研究課題/領域番号 |
22K06372
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
上井 進也 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 教授 (00437500)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ワカメ / 地理的構造 / 養殖 / ミトコンドリア / 一塩基多型 / 瀬戸内海 / 人為的導入 / 遺伝的汚染 / 系統地理 |
研究開始時の研究の概要 |
日本沿岸のワカメ集団においては、地域ごとの系統の違いが知られている。しかし、瀬戸内海では、例外的に複数の種内系統の共存が示唆されている。本研究では、瀬戸内海のワカメ集団の遺伝的多様性について解析を行い、1)最終氷期以降の瀬戸内海成立過程という系統地理、および養殖を介した人為的導入という2つの視点から、その起源を解明する、2)瀬戸内海全体の集団構造を明らかにするとともに、養殖をはじめとする人間活動による遺伝的撹乱の実態を明らかにする、3)Species Distribution Modeling(SDM)解析を実施し、将来的な分布の変遷について推定を行う、という3つの課題に取り組む。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、解析個体数を150個体(天然23地点、および養殖4地点)まで増やし、SNPを用いた地理的構造の解析を実施した。サンプリングについては、瀬戸内海西部、および紀伊水道南部のサンプリングを追加することができた。また北日本太平洋沿岸(岩手)の野生個体もサンプルに加えて、北日本由来と言われている養殖個体と遺伝的な比較を行なった。結果として、養殖個体が北日本の野生個体と顕著な遺伝的類似性を示すこと、および、北日本・養殖個体の遺伝的影響が、瀬戸内海東部の海域を中心に広がっていることがを確認することができた。さらに、ワカメとヒロメの間の遺伝的交流の存在を、紀伊水道と豊後水道の両方で示すことができた。紀伊水道と豊後水道のワカメは遺伝的に区別することが可能であるが、それぞれの遺伝的グループについて、ヒロメとの交雑を示唆する個体を確認することができた。 ミトコンドリアハプロタイプでは、周防灘・伊予灘ー播磨灘において、日本海沿岸に広く分布するものと同じハプロタイプが確認される。核ゲノムにおいても同様の類縁性がみられるのか確認するため、瀬戸内海の外側である北九州市のワカメ集団からサンプリングしたほか、空白地帯であった大分県のサンプルについても入手し、瀬戸内海沿岸とその外側の集団からサンプルを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度に解析を行なったミトコンドリアハプロタイプの地理的構造については、すでに投稿し、改訂稿の審査を待っている状態である。また、核ゲノムSNPの解析についても150個体(天然23地点、および養殖4地点)について解析を終え、地理的には瀬戸内海のほとんどの海域について抽出・解析を終えた状態となっている。最終年度については、令和6年度末に採集したサンプル(3地点)について解析を行うとともに、瀬戸内海のワカメの集団動態などについて解析を行う段階に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
兵庫県沿岸では、「大陸型」とよばれる中国沿岸に多いミトコンドリアハプロタイプが知られている。中国からの移入について確認するため、中国の研究者からサンプルを入手する計画である。 核ゲノムSNPの解析を令和6年度の前半で終え、これらのデータに基づいて遺伝的構造を明らかにするとともに、近似ベイズ計算(ABC)を用いた集団動態の推定も行うことを計画している。また、本研究の中で確認された地理的構造が、将来的に海水温の上昇にともなって、どのように変遷していくかを推定すべく、Species Distribution Modelingを行うための準備を進めている。 加えて、瀬戸内海全域とは別に、地点ごとに養殖の影響に差が見られる可能性が高い淡路島周辺について、採集地点を増やして詳細な解析を行うことを計画している。
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