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周北極植物の温帯への適応種分化と生育環境シフトにおける花粉媒介者の役割の推定

研究課題

研究課題/領域番号 22K06357
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分45030:多様性生物学および分類学関連
研究機関三重大学

研究代表者

福田 知子  三重大学, 教育推進・学生支援機構 全学共通教育センター, 特任講師(教育担当) (10508633)

研究分担者 石川 直子  東北大学, 農学研究科, 特任准教授 (20771322)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
キーワード種分化 / 訪花昆虫 / 花形態 / 系統解析 / 系統地理 / 適応 / 花粉媒介者
研究開始時の研究の概要

チシマイワブキ属クロクモソウは、千島南部から九州までの高山の渓流沿いを中心にみられる植物であり、シベリア~北米の周北極地域に分布するシベリアイワブキとの共通祖先から分化したと推定されている。しかし、シベリアイワブキとは非常に異なる花色・花形態をもつことから、渓流沿いの環境で活動するキノコバエ類が花粉を媒介することによって種分化が起こった可能性がある。そこで、本研究では、クロクモソウがシベリアイワブキとの共通祖先からいつ頃分岐したのか、その過程で花粉媒介者の交代が種分化にどのように関与したのかについて集団遺伝学的解析に基づいて考察し、クロクモソウの種分化と分布変遷の歴史を推定する。

研究実績の概要

クロクモソウはユキノシタ科チシマイワブキ属の草本であり、千島列島から九州にまで分布する日本準固有種である。これまでの研究から、クロクモソウは、シベリアイワブキから分化し、シベリアイワブキとは遺伝的に異なる独立したグループであることが分かった(Fukuda et al. 2023)。クロクモソウが高緯度地方に分布するシベリアイワブキ他と異なり、日本列島の温帯地域まで分布を広げていることや、キノコバエ媒特有の花形態を持つこと(Mochizuki & Kawakita 2018)から、本研究ではクロクモソウの種分化に花粉媒介者のスイッチが関わったのではないかという観点から実験・観察を進めている。
花粉媒介者の調査の一環として、2023年8-9月の開花期に釧路(北海道)、宮崎(九州)にて訪花昆虫のインターバル撮影を行い、以前(2018-19)の調査結果と合わせて解析を行った(一部、2024年3月の日本植物分類学会で発表)。観察の過程で花色(赤色・緑白色)の違いによる訪花昆虫・頻度の違いが見られたことから、今後、花色の違いにも注目して観察する予定である。
計画書のRAD解析(次世代シーケンシング技術を用いて制限酵素認識サイトの近隣領域を解析する手法)については、クロクモソウの分布範囲をカバーする51地点からサンプル収集を行い、外群として極東各地のシベリアイワブキ、Micranthes ohwii、フキユキノシタを加えた192サンプルをRAD解析用に送付した。2024年3月に結果を受け取ったので、今後詳細な解析を行う。
なお、クロクモソウとの系統関係において、クロクモソウと葉緑体ハプロタイプで高い支持率でクレードを形成したアラスカ周辺のシベリアイワブキを調べるため、アラスカ5地点においてサンプル採取を行った。これらのサンプルも今後解析し、クロクモソウとの関係を調べたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022-23年度に北海道(釧路)、岩手(赤倉沢)、山形(坊平)、長野(立山、穂高他)、石川(白山)、九州(宮崎)のサンプルを追加したことにより、サンプル地点は51地点となり、クロクモソウの分布域全体をカバーすることができた。これらのサンプルは過去に採集したシベリアイワブキやその近縁種のサンプルとともにRAD解析用に送付して次世代シーケンサーによる解析結果を得た。今後はこの結果を解析していく予定である。並行して訪花昆虫のインターバル撮影の解析も進めており、完了次第、論文化を目指している。

今後の研究の推進方策

RAD解析のデータを解析し、クロクモソウの種分化・分布拡大過程を明らかにする。クロクモソウの分布拡大については、葉緑体ハプロタイプに基づく系統解析から、クロクモソウ種内の3分類群のうち東北~北海道に分布するエゾクロクモソウが最後に分化したことが示唆されているが、詳細は不明であり、より詳細な進化過程を明らかにしたい。分子集団遺伝学の手法から花の形質に関連した領域で自然選択の痕跡(関連領域における多様性の有意な低下)がみられるかどうかを検討し、花の形態、訪花昆虫のデータとも突き合わせることによって、クロクモソウの花形態の特徴の遺伝的背景について何らかの手がかりを得たいと考えている。
訪花昆虫の観察も引き続き行う。さらに、花色の違いによって訪花昆虫の種類・訪花頻度の違いがある可能性が見られたことから、この点にも注目しながら観察を進めたい。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022 1935 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [国際共同研究] Pacific institute of geography FEB RAS/Kurilsky Nature Reserve/Botanical Garden-Institute FEB RAS(ロシア連邦)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Phylogeography and chromosome number variation in Micranthes nelsoniana and related species (Saxifragaceae) in Northeast Asia2023

    • 著者名/発表者名
      Fukuda Tomoko、Ishikawa Naoko、Chernyagina Olga A、Barkalov Vyacheslav Y、Taran Aleksandr A、Yakubov Valentin V、Marchuk Elena A、Linnik Elena V、Tamaki Ichiro
    • 雑誌名

      Botanical Journal of the Linnean Society

      巻: - 号: 3 ページ: 313-338

    • DOI

      10.1093/botlinnean/boad053

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 国後島におけるチシマクロクモソウ(ユキノシタ科)の調査と哺乳類の観察報告2023

    • 著者名/発表者名
      福田 知子,河合 久仁子,大舘 智志,Linnik Elena
    • 雑誌名

      三重大学全学共通教育センター研究紀要

      巻: 8 ページ: 39-45

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際共著
  • [雑誌論文] 植物研究雑誌 11(9)(109)1935

    • 著者名/発表者名
      Fukuda T., Adachi T., Nakamura K.
    • 巻
      97
    • ページ
      -
    • DOI

      10.11501/3347747

    • ISSN
      0022-2062
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] クロクモソウ(ユキノシタ科)と近縁二種の訪花昆虫相の比較2023

    • 著者名/発表者名
      福田知子・大島康宏・Chernyagina O.A.・Linnik E.V.
    • 学会等名
      日本植物分類学会第23回大会(東北大学 2024年3月8-12日)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 核・葉緑体領域の比較からみた シベリアイワブキと近縁種の遺伝構造2023

    • 著者名/発表者名
      福田知子, 石川 直子, Chernyagina O.A., Barkalov V. Yu., Taran A.A., Yakubov V.V., Marchuk E.A., Linnik E.V., 玉木 一郎
    • 学会等名
      日本植物分類学会第22回大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] タテヤマイワブキ(ユキノシタ科)の染色体数と系統的位置の推定2022

    • 著者名/発表者名
      福田知子, 足立敏文, 中村剛
    • 学会等名
      日本植物分類学会第21回大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] クロクモソウ(ユキノシタ科チシマイワブキ属)の分子系統地理2022

    • 著者名/発表者名
      福田知子, Linnik E.
    • 学会等名
      第69回日本生態学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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