研究課題/領域番号 |
22K06396
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
藤原 崇之 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (10595151)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 真核藻類 / 単細胞紅藻 / 遺伝的改変技術 / 生息環境 / 単細胞藻類 / 環境応答 / 藻類 / 紅藻 / 光合成 / 自然環境 / 遺伝的改変 |
研究開始時の研究の概要 |
単細胞藻類は海・淡水域における一次生産者であり、生態系の構築において極めて重要な生物である。これまで実験室レベルでは、藻類の増殖や環境応答の研究が行われてきたが、実験室の生育条件と実際の生息環境は大きく異なる。たとえば、藻類培地の栄養塩類の濃度は自然環境の100-1000倍も高く富栄養である。また、実験は昼夜・天候・季節などの環境変動がない一定の環境下で行われる。このような条件では、生息環境で起こる本来の環境応答機構を見落とす可能性がある。本研究では温泉紅藻とその実生息環境をモデルとした研究系を構築し、自然環境に近い状態における環境応答機構を理解する。
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研究実績の概要 |
真核藻類は水域の炭素固定において重要な位置を占める。したがって、その生理生態を理解することは重要であるが、実際の生息環境は、環境水が貧栄養で、昼夜や季節などの変化があるなど、実験室とは大きく異なる。そのため、実環境条件下において、どのようにして、その変化に対応しながら生存を図るのかといった問題はほとんど研究されていない。研究代表者らは、貧栄養な環境水中における藻類の細胞生理を理解するために、透析膜を使用した略式の連続培養法を開発した。これにより、通常のバッチ培養では不可能であった環境水を用いた藻類の培養が実験室内で可能になった。令和5年度には、上記のような透析膜培養系でも利用できる、操作が簡単で穏やかな刺激によって(遠心による培地交換や熱ショックを行わない)、標的タンパク質の分解を誘導する方法を、単細胞紅藻類の実験系において開発した。本方法では、ラパマイシンによるFKBPとFRBタンパク質の2量体化を応用した。標的タンパク質にFRBを融合し、またE3リガーゼにFKBPを融合することで、ラパマイシンを培地に添加すると標的タンパク質がユビキチン化され、最終的にプロテアソームで分解される。この方法により、ラパマイシン添加後一時間以内に半分以上の標的タンパク質が分解できる迅速な分解誘導系が実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、単細胞紅藻の実生息環境の環境調査を行い、すでにその各種パラメータを取得している。また環境水を用いた培養にも成功した。これにより、切り取った環境条件を実験室で再現して培養することも可能になった。さらに令和5年度には環境水透析膜培養系において利用できるタンパク質ノックダウン法を開発でき、今後、これは単細胞紅藻の実生息環境で生息するために必要な機構を解析するために役立つだろう。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、実際の藻類の生息環境における水温と増殖速度の関係を明らかにしてきた。低温域では増殖が著しく遅くなるが、シストのような休眠状態にはならない。また、異なる水温域において同程度の光が照射されるにも関わらず、増殖速度が異なることが観察された。これは、温度が全体的な代謝速度に影響を与えるためでであるが、代謝に投入されない光エネルギーをどのようにどれだけ捨て、細胞が環境に適応しているのか、そのメカニズムはまだ不明です。今後は、呼吸活性や光合成活性、トランスクリプトーム、メタボローム解析を実施し、この問題に取り組んでいく。特に特定された原因遺伝子については、先述の標的タンパク質の誘導的分解法を用いて、その機能を検証する。
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