研究課題
基盤研究(C)
果実食者による飲み込み型の種子散布効率は、散布される種子の「量」と「質」で決まる。果実食者の糞の特性(匂い・大きさ・硬さ・栄養価)は、糞虫類による種子の埋め込みや、げっ歯類・草食獣による種子の捕食に影響すると考えられるが、それが散布された種子の適応度にどの程度影響するのかは未解明だった。本研究は『群集レベルのアプローチと物理・化学的要素の融合』という新基軸を打ち出し、種子散布効率をより正確に評価する。
2023年4月から2024年3月にかけて、宮城県石巻市金華山島を計10回、同清崎地区を12回訪問し、種子散布に関する調査を実施した。1) ニホンザル・ホンドテン・アカギツネ・タヌキの糞の採集 -> 調査期間中に約150個の糞を採集し、中に含まれる種子の取り出しと種同定を行った。2) げっ歯類の捕獲調査-> 金華山島と大学演習林でシャーマントラップを用いたネズミ類の捕獲調査を行い、いずれの地域でも夏から秋にかけて個体数が増加することを明らかにした。3) センサーカメラによる種子の捕食者の撮影 -> 2021年度から継続して調査を行った。本年度、齧歯類による地上の種子の捕食は確認されなかった。シカによる捕食の影響は、次年度も引き続き評価する。4) 糞虫類(センチコガネ類・エンマコガネ類・マグソコガネ類)の処理を受けたサル糞に含まれる種子の発芽実験 -> 金華山島での野外実験は、2021年度からの継続調査である。複数種でサル糞に含まれる種子の発芽を確認した。本年度、新たに大学での室内実験を開始した。1)の調査で回収した種子をもちい、糞虫の処理の効果を考慮した複数の条件を設定して播種した。野外調査と並行して学術論文の執筆を行った。ニホンザルの食性に関する論文、アナグマの食性に関する論文、清崎の動物相に関する論文、金華山の開花・結実フェノロジーに関する論文、金華山の糞中に関する論文を公表した。プロジェクトに関する学会発表を12回行った(共著含む)。
3: やや遅れている
糞サンプルの採集ならびに発芽実験はほぼ計画通りに進んだが、匂い物質、糞の硬度、並びに栄養価に関する分析にほとんど手を付けることができていないため。
プロジェクト最終年となる本年度も、引き続ぎ各調査地の野外調査を継続し、糞サンプルの採集、ならびに糞虫の採集を実施する。本年度、糞虫類による種子の埋め込み能力の評価を目的とした野外/室内実験を行う。糞の匂い成分並びに硬度の計測の準備を進める。栄養価に関するデータの収集が遅れているため、先行研究の値を流用することを検討する。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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