研究課題/領域番号 |
22K06346
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
中島 啓介 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, スタッフサイエンティスト (10422924)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 腸内細菌 / キチン / 粘液層 / 共生関係 / 動物進化 / 脊椎動物 |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類の腸管表面をおおう粘液層には、固有の腸内細菌が定着している。この「腸内細菌による粘液層への定着」は、動物に祖先的な特徴と考えられてきた。しかし、真に祖先的な特徴である「多糖キチンのナノ繊維を骨組みとするバリア免疫機構」を失うことで成立した、新しい特徴であることを見出した。この「キチンバリア」は魚類に認められるが哺乳類には存在しないため、両者をつなぐ脊椎動物の系統のどこかで失われたと考えられる。本研究は、それらの系統(肺魚・両生類・爬虫類など)の腸管を調べ、キチンバリアがいつ失われたかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
研究計画2年目にあたる本年は、初年度に別生物種を用いて確立した消化管の微小領域からの菌叢サンプリング及び16S rDNA配列情報の取得法を活用し、真骨魚類ナイルティラピア(Oreochromis niloticus)消化管の解析を行なった。ナイルティラピアは、キチンバリア機構を有する脊椎動物のうち、顎及び胃酸を有するグループの一員としての位置付けである。4匹の異なる個体を用いて4回の生物学的反復及びそれぞれ3回の技術的反復を設定し、消化管6区分および飼育環境・餌環境・作業上陰性対象からデータを得た。先述の通り手法は別生物種で立ち上げたが、ナイルティラピアの解析にも有効であった。おそらく、極微小の領域からのデータ取得などの特別な状況でない限り有効な汎用的な手法を確立できたと考えている。ナイルティラピアから得られたデータの解析は、オープン仕様のバイオインフォスイート QIIME2 を使用して行なった。その結果、飼育環境や餌とは異なる細菌叢の存在が消化管内に存在することが既報通り示されたことに加え、キチンバリア内外での菌叢構成及び存在量の違いが予想通り検出された。更に、特定のある区画において宿主との共生関係が示唆されるデータが得られたため、これの検証を進めている。このように本年度は、1)サンプリングとデータ解析のパイプラインを確立できたことが確認され、今後解析の対象を別生物種に広げるにあたり明るい展望が得られ、2)キチンバリアを消失する前の進化段階において予想以上の内容を示唆するデータを得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
海外滞在となる他エフォートとの兼ね合いで生物飼育及びウェット実験の遂行が一時的に困難になることが予想されたため、それを踏まえた計画を立案申請している。その予想の範囲においてデータ解析を行い、既報に沿った内容(indigenousな腸内細菌叢)、予想通りの内容(キチンバリアによる腸内空間の区画化)、更に予想以上の内容(キチンバリアの作用を超えて宿主と親密な関係を築いていると思われる菌叢の存在)が得られた。最後の点について、計画を立案した当初は実際にやってみないとどうなるかわからなかったため、当初の計画以上に進展していると評価できると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、海外赴任の別エフォートに従事しているため、本研究を推進する上で制約が生じている。一旦得られたデータをバイオインフォの手法で解析することは可能であるが、実際に生物を飼育・解剖し消化管菌叢データを新たに取得することは難しい。今後、後者の作業が研究遂行に絶対欠かせない状況になれば、当該別エフォートとのすり合わせ、具体的にはどちらかのエフォートを一旦休止するなどの具体的な判断が必要になると考えている。
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