研究課題/領域番号 |
22K06347
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡田 崇 京都大学, 医生物学研究所, 准教授 (10741043)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 集団遺伝学 / ウイルス進化 / クローン干渉 / 領域拡大 / 進化 / コロナウイルス / 子孫数分布 / 季節性インフルエンザ |
研究開始時の研究の概要 |
進化速度の速いウイルスや細菌の適応進化は、集団遺伝学においてよく知られる選択的スイープの描像とは質的に異なり、複数の有益変異が同時に存在する状況(クローン干渉)にあることが示唆されつつある。有益変異間の競合という複雑さのため、{クローン干渉の理論的理解は未だ不十分である。また、クローン干渉のダイナミクスは大きな確率的揺らぎを示すために、集団遺伝学の標準的な手法を適用できない。本研究では、数理物理学的手法により、クローン干渉の理論を発展させるとともに、集団遺伝学の統計手法を拡張する。さらに、それらを実際の遺伝子配列のデータに応用することで、クローン干渉の実証し、その詳細なダイナミクスを解明する。
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研究実績の概要 |
クローン干渉の効果は特定の生物種で特に重要であり、その中には人間社会に蔓延するインフルエンザウイルスやコロナウイルスのような急速に進化するウイルス種が含まれる。この効果は空間的な拡散ダイナミクスを通じても引き起こされる可能性があると理論上推測されている。実際のデータを基にこの仮説を検証するため、空間的に拡散する集団の典型例として、英国のコロナウイルスの遺伝的データ分析を行った。ここで開発された理論手法は、系統樹からさまざまな変異株の存在頻度の時系列データを構築し取得する手法である。このアプローチを用いることにより、英国の様々な地域で観察される変異株の時系列データが収集された。特に進化的に中立であると予想される系統群に焦点を当て、その存在頻度の時系列データに含まれる変動から各地域の有効集団サイズを推定することに成功した。この推定結果は実際の感染者数と比較して約二桁小さく、2次感染者数に非常に大きな分散があることを示している。この大きな分散の原因として考えられるのは、superspreaderの影響や学校、会社といったコミュニティ構造であり、それらの要素の影響を量的に評価するために、数値シミュレーションを行った。さらに、変異株間での感染力の違いが有効集団サイズの減少に寄与する可能性があるため、クローン干渉の理論を適用し、その影響を分析することで、変異株間の感染力の違いが有効集団サイズをどの程度及ぼしているかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、コロナウイルスのデータに集団遺伝学的な理論手法を適用し、その成果を論文として発表できた。よって、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ウイルスの空間的ダイナミクスを遺伝的データから推定する理論手法を開発する。そして、実際のデータに応用することで、ウイルスの進化に関して定量的知見を得ることを目指す。
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