研究課題/領域番号 |
22K06395
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
松井 晋 東海大学, 生物学部, 准教授 (20727292)
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研究分担者 |
佐藤 敦 東海大学, 生物学部, 准教授 (80205898)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 尾脂腺成分 / 抱卵行動 / 雌雄差 / 尾脂腺分泌物 / 卵表面構造 |
研究開始時の研究の概要 |
卵表面で微生物の増殖を抑える効果のある構造(撥水性を高める微細構造など)や親由来の抗菌作用のある物質(尾脂腺分泌物など)は、胚の発育や生存に影響することが予想される。一般的に産卵期は巣に卵が数日間放置され、抱卵期には親鳥は抱卵斑と呼ばれる腹部の皮膚が裸出した部分を卵に接触させて連続的に温め、頻繁に嘴で卵を回転させる転卵行動がみられる。このため鳥類は産卵期と抱卵期との間で卵表面からの細菌などの侵入を防ぐため対抗戦略が異なるという仮説を立てた。本研究では、卵表面の撥水性や脂質による卵表面の被覆が、細菌の増殖を抑制することで、孵化率を上昇させて、適応度に及ぼす影響を包括的に評価する。
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研究実績の概要 |
私達の研究室では、細菌などの微生物から胚を守る最初の防御機構となる鳥類の卵表面の撥水性や脂質による卵表面の被覆の機能を統合的に理解することをめざす研究に取り組んでいる。これまでの研究では、薄層クロマトグラフィーによってシジュウカラの卵表面から尾脂腺(鳥類の尾の付け根にある分泌腺)に由来すると考えられる脂質が検出されている。 鳥類の尾脂腺分泌物は、羽毛における撥水性や抗菌作用を検証した研究が多く、卵表面における尾脂腺分泌物の機能はほとんど明らかになっていない。シジュウカラのようにメス親のみが卵を温めるような鳥類種では、メス親の尾脂腺分泌物は抱卵の際に卵表面に移行する可能性がある。一方で卵を温めない雄親は卵と接触しないため、オス親の尾脂腺分泌物が卵表面に移行する可能性が低い。このため繁殖期の尾脂腺分泌物のもつ機能には雌雄差があると予想した。そこで2022年の繁殖期に雌雄のシジュウカラから尾脂腺分泌物を採取し、その成分をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、シジュウカラの尾脂腺分泌物には雌雄差があることが示唆された。 また、2022年には30分に1回の頻度で巣箱内を長期間撮影することができるインターバルカメラを装着した巣箱を設置した。そして、それらの巣箱を利用して営巣したシジュウカラについて、巣作りの進行、卵数、雛数、さらに造巣期、産卵期、抱卵期、巣内育雛期に親鳥が巣に滞在する割合等を調べることで、造巣からヒナの巣立ちまでのシジュウカラの詳細な繁殖行動を記録することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で尾脂腺由来と考えられる脂質がシジュウカラの卵表面に移行することが示唆されているが、シジュウカラの尾脂腺成分の雌雄差については明らかになっていなかった。2022年の野外調査ではシジュウカラの雌雄から尾脂腺分泌物を採取し、ガスクロマトグラフィーを用いた分析により雌雄の尾脂腺成分には違いがあることを確かめることができた。また、インターバルカメラで巣箱内を30分に1回の頻度で長期間撮影し続けることにより、造巣期からヒナが巣立つまで期間のシジュウカラの詳細な繁殖行動を分析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、産卵期と抱卵期のシジュウカラの卵表面から抽出される成分、オスとメスの尾脂腺分泌物に含まれる成分をガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)により分析することで、尾脂腺成分の雌雄差と、親の尾脂腺分泌物が卵表面に移行する時期を明らかにする。またシジュウカラの卵表面と巣材の細菌叢分析を行う予定である。その後、その細菌叢分析の結果をふまえて、卵表面の脂質や親の尾脂腺分泌物の抗菌作用を解明することを目指す。
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