研究課題/領域番号 |
22K06312
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
石原 顕紀 静岡大学, 理学部, 准教授 (70432193)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 遺伝子発現 / 行動実験 / 環境化学物質 / エピジェネティクス |
研究開始時の研究の概要 |
環境化学物質(EDC)は甲状腺ホルモン(TH)とその核内受容体を介したエピゲノム調節を撹乱する。胎児脳内のエピゲノム撹乱は、発達障害リスクの増加につながるとしてDOHaD学説が注目されている。しかしEDCの仔への直接的影響の解明は、胎盤・母乳由来の間接的曝露となる哺乳類モデルの制限があり進んでいない。本研究は、変態期両生類モデルを用い、EDCが及ぼす分子・行動レベルへの影響を総合的に解明する。そのために、TH応答性の発達障害関連遺伝子群の発現制御におけるEDCの作用機序を明らかにし、また行動を定量的に解析することで、分子レベルの撹乱と、誘起される行動変化との関連を機械学習により解明する。
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研究実績の概要 |
本研究の実施内容は、化学物質が撹乱する甲状腺ホルモン応答遺伝子の探索、化学物質がそれらの遺伝子発現におよぼす影響の検討、化学物質が両生類幼生の行動におよぼす影響を検討する実験系の確立と実施、化学物質が遺伝子発現制御におよぼす影響のエピジェネティックな解析、である。 初年度の計画は、遺伝子探索、遺伝子発現におよぼす化学物質の影響の検討、行動実験系の確立、であった。そこで初年度は、候補遺伝子として甲状腺ホルモン受容体や発達障害に関与すると言われているCHD8など複数の遺伝子発現におよぼす化学物質の影響を検討し、個体レベルでの阻害作用、活性化作用を見出した。行動実験系については、シングルボードコンピュータであるラズベリーパイとアクションカメラGoPROを用いた行動実験系を確立し、陽性コントロールとしてバルプロ酸の影響を検討した。行動実験では、社会性を検証することを目的として系を確立したが、バルプロ酸を処理した群では対照群と比較して有意に社会性が低下した。このことから確立した実験系が発達障害様の行動を検討するのに適したものであることが実証された。 今後はこの行動実験系を用いて、様々な化学物質が行動におよぼす影響を検討するとともに、遺伝子発現撹乱の再確認、および発現制御におよぼす影響のエピジェネティックな解析を進めていく予定である。したがって当初の計画のとおりに進捗していると言える。 関連論文として、2022-2023年に2報の学術論文を公開し、同時に国内の学会で成果発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画では、in Silico解析による、甲状腺ホルモンによって発現が変動する発達障害関連遺伝子の探索、環境化学物質がそれらの遺伝子発現におよぼす影響の検討、発達障害様の行動を検証する新規両生類行動実験系の確立、であった。 in Silico解析による、甲状腺ホルモンによって発現が変動する発達障害関連遺伝子の探索では、当研究室のこれまでの実績と哺乳類等で得られている知見から、甲状腺ホルモン受容体や、Chd8、オキシトシン受容体などの遺伝子を候補として選択した。 それらの遺伝子発現におよぼす甲状腺ホルモンの影響、および甲状腺ホルモンによる発現変動におよぼす環境化学物質の影響を検討した。甲状腺ホルモン受容体の発現は甲状腺ホルモンによって増加することが知られているが、用いた環境化学物質のうち臭素化ビスフェノールAは抗甲状腺ホルモン様作用を示し、イオキシニルはホルモンによる発現増加の増強作用を示した。これは従来知られていた作用とは反するもので非常に新規性が高い結果となった。 両生類は発達障害様の症状を検討するのに適したモデル系であるが、実験系としての行動実験が確立されていなかった。そこで初年度に、この実験系を確立することを目的の一つとしていた。静穏な環境下での実験を実現するため、シングルボードコンピュータであるラズベリーパイと、それによって制御可能なアクションカメラGoPROを用意し、ネットワーク上からSSH接続・Pythonプログラムを実行することで、両生類幼生に近づくことなく行動を検証可能な実験系を確立した。これを用いて抗てんかん薬であるバルプロ酸の影響を検討したところ、処理群で有意な社会性の低下が見られ、行動実験系の有用性が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べたとおり、当初計画に則って研究は推移しているため、今後も計画通りに遂行する予定である。 すなわち2年目以降は、遺伝子発現におよぼす影響の検討、行動におよぼす影響の検討を継続するとともに、発現制御の解析に移行していく。具体的には、ヒストン修飾やDNAメチル化など、エピジェネティックな変化を標的遺伝子周辺領域で検討していく。
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