研究課題/領域番号 |
22K06373
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
富川 光 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (70452597)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 種多様性 / 系統 / 分類 / 甲殻類 / 端脚目 / 浸透圧 / 進化 / 島嶼 / 浸透圧調節 / 種分化 |
研究開始時の研究の概要 |
生物の海から汽水,淡水への進出や多様化には,浸透圧調節機能の獲得が重要である.甲殻類は海から淡水まで,様々な塩濃度環境に生息するため,浸透圧調節の進化を研究するための優れた材料である.本研究は島嶼に生息する甲殻類に着目し,その種多様性,系統類縁関係,浸透圧調節器官の微細構造を明らかにすることで,水圏における生物の適応進化と多様化の要因について解明することを目的とするものである.
|
研究実績の概要 |
本研究は,甲殻類を対象として,無脊椎動物の異なる塩濃度環境への適応進化を明らかにすることを目的としている.研究の初年度である本年度は,多様な塩濃度環境における甲殻類の種多様性の解明と系統関係の推定を行なった. 端脚目のメリタヨコエビ属は海域で種多様性が高く,少数の汽水・淡水産種が知られている分類群である.今年度は小笠原諸島および南西諸島の汽水・淡水域から得られた本属の種について系統分類学的研究を行ない,4新種を記載するとともに分子系統解析により系統関係を明らかにした.本研究の結果,小笠原諸島の淡水域に出現する2新種は系統的に近縁ではなく,それぞれ南西諸島および本州に生息する種と近縁であることが明らかになった.これらのことから,小笠原諸島においてメリタヨコエビは少なくとも2回独立に淡水域に進出したことが示唆された. メクラヨコエビ属は地下水性の端脚目の1グループで,日本を中心とする東アジアで種多様性が高い.本属はこれまで南西諸島からの報告は無かったが,与那国島の洞窟地下水から本属の種が得られたため,分類学的位置を確定するために系統分類学的研究を行なった.その結果,本種は未記載であることが分かったため新種記載を行なった.さらに分子系統解析および分岐年代推定により,メクラヨコエビ属の進化史を推定したところ,約2000万年前の日本列島の形成(大陸からの分離)が本属の種多様性に大きく寄与している可能性があることを明らかにした. ナギサヨコエビ科は海水,汽水,淡水域といった多様な塩濃度環境に出現する端脚目の分類群である.栃木県および静岡県の河川間隙水から本科のチカヨコエビ属の2未記載種が得られたため,系統分類学的研究を行ない,記載論文を公表した.さらに,分子系統解析と祖先形質復元により,海域から汽水・淡水域(地下水)への進出が本科の種多様化に寄与した可能性を明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,多様な環境に生息する甲殻類の種多様性の解明と系統関係の推定について,当初予定していた計画通りに進めることができた.また,これら得られた成果を学術論文として公表することができた.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降も引き続き,様々な塩濃度環境を対象にフィールドワークを実施し,種多様性の解明と系統関係の推定を進めて行く.また,異なる塩濃度環境における浸透圧調節器官の比較形態学的研究および低塩濃度環境における浸透圧調節機構を明らかにするための室内実験を行なう予定である.
|