研究課題/領域番号 |
22K06323
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
櫻井 健志 東京農業大学, 農学部, 教授 (20506761)
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研究分担者 |
藤井 毅 摂南大学, 農学部, 講師 (30730626)
安藤 規泰 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (70436591)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 性フェロモン / カイコガ / 匂い源定位 / フェロモン分解酵素 / 嗅覚 |
研究開始時の研究の概要 |
ガ類のオスは触角で受容した性フェロモンの情報を利用して同種のメスに定位する。オスが効率的にメスの元に定位するためには、触角で受容したフェロモンを迅速に不活性化し、フェロモンのONとOFFを高い時間分解能で検出することが重要である。しかし、受容後のフェロモンを分解し不活性化する分子機構はよくわかっていない。本研究ではガ類のモデル昆虫であるカイコガ(Bombyx mori)を用いて、オス触角で機能するフェロモン分解酵素の単離および機能同定を行い、効率的なフェロモン源定位に必要なフェロモンの不活性化機構の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、カイコガをモデルとしてオス触角で機能するフェロモン分解酵素の機能的役割を明らかにし、効率的なフェロモン源定位行動を可能とするフェロモン受容細胞の応答キネティクスを制御する分子機構を解明することを目的としている。 本年度は、オス触角におけるフェロモン分子の分解活性に関するアッセイを中心に研究を実施した。オス成虫触角ホモジネートにカイコガの性フェロモンであるボンビコール(以下BOL)を添加し、一定時間インキュベートした。その後、薄層クロマトグラフィーによりBOLの分解物を分析したところ、主要な分解産物と思われるスポットを検出した(Rf=0.89)。Rf値を考慮すると、このスポットに含まれる化合物は非常に低い極性を持つことが示唆された。この結果は、触角中におけるフェロモン分解の主要な経路が、先行研究で示唆されたBOLからその酸化体であるボンビカールの経路ではなく、BOLから炭化水素などの低極性物質への変換である可能性を示唆している。現在、この可能性を検証するためにGC-MS等の分析により分解産物の化学構造を決定するための解析を進めている。並行して、RNAseqのデータ解析を実施した。既知のアルコール酸化酵素との類似性に依存しない候補遺伝子の探索法として、当初の計画ではオス触角の毛状感覚子と錘状感覚子を単離し、それぞれについてRNAseqを行うことでフェロモン受容器に特異的な分解酵素のスクリーニングを行う予定であった。しかし、上記のフェロモン分解アッセイにより、BOLからボンビカールへの変換ではない経路により分解される可能性が示された。そのため候補遺伝子の範囲を広げて、触角ほぼ全体のRNAseqデータからオスで優勢的に発現している代謝関連の酵素遺伝子を選抜した。今後、分解産物の同定と並行して、これらの遺伝子の詳細な配列解析を進め、BOLの分解酵素の同定を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、初年度にフェロモン分解酵素の候補遺伝子を決定し、ノックアウトカイコガの作出に取り掛かる予定であった。しかしながら、先行研究で報告されたフェロモン分解経路を再検証する実験を実施したところ、想定外の結果が得られたため、候補遺伝子の選抜条件を再検討する必要が生じた。それにより、本年度内にノックアウトカイコガの作出実験の開始に至らなかった。本年度の研究で得られた結果は、フェロモン分解の新規メカニズムの発見につながる可能性を秘めた重要な成果であると考えられるものの、上記の理由から当初の計画よりやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の目的達成には、フェロモン分解酵素遺伝子の同定が必要であるが、そのためにはオス触角においてボンビコールがどのような化合物に変換されているかを正確に理解することが重要である。本年度の研究から、先行研究とは異なる分解経路が推測されたため、次年度はまずボンビコールの分解による生成物を同定する。その結果をもとに直ちにRNAseqのデータから候補遺伝子を絞り込み、ノックアウトカイコの作出を実施することで、次年度中にin vivo解析による分解酵素の機能同定を行うことを計画している。
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