ニューロンSDGsが状況依存的な痛覚制御を担うことを示唆している。 ヒトにおいて社会的経験と痛覚は密接に関係しており、その破綻は自閉スペクトラム症等の発達障害によく観察される。発達障害の原因遺伝子Ube3aの変異により、ショウジョウバエ一次侵害受容ニューロンのシナプス形成に異常が起こり、痛覚応答性が変化することが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
社会的経験と攻撃行動の関係を紐解くうえで重要な鍵と考えられる「痛覚」に関して、(1)生理的な状況に依存して痛覚制御を担う新規ニューロン群を同定し、さらに(2)発達障害による痛覚異常の分子メカニズムを解明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに明らかにした、攻撃行動に影響を与える因子(nervyおよびその関連遺伝子群)や神経細胞群(オクトパミン陽性ニューロン)について、痛覚との関連を調べる。
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