研究課題/領域番号 |
22K06368
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
橋本 哲男 筑波大学, 生命環境系, 名誉教授 (50208451)
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研究分担者 |
奈良 武司 医療創生大学, 薬学部, 教授 (40276473)
久米 慶太郎 筑波大学, 医学医療系, 助教 (70853191)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 嫌気的ATP合成 / 基質レベルリン酸化 / アシルCoA合成酵素 / 比較生化学 / メタモナス生物群 / 嫌気性原虫 / フォルニカータ |
研究開始時の研究の概要 |
メタモナスに属す生物6種を対象に、基質レベルリン酸化に関与する鍵酵素について、それぞれのリコンビナントタンパク質を作製して酵素動力学的解析によりその機能を調べ各生物のATP合成効率等のデータとともに比較解析する。一方、これら鍵酵素を含め同経路に関連するタンパク質全てについて生物界全体からホモログを収集して分子進化学的解析(分子系統解析・in silico分子構造解析)を行う。
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研究実績の概要 |
多様な生息域をもつ嫌気性真核微生物の大系統群であるメタモナスの生物種を対象に、基質レベルリン酸化(ATP合成方向の反応)の鍵酵素であるアシルCoA合成酵素の機能進化を解明するために、活性比較解析と分子進化解析を行った。 Giardia intestinalis, Kipferlia bialata, Aduncisulcus palusterのAcetyl-CoA synthetase (ACS)それぞれのリコンビナントタンパク質 (rACS) を作製して酵素動力学的解析によりそれぞれのATP合成活性を比較した。その結果、基質であるAcetyl-CoAに対する親和性を示す指標であるKm値の平均についてはrApACS≒rGiACS<rKbACSの関係の関係が、ターンオーバー数kcat値の平均についてはrApACS2<rGiACS1≒rKbACS1の関係が見いだされ、いずれについても3者間に有意差が検出された。以上から、ApACSとKbACSの間で酵素機能に違いがある可能性、G. intestinalisに至る進化過程において、Km値が減少し基質への親和性が増加した可能性が示唆された。 一方、Trichomonas vaginalisのAcyl-CoA synthetase-like protein (AcCoASL)のリコンビナントタンパク質を作製して、さまざまなAcyl-CoAに対するATP合成活性を測定したところ、Succinyl-CoAに対する活性が相対的に高いことが示唆された。現在、繰り返し実験によりその再現性を確認している。さらに、間接蛍光抗体法(IFA)にてAcCoASLの細胞内局在を調べるために、同リコンビナントタンパク質をマウスに免疫し、抗TvAcCoASL抗体の作製を試みている。 分子進化解析については、ACS単独でのアライメント・分子系統解析を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
G. intestinalis, K. bialata, A. palusterのACSに関しては、ATP合成方向の反応の基質であるAcetyl-CoAに対する酵素動力学パラメータの測定を終えており、現在、もう一つの基質であるADPに関する測定を行っている。それが終わり次第、ACS単独でのアライメント・分子系統解析の結果とともに論文を投稿する予定である。 T. viginalisのAcCoASLについては、ATP合成方向の反応の主な基質がSuccinyl-CoAであることを示唆することができたため、今後再現性を見るために繰り返し実験を行えば、酵素動力学に関するデータをそろえることができる。他の研究グループによるT. vaginalisの退化型ミトコンドリア(ヒドロゲノソーム)のプロテオミクス解析から、AcCoASLがヒドロゲノソームに局在する可能性が示唆されている。そこで、IFA実験でそれを確かめるために、現在抗TvAcCoASL抗体をマウスにて作製中であるが、ヒドロゲノソームのマーカーとなるシャペロニン60(CPN60)に対する抗体(抗TvCPN60抗体)については、すでにウサギにて作製済みであり、IFAによる共局在の有無を確認する実験を近未来に行える状況にある。また他の生物種、Kipferlia bialata, Dysnectes brevis, Giardia intestinalisについてもAcCoASLのリコンビナントタンパク質の作製に成功している。これらのことから、R6年度末までには、AcCoASLに関する実験データを揃えて論文を投稿できるめどがついている。
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今後の研究の推進方策 |
ACSについては、これまでの3生物種に関する論文を公表後、Dysnectes brevis, Trepomonas sp. (NIES-1444株), Hexamita sp.(NIES-1440株)についてもこれまでと同様に、リコンビナントタンパク質を用いたATP合成方向の反応の活性を測定する実験を行う計画である。 AcCoASLについては、引き続きT. vaginalisに関して活性測定の繰り返し実験を行うとともに、現在マウスにて作製中の抗TvAcCoASL抗体と、ヒドロゲノソームへの局在が既知であるシャペロニン60抗体(抗TvCPN60ウサギ抗体)を用いて退化型ミトコンドリアへの共局在の有無を調べる予定である。さらに、同様の活性測定とIFAの実験を、Kipferlia bialata, Giardia intestinalis(2コピー),Dysnectes brevis (2コピー)に対しても進めていく予定である。 一方、分子進化解析については、アシルCoA合成酵素ファミリーの別の酵素であるSuccinyl-CoA synthetase (SCS) をも含めて、多様な生物群から一次構造データを収集して、アライメント・分子系統解析を行い、ACS, AcCoASL, SCSの進化的関係を明らかにしたうえで、メタモナス生物におけるこれら3酵素の起源や進化についての議論を行う。さらに、代表的なメタモナス生物に関しては、Alpha fold 2 を用いた立体構造予測を行い、実験結果から得られる異酵素間での機能の相違と推定立体構造の相違との関係を調査する。これらの結果を総合的に考察し、メタモナスを含む真核生物全体を対象に、嫌気的ATP合成経路の進化多様性を解明しそれをもたらした要因を探る。
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