研究課題/領域番号 |
22K06344
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
川口 眞理 上智大学, 理工学部, 准教授 (00612095)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | seahorse / brood pouch / placenta / タツノオトシゴ / 胎盤 / 育児嚢 / 進化 |
研究開始時の研究の概要 |
地球上に多様な種が生息しているのは、進化の過程で環境に適応しつつ様々な形質を獲得したからである。魚類の中でも、タツノオトシゴが属するヨウジウオ科魚類は、進化過程でオスが子育て器官である育児嚢を獲得した。オスはメスから受け取った卵を保護し、その後出産する。タツノオトシゴの育児嚢は胎盤と真皮層で構成されている。胎盤は、抱卵中に卵を包み込むように保護するので、子育てにおいて重要な役割を担うと考えられる。本研究では、胎盤に着目して、(1)形成メカニズム、(2)抱卵中の役割、(3)進化過程の3つの視点で、タツノオトシゴの胎盤がどのような機能を持つのかを解明する。
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研究実績の概要 |
タツノオトシゴやヨウジウオなどのヨウジウオ科魚類は、オスの育児嚢内ので胚を保護し、出産する。育児嚢内では、胚から出る老廃物(アンモニア)を排出する機構があると考えられる。ヨウジウオ科魚類の育児嚢の形態は、5つのタイプに分かれており、体表に卵を付着させるだけのものや、体表に付着させた卵を部分的に表皮で覆っているものなど、開放型の育児嚢がタイプ1~3である。体表に付着させた卵を表皮で完全に覆い隠す閉鎖型の育児嚢がタイプ4と5である。閉鎖型の育児嚢では育児嚢内のアンモニアを排出する機構が重要だと予想されるが、開放型は胚から出た老廃物は直接水中に放出されるので、育児嚢内のアンモニアの排出という点では、育児嚢の役割は小さいと予想される。 本研究では、タイプが異なる育児嚢間でアンモニア排出機構がどのようになっているのかを明らかにすることを目指している。本年度は、ウプサラ大学とヨーテボリ大学との共同研究として、タイプ1(開放型)の育児嚢をもつ魚種3種とタイプ4(閉鎖型)の魚種3種の採集をスウェーデンで行った。これらの育児嚢の形態的な違い明らかにするために、組織染色を行った。タイプ1の育児嚢には卵に合わせたくぼみができて、その中に卵が収められていたが、卵は取れやすくなっていた。タイプ4の育児嚢については、胚を育児嚢内で1層で保護するタイプと2層で保護するタイプに分かれていたが、育児嚢の組織には大きな違いはなかった。 さらに、ゲノムデータベースを用いて、アンモニア輸送タンパク質であるrhタンパク質(rhag, rhbg, rhcg)の探査を進めた。その結果、いずれの魚種からのrh遺伝子が見つかった。今後は、免疫組織染色によって局在を明らかにしていく予定である。 この他に、ヨウジウオ科魚類の中でもタツノオトシゴ属とヨウジウオ属のみが持つ新奇遺伝子(pgrich)を発見し、論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は各魚種のrhタンパク質(rhag, rhbg, rhcg)の免疫組織染色を進めたのだが、シグナルを検出できていないので、条件をもう少し検討していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
ヨウジウオ科各魚種におけるアンモニア輸送タンパク質(rhag, rhbg, rhcg)の局在を明らかにしていきたい。rhタンパク質は、魚類では鰓に局在することが知られているので、鰓をコントロールに用いて免疫組織染色を進める予定である。 しかしながら、ヨウジウオ科魚類の鰓の構造は多くの魚類とは形態が異なっている。一般的に、魚類の鰓は鰓蓋が大きく開かれていて、鰓弓から一次鰓弁が伸びている形態をしている。一方、ヨウジウオ科魚類の鰓は、鰓蓋は穴状の出入り口があるのみである。また、鰓弁の形態も異なっている。そこで2024年度はまず、ヨウジウオ科魚類の鰓の形態を一般的な魚類(メダカ)と比較する予定である。そのために、ヨウジウオ科魚類とメダカの鰓の組織切片を作製し、HE染色などを行う予定でいる。鰓の形態を理解したうえで、鰓でのrhタンパク質の局在を明らかにし、育児嚢での同タンパク質の局在を調べていく予定でいる。これにより、育児嚢内では老廃物の除去をどのように行っているのかを明らかにできると期待している。 2023年度に発見したタツノオトシゴ属とヨウジウオ属だけがもつ新奇遺伝子(pgrich)については、育児嚢の体表を覆うflame cone細胞で発現していることがわかった。flame cone細胞は、タツノオトシゴ属に固有の細胞で、ヨウジウオ属にはない。それにもかかわらず、ヨウジウオ属魚種にもpgrich遺伝子が見つかっているので、2024年度は、ヨウジウオ属魚種でpgrich遺伝子の発現局在をin situハイブリダイゼーション法で明らかにしていく予定である。また、ヨウジウオ科魚類のゲノムデータベースが充実してきており、pgrich遺伝子の探査を魚種数を増やして進めていく。これにより、pgrich遺伝子が進化の過程でどのように生じたのかを明らかにできると期待している。
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