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海洋性無殻繊毛虫プランクトンの多様性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K06359
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分45030:多様性生物学および分類学関連
研究機関長崎大学

研究代表者

鈴木 利一  長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (20284713)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
キーワード無殻繊毛虫 / プランクトン / 多様性
研究開始時の研究の概要

いずれの海域においても数多く出現する無殻の繊毛虫プランクトンは、海洋水柱中の生態系を構成する重要なメンバーである。しかしながら、種のランクでの分類や同定が困難であるため、各種・各個体群の生き様を明らかにすることができず、海洋プランクトンの生態を把握するうえで支障をきたしている。そこで本研究では、海洋に出現する無核の繊毛虫プランクトンを染色・観察し、各種の詳細な記載を行って公表するとともに、それらの細胞内外の構造を映像等で公開することを目的とする。

研究実績の概要

令和4年度に引き続き、長崎大学附属練習船鶴洋丸による調査航海において、東シナ海の角力灘および大村湾の定点で試料を採集した。令和5年4月から12月まで、予定していた8回の現場調査をすべて支障なく行うことが出来た。船上よりCTD(塩分・水温・水深計)-ロゼット採水器やバケツを用いて、無殻の繊毛虫プランクトンを採集した。この時に、水温や塩分、溶存酸素等の海洋環境についても計測し記録した。採集した海水サンプルを直ちに酢酸ブアン液で固定し、研究室に持ち帰った。研究室では、ミリポア社のセルロースアセテートフィルターで試水を濾過濃縮し、フィルター上にある標本が染色処理中にフィルターから脱落しないように、フィルター表面を寒天で薄くコーティングした。
寒天でコーティングしたフィルター標本をタンパク銀溶液に浸し、繊毛や核(大核・小核)、また、トライカイトと呼ばれる好銀性タンパク質に銀粒子を付着させ、その銀粒子を現像・定着することによって無殻繊毛虫の細胞内外の構造を染色した。次に、フィルター標本をイソプロピルアルコールで段階的に脱水し、キシレンで透徹してカナダバルサム樹脂で封入した。この封入でフィルター標本が透明になり(カナダバルサム樹脂とフィルターとガラスの屈折率がほぼ同じであるため)、生物顕微鏡の透過照明で観察することを可能とした。
カナダバルサム樹脂で封入して透明になった永久プレパラートを、油浸対物レンズを取り付けた生物顕微鏡で観察し、細胞内外の微細な構造を観察した。永久プレパラートのいくつかは、封入が厚いために、作動距離が長い対物レンズ(開口数が小さい対物レンズ)でしか観察できないものがあった。そこで、そのようなプレパラートに熱を加え、封入の厚みをより薄くする技量を向上させ、より高解像度の(開口数がより大きい)対物レンズの使用が出来るようにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和4年度の海洋調査は、新型コロナ感染症のクラスター発生やエンジントラブル等があり予定通り行うことが出来なかったが、令和5年度における海洋調査は、感染症流行の影響を受けることなく、天候にも恵まれて予定通りに遂行することができた。春から初冬に至るまでの経時的な変化を追跡できる試料が一通り揃い、試料の収集状況については、令和5年度で改善してきたと考えられる。
採集した海水試料の定量的な鍍銀染色処理については、ほぼ順調に実施することができ、顕微鏡観察を開始することが出来た。また、きわめて微細な構造の観察を可能とする永久プレパラートの作成法の検討についても同時に行っているが、これについては様々な検討を行った。具体的には、固定サンプルから繊毛虫を1個体拾い出し、乾燥させないようにカバーグラスに接着し、カバーグラスごと繊毛虫を染色することが最も実用的であると考え、この手法の手順を実験室内で実際に行いながら模索しているところである。この処理方法の練習と改良を繰り返し、近いうちに1個体のみを封入した永久プレパラートが安定的に作成できることが予想される。そうなれば、カバーグラスとスライドグラスの間に入れる封入剤をより薄くすることが可能であり、作動距離が短い高解像(高開口数)の対物レンズが使用できる。令和6年度においても、この手法の習得を続け、高解像対物レンズの性能をフルに発揮できる永久プレパラートの作成を試みる。

今後の研究の推進方策

令和6年度は、試料の採集を引き続き行う。大村湾と角力灘での調査・採集を4月から11月まで毎月1回の頻度で行い、採水器を用いて無殻繊毛虫プランクトンを採集する。なお、この時に水温や塩分、溶存酸素等の海洋環境についても計測し、各種の特徴に関する記載文に出現環境の情報を併記する予定である。
観察プレパラートの作成と検鏡についても引き続き行う予定である。具体的には、採集した海水サンプルを酢酸ブアン液で直ちに固定し、研究室に持ち帰る。研究室では透過照明(斜光照明)装置が取り付けられた実体顕微鏡を用いて、無殻繊毛虫プランクトンを1個体ずつ拾い出し、接着剤でカバーグラスに接着する。また、セルロールフィルターで濾過濃縮し、寒天でコーティングする手法も平行して行う。これらの標本をタンパク銀溶液に浸し、核や繊毛等の好銀性タンパク質に銀の微細粒子を付着させ、現像・定着することによって染色する。染色した標本をイソプロピルアルコールで脱水、キシレンで透徹し、カナダバルサムで封入して永久プレパラートを作成する。この永久プレパラートを生物顕微鏡(油浸対物レンズ)で細胞内外の構造を三次元的に観察し、無殻繊毛虫プランクトン形態を把握する。細胞のサイズや形状、繊毛列の数や配置、トライカイト(繊維)の配置、大核の数と形状、小核の数をもとにして、種のランクで分類を進める。
さらに、令和6年度は本研究の最終年度であるので、観察した標本の記載、結果の公表を主に行う。その際、標本各個体の三次元イメージ画像を取得するため、光学切片像を連続的に写真撮影するだけではなく、同時に動画として記録する。更に、その写真や動画をウェブ上に公開し、国内外の研究者が各種の形態や細胞内外の構造等を把握できるようにする。これらの結果を取りまとめ、モノグラフの作成や成果の発表を行う予定である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Temporal variation in vitamin B12 concentration and their impact on phytoplankton composition of surface waters of a coastal ocean off Japan (Ariake Sea)2024

    • 著者名/発表者名
      Kondo Yoshiko、Takahashi Narumi、Takatani Tomohiro、Suzuki Toshikazu、Wada Minoru、Takeda Shigenobu、Sanudo-Wilhelmy Sergio. A.
    • 雑誌名

      Journal of Oceanography

      巻: 80 号: 2 ページ: 117-128

    • DOI

      10.1007/s10872-023-00711-7

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 大村湾の貧酸素水塊の発達と生物応答(16)音響カメラARIS を用いたミズクラゲ観測の試み2024

    • 著者名/発表者名
      広瀬美由紀、竹下愛華、柿本拓海、藤本樹紀、樋渡 萌、 眞角 聡、内田 淳、青島 隆、鈴木利一、和田 実
    • 学会等名
      令和6年度 日本水産学会大会春季大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 大村湾の貧酸素水塊の発達と生物応答(14)音響手法を用いた貧酸素水塊発生時の魚類と水平・鉛直分布調査2023

    • 著者名/発表者名
      片岡宗一郎、広瀬美由紀、伊藤優花、樋渡萌、眞角聡、内田淳、青島隆、松下吉樹、鈴木利一、和田実
    • 学会等名
      令和5年度日本水産学会春季大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 大村湾の貧酸素水塊の発達と生物応答(13)大村湾における線虫のDNAバーコーディング2023

    • 著者名/発表者名
      川上裕生、和田実、丸山裕豊、眞角聡、内田淳、青島隆、広瀬美由紀、松下吉樹、鈴木利一、嶋長元裕
    • 学会等名
      令和5年度日本水産学会春季大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 計量魚探探知機で得られた魚類の分布量と溶存酸素濃度の関係2022

    • 著者名/発表者名
      片岡宗一郎、伊藤優花、丸山裕豊、眞角聡、内田淳、青島隆、松下吉樹、鈴木利一、和田実、広瀬美由紀
    • 学会等名
      令和4年度日本水産学会秋季大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Effects of dissolved oxygen concentration on fish distribution2022

    • 著者名/発表者名
      Miyuki Hirose, Soichiro Kataoka, Yutaka Maruyama, Satoshi Masumi, Jun Uchida, Takeshi Aoshima, Yoshiki Matsushita, Toshikazu Suzuki, Minoru Wada
    • 学会等名
      The 15th Annual Meeting of Asian Fisheries Acoustics Society, AFAS 2022
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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