研究課題/領域番号 |
22K06365
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
吉川 夏彦 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究員 (60726892)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 両生類 / 比較系統地理 / 歴史生物地理 / 東北日本 / ゲノムデータ |
研究開始時の研究の概要 |
中部・関東地方以北の東北本州、特に東北地方は両生類の種多様性が西南本州に比べて低く、遺伝的多様性も低い種が多いことから、生物地理学的には歴史の浅い地域と考えられていた。本研究では主に東北日本産の複数種の両生類を対象に、過去の集団構造のシグナルを残しやすいと考えられる核ゲノム上の一塩基多型遺伝子座(SNP)を種網羅的に解析して系統地理学的解析をおこなう。さらに生態ニッチモデリングを用いて各種の過去の分布の拡大縮小や分散過程を推測することで、比較系統地理的なアプローチにより東北本州の歴史生物地理を再検証し、日本列島の生物相形成史における東北日本の位置づけの再評価を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究課題では中部・関東以北の東北日本の両生類を対象とした種網羅的な比較系統地理解析を通じて、日本列島の生物相形成史における東北日本の位置づけの再評価を目指す。関東地方以北の東北本州、特に東北地方は両生・爬虫類の種多様性が西南本州に比べて低く、遺伝的多様性も低い種が多いことから、多くの種で氷期に一度集団が縮小あるいは消滅した後で、近年に一斉に拡大した歴史の浅い地域と考えられていた。しかし小型サンショウウオなど一部の種では中新世に起源をもつような古い遺伝的な多様性を残していることも分かってきている。 2022年度はこれまで種内の遺伝構造の解明が不十分であったアカガエル属2種(ニホンアカガエル、ヤマアカガエル)の新規サンプル収集を進めるとともに、京都大学等の共同研究者からサンプルの提供を受け、東日本を中心とした分布域全体から得られたサンプルについて、ミトコンドリアDNAのシーケンスによる予備的な遺伝構造の解析を順次進めている。さらに、トウキョウダルマガエルおよびトノサマガエルでも関東以北の集団の新規サンプル収集と遺伝解析を進め、関東平野より北では遺伝的多様性が著しく低下することが明らかになった。他にも東日本産ハコネサンショウウオ属4種(狭義ハコネ、バンダイハコネ、タダミハコネ、ツクバハコネ)、サンショウウオ属3種(トウホクサンショウウオ、イワキサンショウウオ、トウキョウサンショウウオ)でも新規サンプル収集と過去に収集したサンプルの整理をおこない、ミトコンドリアDNAおよび核SNPに基づく遺伝構造の解析を進めた。それらの一環として、広義のトウキョウサンショウウオのうち北部遺伝集団とされてきた地域集団を遺伝的、形態的な違いに基づいて新種イワキサンショウウオとして記載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2022年度は、研究遂行のための環境整備と分析するサンプルの収集のための野外調査が主な目的であった。本研究課題では複数の両生類種を対象とすることに加え、東日本の両生類の比較系統地理を理解するためにはある程度は西日本の集団の遺伝構造や東日本集団との関係についても理解しなければ議論を進めることができない。そのため今年度は、京都大学、愛知教育大学、北九州市博などの共同研究者からサンプルの提供を受けるとともに、その入手状況を踏まえて、研究上重要になる地域での重点的なサンプル収集・調査を進めた。その結果、特に重点的に進めることとしているアカガエル属2種では全体を大まかにカバーする地点のサンプルを入手した。トノサマガエル属でもミトコンドリアDNA,マイクロサテライトによる予備解析を進めている。ハコネサンショウウオ属でも、特に東北日本での各種の遺伝構造の解析に十分なサンプル収集ができた。これらのサンプルについて現在、ミトコンドリアDNAによる予備的な解析を進めており、ハコネサンショウウオ属では狭義ハコネ、バンダイハコネ、タダミハコネの分布が接する地域での各種の遺伝構造の特徴が明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は既存のサンプルの予備解析を進めるとともに、その情報に基づいてさらにサンプルの追加収集を進める。ミトコンドリアDNAの予備的解析により把握した遺伝構造から、系統地理復元にあたって重要となる地点を洗い出し、追加のサンプル収集を進める。サンプルがそろった種から順次MIG-seq等の核SNPの解析を進め、各対象種及び種群の個別の集団遺伝構造、系統地理仮説について検討を進めていく。
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