研究課題/領域番号 |
22K06389
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
三宅 崇 岐阜大学, 教育学部, 教授 (00380569)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 送粉共生 / 送粉者 / 報酬 / 送粉 / 花 / 誘引 / 相利共生 |
研究開始時の研究の概要 |
植物-昆虫相互作用の1つである送粉系では、誘引シグナルや報酬により植物が送粉者に作用する。その際送粉者を花内で的確に配置・誘導する必要があり、それに開花中のシグナルや報酬の時空間的な変化がどのように関わっているかは不明である。本研究では、花序全体が同調的に振る舞い、長期間送粉者を滞在させるサトイモ科のクワズイモを対象とし、花の揮発性物質の濃度勾配や報酬の時空間的変化、ハエのシグナル受容と報酬への反応を調べ、花序上部への訪花→花序下部→花序上部という送粉者の空間的な誘導と、シグナルと報酬の時空間変化を対応づけることで、花の立体構造がもたらすシグナルや報酬の時空間変化の重要性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
前年に引き続き2023年4, 5月に沖縄で調査を行い、開花前、雌ステージ、雄ステージ直前、雄ステージの花序を採集した。組織観察に必要な試料を採集して固定し持ち帰った。その後オスミウム後固定してパラフィンに包埋し、切片観察により、脂質の蓄積の変化を調べた。その結果、雄花序において、ステージの進行に伴って、花序の表面に向かって脂質の流れが観察された。これはクワズイモショウジョウバエ、ニセクワズイモショウジョウバエ(以下合わせてハエと呼ぶ)の採餌物質の候補と考えられた。一方、オスミウム後固定を行わなずに作成したパラフィン包埋切片では、PAS染色を行って顕微鏡観察を行ったが、多糖類の蓄積や分泌の変化はみられなかった。 また、分布の北限におけるクワズイモと送粉者の共生関係について調べるために、野外自然分布が報告されている高知県室戸岬でハエの採集を試みた。前年は5月に行って花期の開始直後だったため、今年度は9月に調査を行ったが、花期が終わっておりハエ成虫の採集には至らなかった。 沖縄で非開花期に時折クワズイモが狂い咲きすることが観察されていることから、非開花期の9月に沖縄本島内で開花個体を探索した。その結果、糸数グスクと琉球大学内で開花中花序を合計5つ発見した。それらの花序にはハエ成虫の訪花も確認されたことから、ハエが非開花期にも成虫状態でいる可能性が高いと判断された。一方、発見した開花花序を用いてハエの誘引トラップを作成し、開花花序のみられないクワズイモ集団で誘引実験を行った。また、クワズイモ付近の土壌表面やリターに成虫が潜んでいることを想定し、土壌やリターを90Lのビニル袋に開花花序とともに入れて誘引実験を行った。しかしこれらの誘引実験ではハエ成虫は得られなかったことから、非開花期にクワズイモ近くに成虫状態でいることや、そのような成虫の生理状態を確認することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
北限での送粉者調査は、時期を見極めることができずハエ成虫を得ることができなかったため、翌年度の再調査に持ち越された。また、非開花期の誘引実験で採集できていれば、非開花期のハエの生理状態等の研究を進展させることができたが、最も可能性が高いと思われるクワズイモ集団内で誘引実験がうまく行かなかったことから、非開花期のハエの生理状態の解明には再考が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
ハエ成虫の飼育環境を整えたので、この環境にクワズイモを餌として与えること卵巣小管(生殖器官)の発達が促される等の生理的な変化を伴うのか、また餌として採餌することでハエ成虫の脂質量等が変化するかを調べる予定である。この実験には、まずクワズイモの花序を部位ごとに与えて生理的な変化に違いがあるかを調べる。次に、その後の分析や活性物質の同定を見据えて、凍結乾燥させた花序を部位ごとに与えて、花序の場合と同様の生理的な変化を誘導できるかを調べる。また、高知県で確認されているハエの北限集団は、サトイモ科とタロイモショウジョウバエ属の送粉共生系においても北限であるため、共生系の分布拡大を詳細に調査する必要があり、採集許可を取って両者の採集を行い、分子遺伝学的に検証を進める。また、クワズイモがハエを誘引する至近要因である香りと花序構造の関係について、香りの熱対流シミュレーション解析を他の研究者との共同研究として進めているところであり、特に仏炎苞のようなサトイモ科特有の構造が香りの拡散やハエの誘導にどのように関わっているかについて検討する。
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